晴れ、時々雨、また晴れ。 |
作者:
果奈
2007年08月13日(月) 15時52分25秒公開
ID:1do1r/JQSbg
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「やあ、刑事クン。捜査は進んでるかな?」 「ちゃんとやってますってば。っていうか、ジャマなんであっち行ってくれませんか?」 ・・言葉がトガッている。この牙琉響也に話しかけられたらフツーはハートマーク付きの言葉が返ってくるもんなんだけど。 「ほんとにきみはつれないねえ。」 「だから、あっち行ってくださいって。そうじゃないとかけちゃいますよ!この――」 「実験中のハイドロキシアセアニリドスホスホモノエステラーゼ溶液を、かい?」 「!」 かなりおどろいたようだ。まあ、このクスリの名前を言えるのは僕と彼女ぐらいだろう。 「とにかくあっちにいってください!」 ・・・言葉がさらにトガッているような気がする。 下手すると殺されそうなのでボクは現場をあとにした。 「はあ〜〜刑事クンって何でこんなにつれないんだろう。」 こんな露骨に嫌われたのはハッキリ言って初めてだ。 「あら、どうされましたか?ため息なんかついて。」 気がつくと見知らぬ女の人が立っていた。年齢は30代後半ぐらいの落ち着いた雰囲気のきれいな女性だ。 「あ、申し送れました。私は宝月巴。元・検事です。」 へえ、元検事なのか。ってあれ? 宝月? 「あの、もしかして刑事ク・・いや、茜クンの親戚ですか?」 「ええ、茜はわたしの妹です。」 そうか、彼女には検事だったお姉さんがいたのか・・ 「あの、宝月さん。茜クンのこといろいろ教えていただけませんか?雨も降ってきましたし。」 「ええ、かまいませんが・・・」 と、いうわけでボクは巴さんと近くの喫茶店に入った。 席に座りとりあえずコーヒーを頼む。 「でも、なぜ茜のことを聞きたいのですか?」 ここで本当のことを言うことは絶対できない! 「いや、ボク上司だから部下のことは知っときたいと思ったんですが。」 「うそでしょう。」 ・・アッサリばれてしまった。 「カオが真っ赤です。あなた、茜のことが好きなのでしょう?」 ここまで鋭いとなんか怖い。黙っているのを肯定と受け取ったらしく巴さんは話を始めた。 「あなたは聞くべきかもしれません。あの事件のことを・・・」 そして巴さんはたくさんのことを話してくれた。自分たち姉妹が関わった2つの事件のこと。自分が刑事クンのためにねつ造をしてしまったことも。 「茜はこのことを知られるのを嫌がります。自分が姉を犯罪者にしてしまったから。」 「でも、何で僕なんかにこんな話をしたんですか?」 そう、何で僕なんかにこんな話を? 「あなただったら、茜を救えてくれそうだったから。」 へ? 「あなただったら茜を救える気がするんです。なんとなく、ですけれど。」 ボクは今の状況がよく飲み込めていなかった。でも、理解する時間もなかった。 だってすぐそこに彼女がいたから。宝月茜という名のボクの好きなヒトが。 「なんで牙琉検事にそのことを話すの?何で?」 その疑問も当然かもしれない。彼女の知られたくないことをよりによってこのボクに知られてしまったのだから。 「もう・・大っ嫌い!」 「刑事クン!」 ボクは彼女を追いかけていた。雨はどしゃ降りになっていたけど、そんなの今はどうでもよかった。 彼女は近くの公園にいた。 「刑事ク・・」 「こないで!」 ボクは刑事クンを抱きしめていた。理由なんてわからない。ただ、体が勝手に動いていた。 「どうして? どうしてアタシに関わろうとするの? どうして、あの事件のことも聞いてしまったの? あなたは、あなたはただの上司じゃない!!」 彼女の頬から涙が流れている。どんなに嫌われててもいい。ボクは・・・ 「キミにとってはそうかもしれない。でも、ボクはキミが好きなんだ!」 「!」 彼女はそれはとても驚いた。でも、コレがボクの正直な気持ちだ。 「ボクじゃ、ダメ?」 「その事件のことも全部ひっくるめて、キミを受け入れるよ?」 どんな過去があっても、どんなことをしても。 「それじゃ、ダメかな?」 沈黙が続いた。 「・・・ダメじゃ、ないです。」 「え?」 ボクは自分の耳を疑った。 「最初は検事のこと、大っ嫌いでした。ジャラジャラしててウザイし、それなのに女の子にモテるし、いつも私の近くにいるし・・・でも、それが当たり前になってたんです。周りを見渡すと、あなたがいて、笑ってくれてた。何言っても近くに居て、いつの間にかいつもそこに居るあなたをを見てた。でも、キモチに気づかない振りをしてた。・・ホントはあなたが好きだったのに。」 「ホントに?」 だって、そんなうまい話あるわけないよな。うん。 「たぶんホント・・だと思います。」 まさかこんなコトがほんとにあるなんて思わなかった。でも現実になった今は幸せだった。 「じゃあ、これからヨロシクってコトで、茜クン。」 「コレからよろしくってどういうことですか? っていうか今、茜クンって呼びましたよね?」 まったく、わかってないなあ。 「だって、つまりコレは愛の告白でボクと付き合ってくれるってコトだろう?それに、彼女に向かって刑事クンはないと思うし。」 「えっ! ちょっと、それは・・そうですけど。」 顔が真っ赤だ。可愛いな。かなり。 「じゃあ、行こうか。」 「えっ?どこにですか?」 そんなことは言うまでもない。 「決まってるだろう?デートだよ、デート。」 茜クンのカオから煙が出た。 「さあ、早く行くよ。茜クン。」 いつの間にか雨が上がって、空はきれいに晴れていた。 |
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