切り裂かれた逆転17
作者: 10join   2007年08月28日(火) 18時16分47秒公開   ID:BaKjuKOI7.w
同日 午後2時10分 中華料理店 黒龍楼
 ぼくたちはすぐにリストにあるバロンと同じ性格の別人格を持つ人の所に行く事にした。それで一番近いのと、真宵ちゃんがお腹がすいたと言ったので、最初にここに来る事にした。真宵ちゃんさっき昼ご飯食べてなかったか?
「あんなので足りるわけないじゃん。」
 真宵ちゃんならそういうと思ったよ。それにしても中華料理店に誰かを切り裂きたいなんて別人格を持った人が本当に働いてるのか?
「まあ別に切れるんなら野菜でも肉でもいいとか言ってたからさ。ヘタにグループに入れて犠牲者出すよりはいいと思ってな。とにかく腕はかなりいい。オレもここの常連なんだ。雑誌でも何度か取り上げられてるだろ。」
 空悟君が言うように確かにぼくもこの店の名前ぐらいは聞いた事はある。金欠なので食べに来た事はないけどさ。
「噂をしたらやって来たぜ。ここの店長がさ。」
「リストにあったのってあの人だったよな。」
「見た所間違いないみたいだね。」
 紫音ちゃんが無限君と零樹君の会話を引き取った。2人とも言いたい事を先に言われるのはいつものことだという顔をしている。さすが幼なじみなだけはあるかもしれない。その視線の先には背が高くひげが濃い人がいる。なんとなく日本人ではないような感じがするような人だ。
「店長の劉青斬です。ここにいる小さな女の子に成歩堂さんたちが話をして欲しいことがあるっていわれて来ました。それで聞きたい事ってなんですか?」
 見てみると傍に春美ちゃんがいた。一体いつの間に聞きに行っていたんだろう。というよりなんで劉さんは春美ちゃんの格好を見て何も言わないんだろう。

「そこらへんの話は料理を食べながら聞くよ。ちょうど頼んだのが来たみたいだし。」
 見ると確かに料理がやって来ていた。チャーハンとか麻婆豆腐とかあったけど、一番目を引くのは何か大きい鳥の丸焼きだった。なんか名前は知ってるような気がする。
「これって北京ダックとかいうやつでしょうか。」
 春美ちゃんが言った。確かそんな名前だったような気がする。
「よく知ってるねお嬢ちゃん。こいつはアヒルを焼いた物なんだ。基本的に食べるのは身じゃなくて皮の方なんだけどね。」
 アヒル?それって羽とかもついてるのか?
「仕入れる時は羽はぬかれています。それに餌袋とかも取り除かれてますよ。」
 なんで初対面の人にまで心を読まれてるんだ。ぼくはそんなにわかりやすいのだろうか。
「餌袋ってなんですか?」
 真宵ちゃんが不思議そうな顔をして言った。ぼくも餌袋なんて聞いた事無いぞ。
「鳥がエサを入れるのに持ってるものだよ。だからエサの袋って書いて餌袋って読むんだよ。」
 へえ。作者よくそんなの知ってたな。
『大した事無いよ。偶然知ってるだけさ。どっかの小説で読んだだけだよ。』
 かなり適当に答えたな作者。
「そんなことよりこいつの顔見た事あるか?テレビ以外でだけど。」
「ああ。バロンに殺されたっていう男ですか。見た事ありませんよ。」
 サイコ・ロックは出ていない。ウソはついて無いってことか。とにかく後は食べながら適当に世間話をした。それから食べ終わり、ぼくたちは次の人の所に行く事にした。あまり収穫はなかったみたいだけど料理はおいしかったのでよしとしようか。

