切り裂かれた逆転20
作者: 10join   2007年10月13日(土) 10時32分41秒公開   ID:BaKjuKOI7.w
同日 午後5時01分 切札美術館
 帰って来てみると、子羊宿さんと流さんがぼくたちのことを待っていた。思った通りもうファイルを開けたようだ。
「それで一体その捜査ファイルには何が書いてあったんだ?」
 空悟君がぼくたちの意見を代表した。
「うーん。これは捜査ファイルって言うよりは日記みたいなものだと思う。けど一応バロンについておもしろいことがわかった。とにかく見たら分かる。」
 流さんがそういうので、ぼくたちは捜査ファイルというよりは日記を見てみた。それによると、バロンという名前はこのパソコンの持ち主である守亜さんが最初の現場に残された暗号を解読したものらしい。その暗号というのは一見子供のラクガキのようだったが、家に偶然同じ暗号が出ている本があったので解読できたみたいだ。
「子供のラクガキねえ。一体どんな暗号だったんだろう。」
 真宵ちゃんがつぶやいた。ぼくだって気になる。

「なんか警察に資料ないのか?」
「普通残ってると思うけど。」
「それよりもこのパソコンの画像探した方が早いんじゃない?」
「「「その画像は見つかってないの?」」」
 いつも通り無限君と零樹君と紫音ちゃんは完全に息がぴったりだ。ぼくたちが入る余地が全く無いぞ。
「もちろんある。これがそうだ。」
 子羊宿さんが見せたのは5つの人形のようなものだ。一つも同じ物がなかった。見ただけじゃこれが暗号だとは普通分からない。でもぼくにはなんかすごく見覚えがあった。なんか昔見たような気がする。
「この5文字でバロンと読めるんですか。つまりこれは日本語じゃないようですね。」
 春美ちゃんのいうことは間違ってない。たぶんアルファベットか何かだろう。それにしてもなんで正式名称がバロン・ド・リッパーになったんだろう。なんでザじゃなくてドなんだろう。
「リッパーっていうのは切り裂き魔なんだろうし、ドっていうのは貴族の名前とかにつけるものらしい。男爵だからドにしたんじゃないの。」
 空悟君がかなり適当に言った。まあ作者の考えではそうなんだろう。

「とにかく他の事件も見てみよう。」
 やっとセリフが回って来た。ぼくは法廷パート以外ではなぜかナレーションがほとんどで、セリフがあまりもらえないのだ。
「そりゃ法廷パートで弁護士のセリフけずらないでしょ。そっちが主なんだから。」
 真宵ちゃんの言う通りいくら作者でもけずる気はないようだな。
「そんなことどうでもいいから早くみようぜ。」
「これはなんかあるかもしれないからな。」
「とにかく調べないとだめでしょう。」
 無限君たちに急かされたので見る事にした。見るとバロンの起こした事件はどこかへんな点があった。例えば予告状のつもりか知らないけどオレンジの種が5粒入った封筒が送られて来ていたり、家を開けさせるために架空のグループに招き入れて、こっそりドリルで獲物がある家に掘り進めていたりしていたらしい。なんとヒヒやヒョウを飼っている家に入り、そこの主人が飼っていた沼毒ヘビをけしかけて殺したあとに、体を切り裂いたという事件もあった。日記がとぎれたのはバロンがこの事件の一つ前の事件の捜査中だった。子羊宿さんによるとそのとき守亜さんは殉職した。遺体は切り裂かれた状態で滝壺から発見されたらしい。どうやらバロンも一緒に落ちたようだが生き残ったようだった。そこには守亜さんの遺書らしきものも残されていたという。

