2人を繋ぐ1つの糸(1) |
作者:
押切 由衣
2007年09月04日(火) 08時48分44秒公開
ID:EE60iGXxdAE
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私の名は綾里 麗奈。現在30歳で弁護士をしております。それは……今から6年前、私がまだ24歳の時でした。 私はある1つの……最も知りたくなかった真実を……知ってしまったのです―― それはとっても寒かった冬の日でした。外は朝から雪が降っていて、クリスマスの夜には最適な気候でした。そう、私もこの時はまだこう思っていました……今年も、今年のクリスマスも例年通り家族皆で楽しく過ごせるのだろう……と。 午前9時、今日は仕事がオフなので、久しぶりに街へ行きました。あたりを見渡してみると、ほとんどと言って良いほどカップルで溢れていました。 こんな中1人で歩くのは何だかとても気まずいような感じがしましたが、私はとりあえず新しい服を求めて近くの服屋へ行きました。 店内へ入ると、そこには新製品が意外にもたくさん並んでいました。主にドレスを着ている事の多い私は、一目散にドレスを探しました。 寒い時期なので、冬物を探していると、新製品(冬物)と書かれたある白い物を見つけました。欲しかったものを見つけた私はまず試着室へと向かい、試着をしてみました。 すると、ラッキーな事に……サイズがぴったりだったのです! このドレスを買うことに決めた私は早速レジへと走り、会計を済ませました。 買い物を済ませた後、私は夜に行われる予定のパーティーの為に、クリスマスケーキとケンタッキーフライドチキンを買いに行きました。この買い物を済ませた後、私はパーティーの事を考えて半ば浮かれながら家へと帰りました。 この後、この気持ちが地獄へ突き落とされたように沈むとも知らずに―― 家路の途中のある道で、私は携帯電話を少しの間いじっていました。 母にケーキとチキンは買っておいたよ!というメールを打って、送信し終えた直後、それまでしっかりと握っていたのに……携帯電話が私の腕から突如落ちました。 しっかりと持っていたのに……どうして落ちてしまったの? 普段なら起きない出来事に、私は嫌な予感がしました。 携帯電話が手元から落ちた後、悪寒がした私はしばらくの間、身動きが出来ませんでした。 でも……早く拾わないと、雪によって携帯電話が壊れてしまう。 そう思った私はやっとの思いで冷静さを取り戻し、落ちた携帯電話を拾って家へと向かいました。 「ただいま戻りました!」 そう言ってから家に入ると、家の中ではいつもと様子が違っていました。 「お母様、私がさっきただいまって言ったの、わかりませんでした?」 いつもなら真っ先におかえりなさい! と言ってくれるのに……この時、私はそう思っていました。 「えっ!? あっ、ああ……おかえりなさい、麗奈。」 母はそう言った後、後ろに何か隠した。 何?今一体何を隠したの? 聞いてはいけないような気がする……でも、どうしても聞いておきたいの! そう思った私は、ついに母に聞きました。 「あの、お母様……その、今後ろに隠したものは……何ですか?」 「な、何でもないのよ! これはちょっとした……そう、同窓会の招待状よ。」 嘘よ、それなら何もわざわざ隠さないわ! それはきっと、私に見せられないから隠しているのでしょう? 「いいから見せてください!」 「ちょっと、何するの!」 抵抗する母の手から手紙を奪った私は、その手紙を隅から隅までしっかりと読んだ。 (ここからは手紙の内容です) 潮香へ 初めに言っておくが、この手紙は麗奈には絶対に見せてはいけない。 何故かというと、麗奈にこの事実を知られたくないからだ。 麗奈は私達の本当の娘ではない。 麗奈がまだ生まれたばかりの頃、裁判所で誘拐事件が発生した。こんな事を言うのは非常に遺憾だが、麗奈はあの時の犯人……綾里 龍作の娘だ。 思えば……今思えば、あの時に私がまだ赤ん坊だった娘を連れて行ったのが間違えだったのかもしれない……あの時、休憩室に置き去りにしていなければきっと、こんなことには……取替え……なんてことにはならなかった。 誘拐犯は娘を連れ出し、自宅で世話をしたらしい。だがその時、とんでもないことをしてくれたのだ。うちの娘の足に焼けどを負わせてしまって……そして、ちょうど同年齢の自分の娘(つまり、私達が今まで娘だと思っていた麗奈)と取り替えてしまったのだ。 私は……麗奈の血液型を見るまで取替えられた事に気づかなかった。3ヶ月検診の時に血液検査をしただろう。おまえには言えなかったのだが……あの時わかった麗奈の血液型は……B型だったのだ。お前がO型で私がA型。いいかい、わかっているとは思うが、A型とO型の間にB型の子が生まれるのはありえない。だからどう考えても、麗奈が私達の娘だという証拠はないのだよ。 麗奈はまだ6歳……真実を知るにはあまりにも幼すぎる。でも、その時が来たら辛いかも知れないが、おまえの口からきちんと真実を話してやって欲しい。辛いかもしれないが、これが私の遺言だと思って聞いてくれ。最後に1つ、たとえ血の繋がりがなくても、麗奈は私達の娘だ。それだけは絶対に忘れないで欲しい。 では、私が居なくなっても2人の子供の事を頼んだぞ 信より 父のこの手紙に、私は今までになかった程の強い衝撃を受けました。 |
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