同日 午後3時20分 小越荘
 次にかなり古いアパートに行った。家賃が格安というのはわかるけど、至るところに穴が空いていて、こんな所に住める人がいるのか疑問だ。でも明かりがついているので、少なくとも誰か住んでいるのは確かだ。
「これでリストにある人は最後だ。もうこれ以上はいない。」
 え?それはそこまでいるとは思ってなかったけど、クリムゾンジャック先生の他は2人しかいないとは思ってなかったぞ。空悟君が言う通りもうこれだけしかいないのか?
「本当はもう1人いるんですけどね。でも聞く必要は無いみたいですよ。」
「仮面の絵札の他のやつらがもう調査したらしい。弁護士にこれ以上負担をかけたくないんだってさ。」
「本当に理由はそうなのかは怪しいけどな。もう一つ考えられる理由はないわけじゃない。それはさあ」
「「「弁護士なんて連れて行くとめんどくさいことになるからとかさ。」」」
 なんでここで紫音ちゃんまではもってるんだろう。新しいパターンだな。それにしてもなんで弁護士を連れて行くとめんどくさいことになるんだ。それに聞き込みの結果はどうなったんだろう。
「流によるとそいつは最も疑いが濃いけど、一番犯人の可能性は低いらしい。まああいつの職業なら無理は無いか。まさかあそこまで言う事を真に受けるとは思ってなかったよ。」
 空悟君それって一体どういう職業なんだ。もしかしてかなり怪しい事をしてるんじゃないだろうな。そうしている間に部屋に入れてもらえることになった。

「一体なんのようです。もしかしてあの殺人事件のことじゃないでしょうね。ぼくがあいつと同じような能力を持ってるから。」
 目の前にいる若い男の人が言った。服装がかなりだらしなく、ひげも長いこと剃ってないという感じだ。
「あ。すいません。ぼく武羅布公成って言います。あなた成歩堂さんですよね。かなり散らかっている部屋ですが、どうかくつろいで行って下さい。」
 確かに部屋はかなり散らかっていた。辺りに何があるのかわからないほどだった。だけどその中でも本棚にある本だけはきれいに片付いている。ほとんどがミステリーだった。
「ぼくミステリー大好きなんです。特にホームズが好きです。」
「ホームズの棚が1冊分空いているみたいですけど。」
 真宵ちゃんが言う通り1冊分空いていた。あまりよくわからないけど、ないのは「シャーロック・ホームズの冒険」という話のようだ。
「ええ。少し友達に貸してるんです。」
 なるほど。確かにそういうこともあるだろう。別に大した事じゃないだろう。

本棚 武羅布の家にあったもの。「シャーロック・ホームズの冒険」という話だけが無くなっている。

 作者はなんでそこで証拠品に加えるんだろう。本当は意味があるのだろうか。そしてもう一つ気になるのは、部屋の隅にいるアヒルだ。なんだか苦しそうにしている。
「どうしてんですかこのアヒル。なんだか苦しそうですよ。」
 春美ちゃんが心配そうな顔で言った。
「大丈夫だよ。別に心配するほどの事じゃない。」
「でも一応獣医さんに診てもらった方がいいのかもしれませんよ。」
 武羅布さんがあまりにも楽天的だったので、紫音ちゃんが紫音ちゃんが注意をした。
「本当に心配ないから。多分食べ過ぎたんだろう。」
 別に気にした様子は無く淡々と話している。どうやらよくあることらしい。
「そのアヒルなんていうんですか?」
 このままじゃセリフが0になってしまうかもしれないので聞いてみた。
「パースです。いい名前でしょう。」
「ええ。そうですね。」
 適当に相槌を打った。確かに変わった名前だとは思う。パースって確か英語で何かを意味してたような気がするな。一応証拠品には加えておくか。

パース 武羅布さんが飼っているアヒル。なにやら苦しそうだ。

「こいつと会ったことはあるか?」
 そして空悟君が写真を取り出した。もちろん烏賊様さんの写真だ。
「いいえ。最近見た事はありますけど。かなりニュースになってましたから。」
 やっぱり予想通りの反応が返って来たな。ここでは犯人でもそう主張するだろう。
「つまり今のそいつとはあまり親しくないっていうことか。」
「ええ。そうです。」
 空悟君が言ったことを素っ気なく返した。サイコ・ロックは出てないし、あわてた様子も全く無かった。でもぼくは今の質問は何か変だと思った。なにかものすごく不自然な気がした。
「わかった。それじゃあまたなにかあったら来るよ。」
 それからぼくたちはいったんアジトに帰ることにした。この2人の話を聞いただけではまだ肝心な所はわからなかった。   
                                    つづく
 

 

 
■作者からのメッセージ
更新しました。次は話がかなり動く予定です。

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