逆転の一歩〜法廷・前編2〜
作者: ぺーぱーくらふと   2008年01月03日(木) 20時00分44秒公開   ID:GInZ8MUKWLU
「ところで、証人。被害者のこと…顔も見たこともないと言いましたが。」
……なんだ?あの笑い……。なんか、かなり嫌な予感がするぞ…
「あ、ああ。前に警察に写真を見せてもらったが…見たことも…無い。」
人路さん……、なんか落ち着きが無いけど…本当なのかな……
「今の証言は…ウソ、ですね。」
「な、何だと……!」
あの、人路さんが焦っている……ウソ、だったのか?被害者を見たことがないということが……―――そして、肝心の弁護人である僕は、ただその会話を聞き入ることしかできなかった。………ううう。これからどうなるんだよ………。
「裁判長!この記事をごらんくださいっ!」
そう言いながら只野検事は新聞記事をとりだす。
「それは……何の記事ですかな?」
確かに、かなり気になる。
「これは………4年前のある新聞の一面です。」
4年前……?なんか引っかかるな……。
「記事の内容は…………お、[王者人路惨敗]と書かれています!」
「な、なんですって!」
その時、その記事のデータが配られた。
なになに……王者人路惨敗……先日の人路の動き素人以下で………ははあ、かなりキツく書かれているな…挑戦者はRIKIO…?ま…まさか、この挑戦者……
「どうやら、弁護人も気づいたようですね。」
「ど、どういうことですかっ!」
ただ一人、裁判長だけがわからないらしい。
勘が悪いジーサンだな……
「この挑戦者、身元を確認したところ………被害者、力道牙王と同一人物だとわかりました!」
「ええええええええッ!!」
や、やっぱり…予想してたけどかなり驚いたぞ。
「証人!これはどういうことですかっ!」
「……………………。」
人路さん……黙っちまったぞ……。
――カンッ
「とにかく、証言してもらいます!4年前の試合と……被害者について知っていることを!」
ううう……本気でやばいかも……





   











「当時、世界王者だった俺はかなり勢いに乗っていた…その時ヤツが、力道が俺の前立ちはだかったのさ。たいした力も無い…動きも速いわけではない。世間から見ても俺が圧倒的に有利に見えた。しかし現実はその逆で俺はヤツに叩きのめされてしまったのさ。あの時の痛みは……今でも忘れられない。そしてその後の俺は逃げるように去ったのさ……ボクシング界を……な。」









「4年前の試合からあなたの名前を聞かなくなったのは、こういうことだったのですか……。」
「これで、立証されたでしょう。……………動機は。」
「そうですな。――では、、弁護人!尋問を。」


















「波にのっていたというと……どのくらいですか?」
「そうだな……今の力道くらいの人気はあったぞ。」
「その人気を被害者にぶち壊されたわけですな。」
「ふむう……。」
うううう……不利だ……。
「被害者……力道さんのボクシングの強さは……?」
「アマチュアと比べたらそこそこの実力だが…プロのレベルだとは言い難った。」
でも…人路さんは負けた………惨敗で。人路さん…何かあったんだろうか?
「あの時の痛み……とは?」
「わからないか?格下に負けて……ボクシング界を追われた痛みが。」
相当傷つけられたみたいだな……プライドを。
「ボクシング界を去ったあとはどういう生活を……?」
「とりあえず、人目を避けて生きてきた。関係者達に見つかったら面倒だからな。」
ううん………聞けば聞くほど不利になっていくぞ……。















―カンッ
「もう、いいでしょう。被告人の被害者に対する動機は明白です!」
「ご理解、感謝します。」
まずいな……ここまで絶望的とは…
「あとは被告人がやったという証拠があれば、カンペキなのですが……。
「ふふふふふふふ……」
例によって、只野検事の嫌な笑い。嫌な予感がするけど、やっぱり……?
「裁判長!検察側はさらなる証人を用意しています!」
「ほ、ほう……一体どのような?」
「殺人の瞬間を目撃した人物です!!」
「ええええええええええええええッ!!?」
や、やっぱり……。どうも、今日は嫌な予感ばかり当たる日らしいな。
「では、その証人に入廷してもらう前に15分間の休憩をとりたいと思います!検察側は証人の準備をしておくように!」
「了解しました。」
それでは、これより15分間の休憩に入ります!」
―カンッ
















            





             〜つづく〜













証拠品ファイル
〜弁護士バッジ〜
僕の身分を証明する、三ヶ月前にもらったばかりの金ピカバッジ。

〜力道牙王の解剖記録〜
死亡推定時刻は午後10時から11時50分。死因は胸部をナイフのようなもので刺された際の失血。

〜ナイフ〜
被害者・力道牙王の胸に突き立っていた。
人路渉のものと判明。

〜新聞記事〜
4年前の被害者と人路の試合の結果が書かれている。見出しは[王者人路惨敗]。

人物ファイル

〜輝昇(23)〜
ド新人の弁護士で、今日が初法廷。
家族が全員、法律関係などの仕事に就いている。一応、長男。

〜黒須 明(40)〜
僕の遠い親戚で師匠でもある。世間ではテレビにもでていて、かなりの有名弁護士。

〜人路 渉(26)〜
今回の事件の被告人。昔超有名なプロボクサーでかなりの人気があったとか。

〜力道牙王(28)〜
この事件の被害者。今を生きる超有名プロボクサー。人路さんが言うにはそんなにボクシングは強くないみたいだけど……?

〜只野健治(36)〜
この事件の担当検事。ぱっと見、ただのおっさんにしかみえず、検事のオーラが感じられない。

■作者からのメッセージ
文才のかけらもないですがみてくれたらありがたいです!

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