2人を繋ぐ1つの糸(2) |
作者:
押切 由衣
2007年10月06日(土) 11時09分08秒公開
ID:EE60iGXxdAE
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(一部ナレーションあり) これは夢……そうよ、私はただ悪い夢を見ているだけなのよ―― 本当は薄々気づいてた……私は、本当の子じゃないんだって。 でも……それでも嘘だって言って欲しかった。だって、この事実を受け入れてしまえば……この家に私の居場所が無くなってしまうんですもの。 お父様とお母様の子じゃない? じゃあ一体、私は誰の子だと言うの? 「嘘でしょうこんなの……嘘ですよね?」 私は思い切って母に聞いて見ました。 しかし、母は私の問いに答えず、ずっと黙ったままでした。 「黙っていたのではわかりませんわ、お母様、何かおっしゃってください!」 すると、母が口を開いて言いました。 「嘘じゃないわ、本当の事なの……私も、私だってこんな事……出来る事なら信じたくない。」 母の嘘じゃないという言葉を聞き、私は何も言えなくなり、ただ涙を流すばかりでした。 「そんな……嫌よ、こんなの……じゃあ、今までの24年は皆偽者だったって事? 私は……今までずっと……他人の人生を生きてきただけだったなんて……そんなの……そんなの……もう、嫌!」 これだけ言った後、私はいつの間にか、家を飛び出していました。 もう二度と帰りはしない……そんな覚悟で―― そして気が付けば、私はどこか死に場所を求めていました。 誰にも迷惑をかけたくないから、誰にも見つからずに死ねる場所。 私はこれをキーワードにしていました。 このキーワードに符合する場所とは…… @人のあまり通らない A一部の人にしか目に付かない。 これらに当てはまる場所は……廃墟と言ったところでしょうか。 ということで、場所を決めた私はその辺をさまよって、廃墟を探していました。 今気づいた事ですが、あわてて家を出てきた私には睡眠薬やヒモなどの道具がありません。ですが、今更買うのもあれなので、道具は使わない事にしました。 それよりも問題なのはやはり場所の方、廃墟と言っても……どこがそうだったのかなんてやっぱり思い出せません。 それに、忘れていたけれどここで問題がまた1つ……私の心臓が持つかどうか。 さっきは勢い任せについ走ってしまったけど、本当は走るなんてもっての他! そんな事も忘れてしまうくらいに動揺していたのですね。 (ここで少しですが解説です。) これは今から6年前の話なので、私はまだ心臓移植をしていない状態でした。今は普通の元気な生活をしていても、6年前までは病院にたびたび入退院を繰り返すといったとても退屈な毎日を過ごしていました。 そんな私がこんな夢のような毎日が送れるようになったのも、ある人のおかげなのです。 廃墟を探し始めてから数時間……私の体は疲労を少しづつですが、感じていました。それよりも心配なのが、先ほどに比べて動機が激しくなってきている事。 場所を探す前に、命のタイムリミットが来てしまうのかもしれません―― その頃、家では―― ああ、私のせいだわ……何であの時、あの手紙を読んでしまったの……あの手紙が麗奈にとってどれほど酷い物なのか、私は前からわかってた! それなのに、どうしてそれをよりによってクリスマスという大切な日に知られてしまうの。 ※ 潮香が自責の念にかられていた時、外はいつの間にか真っ暗になっていた。今の時期は家に居ても寒い……コートやマフラーを持たずに出て行った麗奈の事を考えると、潮香は気が気ではなかった。 この時もちろん、潮香は麗奈の心臓の事も心配していた。しかし、それよりも風邪をひいて肺炎などの合併症を起こしてはいないかどうか……潮香にはそっちの方が心配だったのである。 どうしよう、最悪の事態になる前に探しに言ったほうがいいかしら……そうね、そうしましょう! まだ仕事から帰ってきてない息子に一言置手紙を残し、麗奈のコートとマフラーを持って、潮香は麗奈を探しに行った。 潮香が麗奈を探しに行ってから間もなく、家に帰ってきた怜侍は、母の置手紙の内容に驚きを隠せずにいた。 麗奈を探しに行ってきます。 たったこれだけの内容なのにも関わらず、頭の良いこの男には母の手紙の意味がすぐにわかった。 突然の事態に1人では対応出来ないと思ったのか、怜侍はこの時、とても自分がしているとは思えない程の珍しい行動をとった。 親友の成歩堂 龍一に自分から電話を掛けていたのだ。 数分後、成歩堂法律事務所 今日、特に依頼のなかったぼくはいやに暇だった。だからこの時、あいつから電話が掛かってきた時には何故か知らないけど、何だか嫌な予感がしていたんだ。 今日初めての電話が鳴っている。どうせまた何かの勧誘だろうと半ば決め込んでいたぼくは出るのを断っていたが、鳴った電話には必ず出る! をモットーにしている真宵ちゃんはこの電話も逃さなかった。 「はい、成歩堂法律事務所です。はい、わかりました! 今すぐ変わりますね。」 「なるほどくん、電話だよ。」 「誰から?」 「御剣検事、何か酷く慌ててるようだったけど……どうしたのかな?」 「御剣から? わかった! 出るからちょっと電話貸して。」 真宵ちゃんにそう言って、ぼくは御剣からの電話を受け取った。 「どうしたんだ、おまえが電話なんて珍しいな。」 めったに掛かってこない電話を不思議に思ったぼくは御剣にそう言った。 「ああ、ちょっと困った事になったのでな。」 予想だにしない答えが返ってきたので、ぼくが聞き返す。 「困った事……だと、何かあったのか?」 すると、御剣からの答えはこういうものだった。 家に帰ったら、麗奈ちゃんを探してくるというお母さんからの手紙しかなく、どうしていいのかわからなかった。手紙の内容は理解したけど、1人ではどうしていいのか考えられなかったらしく、ぼくに電話してきた……と。まあ、平たく言えば、ぼくたちに麗奈ちゃんを探すのを手伝って欲しいって事なんだけどね。どうして素直に言えないんだか…… 電話の内容がわかったぼくはこう思いつつも、電話を切ってから真宵ちゃんと春美ちゃんにこう言った。 今から皆で麗奈ちゃんを探すために、御剣の家に行くよ! |
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