華麗なる逆転終了後〜ゴドーの想い〜 |
作者:
葵
2008年02月16日(土) 20時52分40秒公開
ID:l1YxtsOvbmw
|
華麗なる逆転終了後 法廷休憩室 あの一瞬、オレの心に一体何があった?綾里真宵を守ろうとする純粋な気持ちだったのか・・。美柳ちなみに対する復讐だったのか・・・。いや、きっとこの2つのどちらでもなく、チヒロへの罪ほろぼしだったはずなんだ。だけど・・・チヒロにとっては苦い思い出だっただろうな。実の母親をこのオレが殺してしまったのだから。 クッ・・・。最後の最後にもやっぱりチヒロには会えねぇんだな。まぁ、霊媒という力でまたチヒロの姿を1回・・・いや、何回も見れたことに関しては綾里真宵にも感謝しなくちゃな。 ・・・・・・・・・・。 「・・・センパイ・・。」 「!!?」 ・・・・・さすがチヒロだぜ。どんなときでもオレのことを想っていやがる。またチヒロに会えるなんてな。まあ、もちろん綾里真宵に霊媒されての姿だが。 「センパイ・・・。どうしても言わなくちゃいけないコトがあって。」 「・・・・・このオレに・・・か?」 「ええ。」 何を言うっていうんだ?ここはオレが怒られても仕方ねえ。チヒロの実の母親を殺しちまったんだからな。 「・・・その、本当に・・ありがとう。」 「・・・・・何がだ・・・?コネコちゃんよぉ。」 何が言いたいんだ?オレはお前を守ることができなくて、しかもお前の実の母親まで殺した。なのになぜ『ありがとう』なんだ? 「わたしはそういう意味でありがとうって言ったんじゃないわ。・・・・本当に、ずっとずっと待っててくれてありがとう。」 「・・・・・・・・・・・・・・・?」 オレには理解できねぇ。待ってたのは、むしろお前のほうじゃねぇか。その言葉を言うのはオレのほうなのに。 「センパイは、言ってくれました。『弁護士は人を信じぬけ』って。だから、わたし、ずっと貴方が目覚めてくれることを信じてた。」 「・・・でも・・コネコちゃんは死んじまった。オレが長いこと眠っている間に・・・な。」 ・・・そういうコト・・か。 「でも、センパイはわたしのコト、信じてくれてたんですよね。だからもう1度目を覚ましてくれた。・・・・ごめんなさい・・本当に。そしてありがとう。」 「クッ・・もうオレもコネコちゃんとは呼べねえなぁ。」 「・・・ええ。もう、コネコちゃんなんて呼ばせませんよ。」 そう言ってチヒロはニコッと笑った。だけど、目には今にもあふれそうな涙がたまっているのがオレには分かった。 「もしかして・・・バレてます?」 「ああ。・・・思いっきり泣けよ。」 「・・・いいえ・・。センパイが言ったじゃない・・ですか・・・。」 おいおい・・・。もう泣いてるようなもんじゃねぇか。正直、オレだって泣きたいしな。でも、オレは泣かねぇ。・・・そいつがオレのルールだからな。 「・・・お・・オトコが泣いていいのは・・すべてを終えたとき・・だけだ・・って・・うう・・。」 「・・そうだったな・・・。だが、今は違う。そうだろう?」 「・・・どういうコト・・ですか?」 「オレたちは今日で1度終わったんだ。だから・・また、今から始まるんだぜ。」 オレがそう言うと、チヒロは号泣した。何度も何度も『ありがとう』と言いながら。 「・・・・チヒロ・・・。」 「・・・・!?」 「飲みな。おごってやるぜ。ゴドーブレンド107号。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そう言うと、オレはチヒロにコーヒーを渡した。 「・・・おいしい・・・。」 「クッ・・・。今日のコーヒーは、ちょっとしょっぱいぜ。」 「ふふ・・・。」 こうしていると思い出す。まだまだ未熟だったチヒロと一緒に過ごした日々。 「・・・わたし、もう帰らないと。」 「・・・・・ああ。」 「今度は、わたしがずっと、ずっと待ってますよ。」 「生きている姿じゃ会えないと思うが、それでいいか?」 「・・・・ええ。どんな姿でもいいわ。あなたとまたあえるなら。」 ・・・・・・・・・・・ そう言うと、チヒロは冥界に帰り、気がつくと目の前には、綾里真宵が立っていた。 「・・・・・・・・・・・」 「!?」 綾里真宵も、大つぶの涙を流していた。きっとチヒロの気持ちが伝わってきたんだろうな。 「神乃木さん。あたしのこと守ってくれたんですよね・・・。あたし・・・すごく嬉しかったです。」 「・・クッ・・。照れちまうな。」 そう話していると、ドアのすみでまるほどうと、御剣怜侍が見ているのに気がついた。 「やりますね。神乃木荘龍さん。」 「あなたは、大切な人を最後まで守りぬいたようだ。」 ・・・どうだったんだろうな・・・。 チヒロや綾里真宵が、そう思ってくれているならそれでかまわないんだけどよ。 「神乃木さん。あたしは信じてますよ。」 「?」 「神乃木さんは、美柳ちなみからあたしを守ってくれました。・・・お母さんがいなくなっちゃったのは悲しいけど、それでもきっとお姉ちゃんも神乃木さんのコトが大好きですから。」 「・・・・・・・ああ。ありがとうよ。」 オレは何を迷っていたんだろう。オレの周りにはこんなにすばらしい人がいるっていうのに。・・なぁ。 「・・・・あの・・ゴドー・・いや、神乃木弁護士。」 「その名で言われたのは久々だな。」 「・・・むう。」 まあ仕方ねえな。御剣怜侍と弁護士時代に会ったのはあの法廷が最初で最後だったから。 「その。・・あなたは、誰よりもすばらしいコトをしました。綾里千尋も、綾里真宵も守った。その事実に変わりはない。」 ・・・・・かわったな。コイツも。初めて会ったときはすごい腹黒いやつだと思ったが。 「・・・まるほどう。チヒロは・・幸せだったんだろうか。」 「え?」 「オレが毒を盛られてしまってからのコトは何もしらねえんだよ。」 「異議あり!!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 「証拠品で語りましょう。千尋さんは、ずっとずっと幸せでしたよ。」 「何でそれが分かるんだ?!」 「それは、この僕と真宵ちゃんですよ。」 お前と・・・綾里真宵? 「もし千尋さんが幸せでなかったのなら、僕は弁護士になっていない。そして真宵ちゃん もあんなに明るくはなかったはずです。」 ・・・・・そう、だったのか・・・。 チヒロも、綾里真宵も、そして、この成歩堂龍一も。 「そしてあなたです。」 「・・・・・え?」 どういう意味なんだ・・?オレ・・・? 「そう、あなたがどんな状態であれ、そばにいてくれなかったら、千尋さんは絶望的だったでしょう。」 「そう・・・か。」 わかっていないのはオレだけだったんだろうな。 「おじょうちゃん。」 「え・・・あ、あたしですか?」 「今度チヒロに会ったら伝えておいてくれないか。」 「・・・はい!!」 「オレは今幸せだ。そして、いつでもお前のことを想っているってな・・・。」 その後、オレはほかの何色でもない本物の涙を流した。こんなにもたくさんのヤツに愛されていたなんてな。 「そろそろ時間です。」 警官にそう言われ、オレはとうとう連行される。 オレは上を向いて言った。 「ずっと待っててくれよ・・。チヒロ―。」 終 |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |