第25話 思わぬ協力者と鬼武者変身
作者: 邪神   2012年09月10日(月) 15時34分55秒公開   ID:o.caVtWgXPw
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正志はふと安堵した表情を浮かべて、出入口の扉を開けた。

「無事だったのね、正志!大丈夫なの?」

扉の外で待っていたエイダが駆けつけると、正志は首を縦に振った。

「終わったぜ……」

疲れきった表情を浮かべながら、正志はそう呟きエイダの体に倒れこんだ。

正志はあまりの疲労にそのまま意識を失った。





同時刻、結晶の間では結晶の巫女・大倉詩織が、真鬼武者に変身した正志と闇の巫女が送り込んだ暴君の追跡者の戦いの様子を見ながら1人佇んでいた。

「なぜ正志くんが鬼武者に……。これはどういうことかしら、“エリサ”!?」

詩織が目を閉じて怒りを含んだ口調で言うと、彼女の背後に1人の少女が姿を現した。

「鬼の篭手がなかったら、“パパ”は殺されていました。詩織様はパパを見殺しにしろとでも?」

少女が強い決意を宿した表情で詩織を睨みつけている。

「そんなつもりはないわ!光平を送り込ませるつもりだったけど、間に合わなかったのよ」

詩織がそう言いながら、唇を噛みしめた。

「今はまだ、“その時”ではないことは十分わかっています。しかし、パパを見殺しにすることなど“娘”の私にはできませんでした」

エリサと呼ばれた少女は頭を下げながら、静かに謝罪する。

「今回の件は私の判断ミスも原因の1つよ。気にすることはないわ」

詩織はエリサに近づきながら言い、右手を彼女の右腕に近づけた。

「遂にもう1人の私・カンナと闇を継ぐ男・ウェスカーが動き始めた。これから何が起きるかわからないから、あなたにこれを授けることにします。自由に取り外すことが可能だから、安心なさい」

詩織が右手をエリサの右腕に触れさせると、神田光平が所持している物と同じ光の篭手が彼女の右腕に装着された。

「どういうことですか?これを使ったら、私は暴走するのでは?」

エリサが右手に装着された光の篭手を見ながら言った。

「その心配はいらないわ。あなたはあの正志くんの娘なのよ?正志くんが鬼の篭手を使って暴走していないのと同様、あなたも暴走することは絶対にありえない」

詩織は笑顔を見せながら答えた。

「わかりました。それで、私はこれからどうすれば?」

エリサはお辞儀をしながら、静かに尋ねた。

「『クロックタワー』の世界に向かい、須田恭也を呼び戻しなさい。彼、御堂島優と久しぶりに再会して色々な意味で“燃えあがって”いるみたいだから」

詩織が苦笑しながら呟くと、エリサは頷いた。

「それとあなたに聞きたいことがあるの。あの鬼の篭手はどこで手に入れたのかしら?」

詩織が真鬼武者に変身した正志の映像を見ながら聞いた。

「私が生まれた“別次元の『バイオハザード』の並行世界”に、ある人がお守りとして残していった物を拝借しました。鬼武者・明智左馬介が幻魔王・織田信長を封印した篭手と全く一緒の物です」

エリサはそう答えた。

「そう」

詩織はそう返事をすると、映像に見入りはじめた。

「あなたのお父さん・正志くんの器と素質の覚醒が少しずつ始まった。彼が救世主として目覚める日は近いわよ」

詩織が映像を見ながら呟いた。

「どういうことですか?」

エリサが尋ねると、詩織は真剣な表情を浮かべた。

「彼はあの怪物と戦う直前、『SIREN』の限られた人間や異界でしか使えない幻視…つまり視界ジャックを自力で使うことができたの。幻視の能力であの怪物の視界をジャックし、襲撃を防いだ。そして、幻視を自由に使えるようになった。これが意味するのは1つしかないでしょう?」

「力が目覚めはじめたということですね?」

エリサの返答に首を縦に振った詩織。

「私達ができるのは、彼を補佐することだけよ」

詩織は続けてそう忠告した。

「そうですね。では、行ってまいります」

エリサはそう答えると、オーロラの壁の向こうへと消えていった。

詩織は目を細めて、椅子に座り込んだ。

「正志くんを自分の物にしたいという私の欲望が闇となり、その化身としてもう1人の私・カンナが生まれた。何があろうと、どんな犠牲を払っても潰さなければ……」

そう呟きながら、詩織は何かを決意したようにある人物を呼んだ。

「七咲(ナナエミ)」

詩織の呼びかけの直後、1人の男が姿を現した。

「詩織様、何か御用でしょうか?」

七咲と呼ばれた男が丁寧な口調で尋ねた。

20代に見える若い容姿のその男は、真剣な表情を浮かべて詩織の指示を待っている。

「スパイとしてカンナの所に向かいなさい。あの女とウェスカーが企んでいる計画を探り出し、私に伝えるのよ」

詩織は男にそう告げた。

「了解です。他にやるべきことはありますか?」

男は反論することもなく、丁寧な口調で言った。

「特にないわ。カンナ達に見つからないようする以外は、あなたの好きにしていいわよ」

詩織は背を向けながら言った。

「わかりました。では……」

男は一言だけ返すと、オーロラの壁を超えて姿を消した。

「彼を生き返らせる時、正志くんと“樹里さん”に関する記憶は消去しておいたけど、いつ思い出すかはわからない。記憶を取り戻し、現在の正志くんと樹里さんの関係を知れば、私達の敵になって正志くんを恨んで彼に危害を加える可能性もある。注意して監視しなければ」

詩織は目を閉じて、懐からある物を取り出した。

「樹里さん、正志くんを心の底から愛してるのね。こんな物を見たんじゃ、私の入る隙間なんかないって、思い知らされるに決まってるじゃない」

詩織は悔しそうな表情を浮かべて、それを見た。

それはお守りとロケットペンダントだった。お守りの中には正志達家族が写った写真が、ロケットには樹里と息子の翔が写った写真がそれぞれ収められていた。

「はあ……」

詩織はただため息を吐くことしかできなかった。
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