逆転の一歩〜プロローグ&法廷・前編1〜
作者: ぺーぱーくらふと   2008年01月02日(水) 12時13分13秒公開   ID:4XBSiRB8PSU
4月12日 午前9時42分 地方裁判所 被告人第2控え室                        
(ううう…キンチョーするよ…)控え室で一人の男がソファに座っている、いやうずくまってるというべきか。上に向かってはねたなんとも変なヘアスタイル。着ている深緑のスーツは、今の気持ちを色で表しているのだろうか。
「輝君。」上品な出で立ちの男が深緑のスーツの男に声をかける。
「あ…黒須(くろす)先生!」「ははは、緊張してるようだね。顔、真っ青だよ。」穏やかに黒須は笑う。
「それにしても、はじめての法廷で殺人事件を扱うなんて。物凄い心臓だね……君も、君の依頼人も。」「他人事みたいに言わないでくださいよ…。」真っ青な顔のまま輝は引きつった笑いを返した。
「輝君。依頼人がきたようだよ。」
「…あ、はい!」
依頼人と呼ばれた男はタンクトップにジーンズとなんともラフな格好だ。
輝は依頼人のそばまで駆け寄ってやや大きめに挨拶した。
「お、おはようございますっ!人路(ひとみち)さん!」
「……ああ。」とだけ返事を返す。
「……………。」
「……………。」
(この人、妙に威圧感あるよなぁ…)
「…………………。」
(こ………怖ぇ…。)
「先生。」
「はいいぃっ!!」なぜか気をつけの姿勢になった輝を無視して人路は続ける。
「正直、俺はあまり機嫌がよくねぇ。」
(そりゃ、逮捕されて機嫌がいいひとはいないでしょうね…。)
「だから、この裁判。ちゃっちゃとおわらせてくれよ…そのために有名弁護士の弟子であるあんたに依頼したんだからな。」
(は、はじめての法廷なんですが……。こっちは。)
僕の名前は輝昇(かがやきしょう)。
まあ…弁護士一年生といったところだ。
今日は僕のはじめての法廷だ。
正直…胃が痛いんだがそんなこと言っている場合ではない。被告人、人路渉(ひとみちわたる)さんは元超有名プロボクサー。
状況は絶望的らしいが、必ずたすけてみせる!……たぶん!



同日 午前10時 地方裁判所 第2法廷

カンッ
「これより、人路 渉の法廷を開廷します。」
「検察側、準備完了しております。」
「弁護側、じゅ、準備完了しています。」
うう…声がうわずっちまったぞ…
「ふむう…弁護側は、今回が初法廷だと聞きましたが?」
「は、はあ…そうですけど。」
「大丈夫ですか?顔がなんというか、空色になってますが。」
「……緊張するといつもこうですから、気にせず進めてください……。」
ああ…胃がねじ切れそうだよ…。
「ふむう…まあいいでしょう。只野検事。冒頭弁論を。」
「はい。」
只野検事と呼ばれた人は資料を片手に話し始める。
「事件は時計台公園のはなれの機材倉庫で発生しました。被害者は現役有名プロボクサーの力道牙王(りきどうがおう)さんです。」
「ふむう…あの世界王者が…。」
力道牙王…今波にのってるプロボクサーだ。
史上最速KO勝利記録達成…予告KOはすべて的中し、28になった今も世界王者…正直、殺されるような人とは思えないな…
「こちらは被害者の解剖記録です。」
「証拠として受理します。」
〜力道牙王の解剖記録〜
死亡推定時刻は午後10時半から午後11時50分。胸部を刺されて失血死。
「そして、こちらが凶器です。」
「受理します。」
〜ナイフ〜
指紋はない。被害者の血液が付着。柄に「HITOMICHI」と刻印されている。
…ん?この柄の文字…これは一体?
―カンッ
「それでは、只野検事。最初の証人を。」
「被告人、人路 渉を証言台に。」
「ひ、被告人ですか……いかがですか?弁護人。」
「……………………………………え!僕ですか!?べ、別にいいんじゃないですか?」
「…………なんとも軽い承諾ですな。」
「まあまあ、裁判長……こう見えて弁護人には考えがありますから。」
「むうぅ…まあいいでしょう。」
ううう……先生にフォローされちまったよ…
―カンッ
「それでは、被告人を証言台へ!」



「証人、名前と職業を。」
「………………」
ううう……人路さん、機嫌の悪さが手に取るようにわかるぞ………
「あの〜……人路さん?」
ギロッ!
「ごごごごご、ごめんなさいっ!」
「な、なんで弁護人があやまるんですか!」
こ……こわいよお……
「ひ、被告人。お願いします。」
裁判長もビビッてるぞ……
「人路 渉。 職業は…とくにない。」
「それでは証人。早速、証言を…」
「その前に、ちょっといいか?」
「な、なんですかな?」
「まず、最初に言っておきたいことがあるんだが………いいよな?」
いや、僕にいわれてもなあ…
「ま、まあまずは被告人の話を聞いてみることにしましょう…」
ここにいる全員が人路さんにビビッてるぞ…まあ、無理もないけど。
とりあえず、その鬼のような形相をなんとかしてほしいよ…





       〜証言開始〜
      「人路の主張」
「俺はあの事件とは何の関係もない第三者さ、まあたしかに現場を一番先に発見したのは俺だが。だいたい被告人も見たことねえのに殺人なんかするわけないだろ。」






証言が終わり、僕は今一番言いたいことを口にした。
「あの……疑われる理由があるからたいほされたのでは…?」
ギロッ!
「ごごごごご、ごめんなさいっ!」
「い、いやいやだから弁護人があやまってどうするんですか!」
ううううう……帰りたい。
「それでは弁護人!尋問をおねがいしましょう!」
尋問……ついにきたな!
「大丈夫かい?顔がさらに濃く青いよ?」
「多分、これからもっと濃くなりますよ、顔。」
「ははは、それだけ言えれば大丈夫だね。……それはそうと、尋問のやり方はおぼえてるかい?」
「証言をゆさぶりムジュンをみつけたら証拠をつきつける……ですよね!」
「うん。どうやら、大丈夫そうだね。」
「昨日、一万回復唱しましたから!」
「そ、それはそれは…ご苦労様。」
とは言ってもこの証言…この事件と人路さんを結びつければいいんだろ?だったら、ゆさぶる必要はないな…
「異議あり!人路さん。このナイフ…見覚えありますか?」
「ナイフ……?」
「えーっと…こいつです。」
僕は袋に包まれた凶器とされるナイフをかかげる。
「おおっ!こいつは俺のナイフ…事件当夜からなくしちまったんだがどこにあったんだ?」
「ふふふふ…それは殺人現場で被告人を刺し貫いていたんですよ!」
「な、なにっ!」
うーん、嫌なムード。ケチのひとつでもつけてみようかな…

「凶器が被告人のものだからといって刺したのが被告人だとは限りませんっ!!」
「ほう…では何が足りないというのかな?」
「た…例えば、被告人は被害者の顔も知らない…と、いうことは!彼には動機がまるでないと言うことになります!」
ざわざわ…ざわざわ…
「静粛に!静粛に!ふむう…たしかにそう考えられます!」ふう…とっさのケチにしてはうまくいったな。
「ふふふふふ…」
な、なんだ?あの検事さんの笑いは…

なんかとてつもなく嫌な予感がするぞ……







              〜つづく〜
■作者からのメッセージ
法廷編です!
まとまりがないですが、批評よろしくおねがいします!

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