第16話 帰還、そして再会
作者: 邪神   2012年07月05日(木) 20時59分51秒公開   ID:ruLD3r9Qyus
9月29日 午後23時00分



心地良い光に包まれ、正志は『バイオハザード』の並行世界に帰還した。

「ここは……ラクーン警察署のロビーか」

正志は持っていた懐中電灯をポーチに入れて歩き出した。

「正志〜!」

懐かしい女性の声が聞こえる。

(こ、この声は……!)

「クレア!」

クレア・レッドフィールドが走りながら手を振っている。

正志も走り出し、走ってきたクレアをゆっくりと受け止めた。

「会いたかったよ……。心配かけてすまない」

正志が謝るとクレアが首を横に振った。

「気にしないで。怪我したんでしょ?大丈夫なの!?」

クレアは正志の体を見渡しながら言った。

「大丈夫だよ。ある人に治療してもらったから」

正志が言うと、クレアが首を傾げる。

「ある人って誰?」

クレアの問いに正志はうろたえる。

「そ、それは……」

クレアは怪訝そうな表情を浮かべ、腕を組んで正志をジロジロ見ている。

「シオリさんのことだね、西山正志くん」

突然男の声が聞こえた。

声が聞こえた方向に正志が振り向くと、若い青年が立っていた。

「君は誰だ?」

正志が尋ねると、男は笑顔を浮かべて言った。

「神田光平。七つのホラーゲームの一つ『SIREN』の世界から来た人間さ」

神田と名乗った男は、正志より背が数センチ高くがっしりとしていた。

彼が着ている服が、『バイオハザード4』でレオンが着ている物と同じことにも驚いた。

「そうか、君がシェリルが話していた神田くんか。俺は西山正志、よろしくな」

俺は手を差し出すと神田も手を差し出した。

「名字とかじゃなくて、光平でいいよ。呼びにくいだろ?」

手を離した光平が言った。

「わかった。俺も正志って呼んでくれればいい」

俺はサムライエッジを取り出しながら言った。

「ところで光平、あの白ワンピースの女の名前はシオリっていうのか?」

「ああ。彼女本人はそう言ってたよ」

俺が尋ねると光平は頷いて言った。

(シオリだと……!?なにかの偶然だよな?“あいつ”はもう……)

心の中で自分自身に問い掛けながら思った。

「それにしても、正志は今までどこにいたの?」

クレアが聞いた。

「屋上でゾンビ達の相手をした時に怪我して、シオリって奴に介抱されてた」

タジタジになりながら俺は答えた。

(まさか、『サイレントヒル』の並行世界に行ってたなんて言えるか……)

「正志、クレアさんは全て知ってるよ。君が何者なのか、どこから来たのか……全部ね。だから話したほうがいい」

光平が俺の心を見透かしたように言った。

「教えたのか、クレアに?」

俺が尋ねると光平は頷いた。

「クレア、聞いてくれ」

正志はクレアの目を見て言った。

「なーに?」

クレアが答える。

「俺はこの世界の人間じゃない。別の世界からやって来たんだ」

正志が告げると、クレアはゆっくりと頷いて答えた。

「私やレオンが、ゲーム『バイオハザード』の登場人物として存在している世界から来たんでしょ?」

クレアに言われると、正志は彼女から目を背けた。

「黙って悪かった。信じてもらえないと思ったから……」

俯いたまま正志は言う。

「信じるわ、正志の言うことは全部」

クレアが正志の両手を握って言った。

「私は全てを受け入れたから。あなたがどこの世界から来たのか、あなたが何者なのか、あなたがいた世界で私やレオンがゲームの中にしか存在しないことも……全部をね」

クレアにそう告げられて、正志は安堵の笑みを浮かべた。

「ありがとう、クレア」

正志が礼を言うと、クレアはゆっくりと頷いた。

「……で?本当はどこにいたの?」

握っていた正志の両手を離してクレアが言った。

「七つのホラーゲームの一つ・『サイレントヒル』の並行世界で、俺を介抱したシオリって名前の白ワンピースの女に与えられた試練を受けていた」

正志が言った。

「試練っていうのはわかったんだけど、そのシオリって人は何者なの?」

クレアが言った。

「俺も詳しくは知らないんだ。ただ、七つのホラーゲームの並行世界が崩壊し始めていることを知り、それを阻止するために俺を含めた7人の人間をそれぞれの世界に放り込ませたということは聞いた」

クレアに尋ねられた正志が答える。

「光平、彼女は一体何者なんだ?」

正志は光平に聞いた。

「彼女……シオリさんは、地球の核(コア)にある記憶の結晶の泉の力を司る巫女さ。俺とその仲間達は、結晶の巫女と呼んでいる」

光平は自分の愛銃・ワルサーP99に弾丸を装填しながら答えた。

「記憶の結晶の泉?」

意味がわからない様子の正志が尋ねる。

「俺達が住んでいるこの地球の核には、地球状のありとあらゆる記憶が集まり結晶化している泉があるんだ」

光平は答える。

「ありとあらゆる記憶……」

クレアが驚愕した表情を浮かべて呟く。

「そうだ。例えば、ゲーム・『バイオハザード』の記憶の結晶や俺の出身世界のゲーム・『SIREN』の記憶の結晶もある。簡単な物だと、虫の記憶の結晶や人の記憶の結晶もあったりする」

光平が語る言葉に正志とクレアは驚く。

「それぞれの記憶が結晶化して泉となる。その結晶の泉の力を司り、制御している巫女がシオリさんなんだ」

光平の言葉をじっと聞く正志とクレア。

「なぜ泉を制御する必要があるんだ?」

正志が口を開く。

「記憶の結晶の数は無限にある。記憶の結晶一つに凄まじい力が秘められていてな、それが無限に集まり広がる泉の力は制御しないと暴走する危険がある。制御する人間がいないと、それが防ぎきれずに大変なことになってしまうのさ。それを制御できるのはシオリさんだけなんだ」

熱弁する光平に正志達は黙って聞き入っていた。

(へぇ……凄いんだな、彼女)

正志は心の中でシオリに対して素直に感心した。

「正志、彼女は君のことをよく知っているみたいだよ」

光平が言った。

「俺のことを?」

正志が驚いた様子で光平に尋ねる。

「ああ。俺は詳しいことはわからないけどね」

光平はそう言いながら、さらに言葉を続けた。

「さて、お喋りはこれくらいにして、レオン・スコット・ケネディを迎えに行こう」

「レオンの居場所を知ってるのか?」

驚いた正志が聞く。

「俺の仲間の一人が保護している。正志も会ったことがある奴だ」

光平が愛銃のワルサーP99にマガジンをセットしながら言った。

「須田恭也のことか?」

正志の言葉に光平は頷く。

「よし、そろそろ行くか!」

「ええ」

「おう」

正志の言葉にクレアと光平が返事を返す。

「2人とも俺の肩に触れてくれ。須田とレオンがいるところまで瞬間移動する」

正志とクレアは光平の言葉に驚いた様子を見せたが、彼の肩に触れた。

光平が念じると金色の輝きに包まれ消えた。
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