逆転を結ぶ橋 1 | |
作者:
流月氷龍
2007年07月24日(火) 21時51分54秒公開
ID:d8l1MhGI.wI
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暗い夜の闇、激しい雨。 赤い傘を差している者と青い傘を差している者が、向かい合って話し合っていた。 赤い傘を差している者が何かを言った後、もう一人は首を振る。 そして彼が何か言った後―― 青い傘が地面に転がり、最後に言葉を話した者は腹から血を流して倒れた。 ――赤い傘を持った者は、血の滴っているナイフをただ手に持っていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「今日はお忙しい中来ていただき、有難うございます」 「いえいえ。最近食べるものが少なくってパーティに誘われてとても嬉しいですよ」 とある豪邸にて、茶色い髪を伸ばした眼鏡をかけた女性と水色のニット帽子を被った男性…成歩堂龍一――や、成歩堂さんが話している。 あ、自己紹介が遅れたな…オレの名前は王泥喜 法介。 実は今は――成歩堂さんとみぬきちゃんと一緒に、とあるパーティに参加している。 なんでまぁそんなことになったのか、今話そうか…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――5月12日、午後1時14分、成歩堂なんでも事務所。 「オドロキさん! 今月の給食費、どうすればいいんですかッ!!」 「オレに言うなよッ!」 絵瀬まことさんが無罪判決を受けてから、数ヶ月経った時だった。 成歩堂なんでも事務所。ここでオレとみぬきちゃんは、いつものように子供っぽい言い争いをしている。自分で子供っぽいって言うのもなんだが。 とにかく、成歩堂親子は予算が今月もピンチらしい。 電話代やらなんだやらで――今月も給食費が払えない状況に陥ってるとか。 いつものことだから、この親子のこんな騒ぎを聞いてもオレは少しも動じなくなった。 ――いいのか悪いのか。 そんな時、様子を見ていた成歩堂さんが言う。 「オドロキ君、困ったよ。今月の給食費も払えそうも無いんだけど。」 「パパの言う通りですよ、オドロキさん! 給食費は2万円なのに、今の全財産は1万円なんですよ!これじゃあ、食べていけませ――」 みぬきちゃんが言い終わるか言い終わらないかのうちに、ドアが勝手にガチャリと開いて誰かが入ってきた。 「食べていけないなら、うちで食べていきなよ!」 「アカネさん!」 勝手にドアを開けた人はいつもオレ達が世話になっている『カガク捜査刑事』の宝月茜さんだった。 ――って、人の事務所のドアをノックも無しに勝手に開けるな。 と言うか普段はいつも不機嫌な茜さんがこんなに上機嫌ってのは一体何があったんだろう。 きっと相当良い事があったに違いない。――例えば、かりんとう20袋くらい誰かにもらったとか。 そんなことを疑問に思っている最中、成歩堂さんが言った。 「茜ちゃんじゃないか。どう言う意味かな、うちで食べていきなよってのは。」 「ふふ。実はですね、お姉ちゃんの家でパーティ開くんですよ!」 「ぱーてぃーっ?!」 『パーティ』の言葉を茜さんが言った瞬間、みぬきちゃんが目を輝かせはじめた。 ってかお姉ちゃんって、茜さん…お姉さん、居たのか。 成歩堂さんにはその『お姉ちゃん』に心当たりがあるそうで、表情を変えず『お姉ちゃん』の名前らしいものを挙げた。 「巴さんがパーティか…そんなことするような性格でもなさそうだったけどなぁ。」 「その性格はあの時だけです。ほんとはお姉ちゃんってば、とっても明るいんですから!」 どうやらその『お姉ちゃん』――いや、『巴さん』か? その巴さんと茜さん、相当仲の良い姉妹みたいだな。 だがみぬきちゃんの耳に成歩堂さんと茜さんの会話なんか入ってない。はしゃぎながら、茜さんに尋ねていた。 「アカネさんアカネさん! パーティっていつですかっ?!」 「実は、今日の夜なんだよねー。でも今日になっていきなりお姉ちゃんが『成歩堂さんも是非誘いたいわ』って言うから。」 それって姉妹そろって成歩堂さんと知り合いってことだよな? しかし…今日の夜ってどうなんだよ…オレ、パーティの礼儀とか解らないんだけど。 それとも普通に振舞ってればいいのか? 