司る者の逆転2
作者: 厄介   2007年07月24日(火) 12時31分45秒公開   ID:a2NPBN.0RBI
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  10月12日 午前10時42分 地方裁判所 被告人第二控え室
今日のオレは絶好調でもなく、普通だった。灰汁智さんは、裁判長に呼ばれているっていうし・・・、話し相手が全くいない。成歩堂さんや、みぬきちゃんもいないし・・・。呆れて、飾られている絵を見ていた。係官はそんなオレをじっと見つめている。
「・・・なんですか」
「いっ、いや・・・検事殿から、情報が寄せられております」
「はい?」
座っていたソファから立って離れ、係官のところに向かった。
「なんです?」
「あなたの担当している事件、事件当日に雷があったそうです。これが、雷警報の報告書です」
(係官から”雷警報報告書”を受け取った)
「ありがたいんですけど、なんで、雷が?」
・・・恥ずかしそうな係官は、そわそわしながら、
「知りません。事件のときに目撃でもしてください。手遅れだけど」
と、言った。オレは係官に背を向けて、またソファに座った。・・ところが、また、誰かが入ってきた。
「おデコくん!久しぶりだ!」
「あ、牙琉検事だ!」
「そんな言い方ないでしょ?」
「はいはい、そうですね・・・、でも、検事が入ってくるなんて、珍しいですね。なんですか?用でも?」
「いや・・・最初の証人が居なくってさ・・・。できれば、今日中に捕まえたいんだけど・・」
まさか、証人が脱走したのか・・・?いや、もしかして、被告人が・・・オレは気になった。そこでオレは
「あの、被告人じゃないですよね。証人って」
と疑問を疑うように言ったが、牙琉検事はにっこり笑って、
「違うよ。使用人だ。いわば、召使」
・・・と、返事を返した。
「ふ。ふうーん・・・。(召使って・・・、榎さんの自宅、そんな偉かったっけ?)」
「でも被告人は、裁判長と会話してる最中だから・・・。大丈夫」
「なら、いいんですけどね」
オレは手をブラブラさせて、まるで、”ヒマだー”って言ってるかのようなポーズを取った。呆れていく牙琉検事。そして、時間が迫ってきた。
「さ、おデコくん。証人が居ない間、事件説明で補うよ。さぁ、いくよ!」
「あ、はあ・・・」

   同日 午前11時5分 地方裁判所 第二法廷
傍聴席の人がざわざわとざわめく。そんななか、灰汁智さんの審議が始まった。
「ええと、・・・うぅんと・・・・」
「”あくじかとり”と読むんだよ。裁判長」
「あ、じゃあその、審議を始めます」
「さあ、早速・・・」
牙琉検事は資料を取り出す。これは、証人を捕まえるための、暇潰しなのだろうか。
「事件は10月10日午前0時5分に起こった。被害者は貸切会社”タコージCTEL”の社長、高団次頌津愚氏・・・だね」
物事を考えるように、そわそわする牙琉検事。これも・・・なのか?段々、疲れてくるぞ。そして、見飽きた。
「ああ、そうだ!被害者はマスコットキャラクター”アクアジカ”を契約するために、あの榎家の家にやってきたそうだね!」
「ほお、マスコット・・とはどんな?」
「被告人席のコを見れば分かるんじゃないかな?その・・・ムネに付いてる小さなバッジが・・・」
そして、法廷の人々はみんな灰汁智さんに注目した。
「さて、審議に戻りましょうか」
「じゃあ、現場写真を渡しておくから、目を通しておくといいよ」
(現場写真を法廷記録に記録した)
「恐れいりますぅ!牙琉検事!」
係官の原灰ススム(はらばいすすむ)とかいう人が突っ込んできた・
「ええと、証人を捕まえましたでありますからしてェ!」
「ほお、お手柄お手柄♪さ、帰っていいよ。きみ」
「ええ、本官は、出番なしでありますか・・・」
悲しそうな顔をする原灰係官。しょぼーんとした顔で、立ち止まった。そんな原灰係官を裁判長が元気づける。
「ええと、さ、気を落とさずに・・・係官」
「本官はァ、誰にも相手されずにィ!あの、イトノコギリ刑事みたいに、なれないでありますからしてェェェッ!!!」
原灰係官はなんと32歳にして、泣き出してしまったのである。裁判長は呆れてしまった。
「じゃあ、呼んでいただけますか?証人を」
「うっ・・・うっ・・・。分かったで、あります・・・」
立ち上がった原灰係官は泣き止んでから、証人を呼びに行った。