「滝壺ねえ。なんでわざわざ滝壺なんかで殺したんだ?どんなに傷を負わせてても自分も落ちる可能性があったはずだ。他の事件にも不自然な点が多い。なんでわざわざそんな手間をかけることをする必要があったんだろう。」
 子羊宿さんが言う通り事件には不自然な点が多いし、これといった共通点も見られない。最もなにかわかるような気はする。でもそれが出て来ない。
「名前が関係あるのかもしれないよ。」
 真宵ちゃんがかなり意味深なことを言った。
「それってどういうこと?」
 ぼくはわけがわからずに聞いた。
「だって守亜堤人ってなんか響きがモリアーティっぽいんだもん。だから滝壺に落とされたんじゃないの?」
「モリアーティって一体誰ですか?」
 春美ちゃんは知らないみたいだ。モリアーティっていうのは悪の組織のボスみたいなものだ。もともとは数学教授だったようだ。ホームズの宿敵のようなもの・・・あれ。ちょっと待てよ。もしかしてバロンが起こした事件って・・・
「ホームズの事件を現代風にしたようなものだっていうのか?」
「確かにこいつを見た限りではそうだ。」
「偶然にしてはできすぎてるよね。」
 バカみたいな話と思うだろうけど確かにそうなのだ。暗号は踊る人形だし、オレンジの種はK.K.Kのあれだし、架空のグループのなんて赤毛連盟みたいだと言ってもいい。しかも沼毒ヘビなんてまだらの紐そのままじゃないか。滝壺に落ちたのは最後の事件だ。最もその後で復活したようだけど。そう考えれば共通点が見いだせる。

守亜の日記 バロンが起こした事件が記録されている。どうやらホームズの事件をもとにして犯行が行われていたらしい。

 これはかなり役にたつかもしれない。それとあの黒いワラ人形はどうなったんだろう。あれって本当にあれなのか?
「どうやら効力は切れてるみたいだけど間違いなく本物だそうだ。地獄通信にも書き込まれてたみたいだからな。」
 こっちにもそんなもの存在してたんだ。でも一体だれから聞いたんだ?
「企業秘密だ。とにかく返しておく。」
 なんだよ企業秘密って。まあ別にいいけど。

黒いワラ人形 武羅布の部屋にあったもの。どうやら本物らしい。かなり恨みがある人に対して使うもののようだ。

 随分曖昧に書きやがったな作者。まあいい。もうこれで終わりにしておこうかな。
「その前にちょっと気になる事があるんだよな。先にそこに行こう。」
 まだどこかにいくつもりなのか。

同日 午後5時20分 小声荘
「一体なんのようなんです。こんなぼろアパートに。」
 武羅布さんが聞いて来た。
「なに。ちょっと持ってる仮面を見せてもらうだけだよ。」
 いきなりストレートに言ったな。いくら空悟君にもそう簡単に見せるとは思えないんだけど。
「いいですよ。これです。こんなのどこにでも売ってますよ。」
 そう言って取り出したのは赤い仮面だった。どこかで見たような気がする。それに目の下あたりに傷がある。これはどうなんだろう。

赤い仮面 どこかで見たような気がする。目の下あたりに傷がある。

 それにしてもこんなに簡単に見せるのには何かわけがあるのかもしれないな。ぼくたちがいる部屋は前と変わらない様子だった。棚はシャーロック・ホームズの冒険だけがないし、パースもやっぱり苦しそうだ。なんか思い当たることがないわけでもない。どうやらみんなも同じようだ。そうしているうちになんだか霧のような物が出て来た。勾玉に宿った新たな力であるミストロックだ。だけど霧が金色で、鍵がほとんどかすんで見えた。
「金色は解除不可能だ。どうやら法廷に持って行くつもりらしい。」
「完全に作者の都合で出てくるロックだな。」
「解除不可能のもあったんだ。」
 紫音ちゃんも知らないほど出にくいものらしい。そうこうしているうちに周りからパトカーの音が聞こえて来た。そしてイトノコ刑事が中に入って来た。
「武羅布公成。あんたを明日の証人として呼び出すことになったッス。いますぐ署の方に来てほしいッス。」
 どうやら何かわかったみたいだな。やっぱり関係あるのか?
「なんだかわかりませんけど明日の証人はぼくのようですね。では法廷で会いましょう。」
 かなり冷静な顔をして武羅布さんは連れて行かれた。明日の裁判は波乱が起こりそうだ。望むところだ。必ずぼくが真実を導き出してやる、法廷でな!
              
                                   つづく
■作者からのメッセージ
次回からはいよいよ最後の法廷です。

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