「んで、来てくれますか?成歩堂さん。」 「はは、茜ちゃん。行くわけない…」 え?! 「…と、僕が答える可能性は100%ないよ。勿論、行くともさ。みぬきと一緒にね。」 「わぁ!みぬきも誘われちゃいましたっ!」 どうやら、みぬきちゃんも一緒にパーティに行ってくるらしいな…行ってらっしゃ… じゃなくって、オレは?! もしかしたら、置いてけぼりなのかよ! 冗談じゃない!! 「ちなみにオドロキ君も一緒でいいかな。」 「ま、いいですよ。」 ま、って…茜さん、ヒドイですよ。 「じゃあ、決まりね。今日の夕方迎えに来ますから、準備しといてくださいね!」 準備ったって、準備するような服さえないのに何を言ってるんですか。 そんなわけで、オレ達は茜さんのお姉さん…巴さんのパーティに行く事になったのだ。 その時はみぬきちゃんはきゃーきゃー言って大はしゃぎ、成歩堂さんはそんなみぬきちゃんを見てニコニコし、オレは――正直、どうしてたか覚えてない。 でも、パーティが楽しみだったのには間違いなかったな。 でもまさか、あのパーティであんな事件が起きるなんて。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――同日、午後6時9分、宝月邸前。 「ここがお姉ちゃんの家だよ。」 茜さんに連れられてきた家は―――冗談もお世辞も抜きで、豪邸と言っても過言ではないほど凄かった。 そんな家を見てオレ達が驚かないはずが無く、みぬきちゃんとオレは揃って声を上げて驚いた。 「う…うわあぁぁぁぁ…」 「まさにこれこそ…『あるまじき』ですね、オドロキさん…」 いや、みぬきちゃんの言う通りだよ、本当にこの豪邸っぷりは『あるまじき』だ。 バランさんみたいに『あるまじきぃぃぃぃぃ!!』って叫びたいぞ、本当は。 茜さんっていつもかりんとうばかり食べてるけど…こんな豪邸を持つお姉さんが居るってことは実はお金にはぜんぜん困った事はないのかもしれない。 …そんな有り余るほどお金があるんなら成歩堂さんたちにお金あげてください、茜さん。無理だろうけど。 と言うか、オレ達が驚いてるのになんで成歩堂さんは動じないんだ。 実はひっそり巴さんと会ってたりしたのか。いや、さっき『巴さんがねぇ…』みたいなこと言ってたから、巴さんのプライベートなことは知らないはずだ。 じゃあ何でだ。ただ単に鈍感なだけなのか、驚きのあまり無表情で立ち尽くしてるのか。 「さ、入りましょう!お姉ちゃんが待ってますよ。」 「あ、うん。そうしようか。」 成歩堂さんは我に返った。…やっぱり、驚きのあまり立ち尽くしてたのか。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――同日、午後6時10分、宝月邸内。 茜さんは快く家にオレ達を入れてくれたが、正直言うとオレはすごく緊張していた。 …だってさ、オレには無縁だと思っていた豪邸に入る日が予期も無く来るなんて。 とにかく、外見からするように…中もとっても豪華だ! オレはこんな豪邸に足を踏み入れる機会をくれた茜さんに心の中で感謝した。 茜さんに導かれるうちに、オレ達は色々な人がいて賑わっているパーティ会場に着いた。 ―そこに着くと、茜さんが叫ぶ。 「お姉ちゃーん!成歩堂さんだよ!!」 パーティの真っ最中に叫ばないで下さい、茜さん。 それともここは広いし賑わってるから、叫んでも何も変わりないし誰も気にしないのか。 でも誰かがオレ達の側にやってきた――それは、茜さんに少し似た、綺麗な眼鏡をかけた女性。 この人こそ、茜さんのお姉さんだろうか…。だったらすごく緊張する。 だってこの人――無表情さと眼鏡ががっちりマッチして、『すごくデキる女』みたいなオーラが出ている。 茜さんって――そんな人の妹だったのかっ! そして何より――オレ達は、そんな凄い人の妹と馴れ馴れしくしていたのかっ!! そう思うと凄く恐ろしいことしてたと思うよ、オレ…。 「…成歩堂弁…いや、成歩堂さんですね。」 「ご無沙汰しています、巴さん。」 「こちらこそ。…今日は、お忙しい中来ていただき有難うございました。」 「いえいえ。最近食べるものが少なくってパーティに誘われてとても嬉しいですよ」 ――外見とのギャップも無くとっても毅然としたその態度。 