「赤城灯華(あかぎとうか)です。榎家の召使です」
「ふうん。君が灯華・・・ね」
じろじろと、赤城さんを見つめる牙琉検事。
「なんですか、じろじろ見て」
赤城さんはその視線に、とっくに気づいていたようだ。
「ああ、なんでもない。ただ、ね、失踪した理由を知りたいなぁ、なんて、思っただけ。あるでしょ?ひとつぐらい」
「・・・話せば、済む事ですよね?」
「話次第、ね」
「・・・・・・・・・・」

   証言開始 〜失踪した理由〜
「別に、居なくなったってわけではありません。ただ、榎さんに言われて戻ってきただけです。その理由は言えませんし、何をしたかも言えません!」

「”絶対の秘密”・・ですか。なかなか興味深い話題ですな」
赤城さんは床に視線を向けていたままであった。裁判長は赤城さんに声をかけた。
「心配しなくても、すぐ終わりますから」
「なら、良いんですがね」
なんか、普通な返事で何事もないみたいだった。そして、安心する裁判長。時間が過ぎるとき、尋問が始まった。

   尋問開始 〜失踪した理由〜
「別に、居なくなったってわけではありません。ただ、榎さんに言われて戻ってきただけです。榎さんの命令は絶対なのです。その理由は分かりませんし、何をしたかも言えません!」
オレは彼女の証言に悩みを持った。
(・・・別に問題はないんだけど、何かおかしい。”したこと”は立証できなくても、”命令は絶対”という”理由”は立証できそうな気がする・・・。榎家の家の上面図を見る限り・・・あッ!)「異議あり!」「・・・・何をしたかは分かりませんが、”榎さんの命令が絶対”の理由、何か、分かったような気がします」
その言葉を聞いた赤城さんは必死に、何か、右目の包帯を握り締めるように動揺をしていた。
「なっ、なっ、なんですって!聞かされてもいないというのに!」
そうだ。彼女、彼女は・・・・
「貴方は確か、”孤児”でしたね」
「・・・あっ!」
「気づきましたか?赤城さん。・・・赤ん坊の頃に榎家に拾われて、”育てる代わりに命令を従え”という条件を出されたことを!」
「・・・気づかなかったわ・・・」
傍聴席の全体は騒ぎ始めた。そうだ、榎家は何かの便利さを体験するために、赤城さんを利用した・・・。よく考えれば、それはいけないことだ。赤城さんは事実というものを知って、ショックを受けていた。傍聴席に居た夫喬さんは、それを空耳のように聞いていた。牙琉検事は、半分真っ青な顔で言った。
「さ、本題に入ろうか?」
「は、はい・・」
恥ずかしそうに、赤城さんは指と指をこすりあいながら、モジモジしていた。傍聴席の人は、その行動を不審に思っていたことだろう。牙琉検事は真っ青から普通の顔に戻して、
「じゃあ、証人。頼むよ、証言。事件当日の命令は”一日中監視”だそうだから」
と言った。証人の赤城さんはモチロン・・・、
「は、ははい!任せてください!」
と、言った。でも、そんな”自身ありげなところ”が、イノチとりになるんだよな・・・。

  証言開始 〜事件当日、見ていた様子〜
「私は当日は、棚の近くで見ていました。11時頃まで被告人の人が片付けをしていて、それで一度2階に戻ったんです。0時になると、流石に私も怖くなってきました。”お化け”という恐怖を思い出したからです。0時になった途端に、被害者と被告人が、一緒に1階にやってきました。そして、あの事件が起きてしまったのです」

「君は本当に素直なんだね」
牙琉検事の言葉に声も出ない赤城さん。なんか、変な感じがした。でも牙琉検事はそんな赤木さんを気にしなかった。
「さ、弁護士クン。尋問だ」
「あ、はい」
そのとき、裁判長は薄々涙を見せてちょっと、悲しい顔をしていた。
「最近、出番がなくなりましたな・・・」
出番・・ねぇ・・。裁判長の出番は、最初ぐらいだと思う・・。