まさに巴さんって…『デキる女』じゃないかっ! なんかオレ、悲鳴あげて逃げ出したい気分なんだけど…。 「…そちらの方々は?」 「ああ、ムスメと下っ端ですよ。」 「トモエさん、初めまして!成歩堂みぬきですっ。」 「あ…初めまして。オレ、弁護士の王泥喜法介です。」 と言うか成歩堂さん、オレは『下っ端』扱いですか。 ――んで、巴さんの顔を見るとそりゃあ勿論驚いている。だって…成歩堂さんにムスメなんてなあ。 勿論訳ありだけど、一度『ムスメ』と聞いたら勿論驚く。 ――特に成歩堂さんのことを知っている人は。だから、巴さんは驚いてる。 「…あ、あの、失礼しますが、ムスメ…?」 「この子の元の苗字は『奈々伏』です。僕が弁護士バッジを取り上げられた7年前に起きた事件の被告人の実の娘ですよ。そう言う理由で身寄りが無いので、僕が引き取ったんです。」 「…そ、そうでしたか…。」 まぁ、訳を説明したら誰だって落ち着く。実の娘だったらやばいぞそれは。 茜さんが得意げな顔をしてオレ達にお姉さんを紹介してくれる。 「お姉ちゃんはね、元々主席検事だったんだよ。でもある事件で辞めちゃって…色々苦労して、また検事に戻ったの。」 検事…かぁ。自分で言うのも情けないが、オレが巴さんと戦ったら絶対負けそうな気がする。 とりあえず、凄く強そうな人だな。元主席検事と言う事もあって。 ――カッコいいな。って、こうやって言うのは牙琉検事の方が正しいのかもしれないけど。 「茜ねぇちゃーん! 巴ねぇちゃーん!!」 突然、こちらに向かって誰かが叫んできた。 誰だと思って見てみると、セミロングの髪の少女が居た。…背的に、みぬきちゃんより年下か。 でも大体同い年かと思う。なんとなく、巴さんにも茜さんにも似ている気がする。 この子は一体誰だ…? 「紫ちゃんじゃない。」 ゆかりちゃんって言うのか。どんな漢字を書くんだろう? 「この子は宝月 紫(ほうづき ゆかり)ちゃんって言うの。むらさきちゃんと書いてゆかりちゃんだから、よくむらさきちゃんって間違われるけど…ゆかりちゃんよ!」 紫ちゃんですか…。確かにそのままだと間違われそうだな。 「間違ったら実験中のハイドロキシアセ――」 「それ、もういいですから。」 ハイドロ――なんとかって、よく噛まずに言えるよ。流石はカガク捜査刑事。 とにかくこの紫ちゃんって子は何なんだ、いったい。 「あ、初めまして、宝月 紫です。あたし…茜ねえちゃんと巴ねえちゃんのイトコで、14歳です!」 14歳か。やっぱりみぬきちゃんとほぼ年齢は変わらなかった。 んで、茜さんにはお姉さんだけでなくイトコまでいたのか… 「イトコかぁ、意外だな。まさかここまで似てるなんて。」 「似てるって――何がですか?」 「いや、僕が初めて茜ちゃんと巴さんを見た瞬間…助手の子とそのお姉さんに似てるなーって思ったんだよ。その助手の子にはイトコがいた。だからここまで被ってるとはなーって。」 「パパの助手の子って…副所長さんかぁ。」 副所長か…。聞いた事はあったけど、茜さんに似てたなんてな。 いつか聞いた話では『副所長は矢田吹屋の常連さん』って言ってたから… かりんとうの代わりにラーメン食べまくってたのかな。あのしょっぱい味噌ラーメンを。 ――なんか考えづらいな。 「えっと、オドロキさんに、みぬきさんに、成歩堂さんですね! 今日は巴ねえちゃんのパーティに来ていただいて有難うございます!」 むらさきちゃ――じゃなくって、ゆかりちゃんは緊張気味にそう言う。人見知りする方なのかなぁ。 でも茜さんみたいに明るく振舞おうとはしている。なんか、緊張をほぐすようなことしてあげたいな。 ――そうだ、ここは―― 「紫ちゃん、はじめまして。――えーっと、みぬきちゃん。」 「なんですか?」 「紫ちゃんに『ぼうしクン』か『パンツ芸』やってあげなよ。きっと喜ぶと思うよ。」 「こら! パンツ芸じゃないっ!! …ぼうしクンですか。」 パンツ芸って言われてまた怒られちまったよ。 んでぼうしクンの方だけど、あれはなかなか驚かされるけど、面白い事には面白いからな。 みぬきちゃんは納得したらしく、『はい!それじゃ行きますね!!』と威勢良く言って、ぼうしクンを出し始める! ⇒To Be Continued... |
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