   尋問開始 〜事件当日、見ていた様子〜
「私は当日は、他なの近くで見ていました」
「異議あり!」「お話になりません。赤城さん。簡単な嘘をついてどうするんですか?」
牙琉検事のほめ言葉で、いっきに絶好調になって笑顔を見せていた赤城さんが、いきなり、不吉な目を見せた。・・・オレの所為か?とりあえず、説明を続けた。
「さて、現場写真を見てみましょう。この写真は、棚が写っているようです。しかも事件当日0時5分。しかし!あなたは居ませんね。ここに」
「・・・ああッ!」
また、包帯をきつく握り締めた。・・・彼女の”クセ”は、これなのか・・・。
「つまり、現場は目撃していないのです!」
「異議あり!」「別の方向から見たんじゃないのかい!?」
「異議あり!」「だったら、確かめるまでです。この現場写真を撮った人に証言を要求します!」
牙琉検事は、首を縦に振って
「異議はない」
と言った。裁判長はオレの我が儘に答えてくれた。
「それでは、現場写真を撮影した人物、君平群兵を証言台へ!」
「ははっ!承知したでありますっ!」

「ええと、お聞きのとおり、君平群兵です。一応五本指に入る記者・・・かな」
”五本指”って、意味が分からない。牙琉検事は、さっきより真面目な顔をして、
「君はちょっと貴重な人物だ。ちょっと思い出していただきたい。二日前のことを」
と言った。やっぱり、男には興味はないみたいだ。多分。しかし、そんな顔も忘れ、君平さんは、ヘラヘラな顔をして言った。
「二日前・・・ねぇ・・・。それはムリかなあ?」
なんと君平さんは国家側に対してふざけた表情をしているのだ。なんともいえないし、オレが入るところでもなかった。
「き、貴様・・・・!」
牙琉検事は手に汗を握って、珍しく怒りを発揮。
「ああ!思い出しましたよ」
今回の牙流検事の怒りにはかなわなかったみたいで、君平さんは、なんか、わざとそう思い出していた。そこで、牙琉検事の怒りは収まった。
「ふう。さぁ、言ってくれ。そのことについて!」
「了解!」

   証言開始 〜現場写真を撮影したとき〜
「確か、自分は客室で寝てて・・・。事件が起きたとき凄い物音がしたんだ。ガラスビンが割れるような・・・。そこで自分、飛び起きて、撮影用のカメラで撮ろうとしたら、被告人さん逃げ出しちゃって・・・、棚しか撮れませんでした」

「それ、そのときのカメラです」
君平が差し出したのは、よく、テレビ局に扱われるカメラだった。
「あ、受理致します」
裁判長はすばやく答えた。出番が増えたからだろうか・・・。
(撮影用のカメラを法廷記録に記録した)
「それでは弁護人、尋問をお願いします」
「はい。(エラそうなところが、また嫌なんだけど・・)」

   尋問開始 〜現場写真を撮影したとき〜
「確か、自分は客室で寝てて・・・」
「待った!」「客室って、1階のですよね?」
「そうでなきゃ、撮れないでしょ。写真」
「す、すみません・・・」
オレ、当たり前なことを忘れていた・・・。ああ、恥ずかしいな・・・。そして牙琉検事は、最後に必ず質問をする。
「で、記者クンはどんなことに巻き込まれたんだい?」

「事件が起きたとき凄い物音がしたんだ」
「待った!」「事件が起きたときっていうことは、その、”0時5分”をわかっていたっていうことですね?」
ちょっと、チャンスだと思ったのだが・・・・、例外だったみたいだ。だから、すぐに反論はされた。
「ああ、そうなるね」
平気な表情をする、君平さん。また、そんなところが怪しい。
「異議あり!」「一体、時間はどこで確かめられたというんだい?夜中なら、電気は付いてないはずだろう!?」
・・・ナイス突っ込み。牙琉検事。しかし、君平さんには反論ができた。
「撮影用のカメラに内臓時計が設定されているんですよ。それがめっちゃくっちゃ合ってるんでね。それを見たわけさ。充電なんかしてないよ」
「な、なな・・なんだと・・・。じゃあ、どんな物音を聞いたんだい!」

「ガラスビンが割れるような・・・。そこで自分、飛び起きて、撮影用のカメラで撮ろうとしたら、被告人さんが逃げちゃって・・・。棚しか撮れませんでした」
尋問が終了した瞬間。オレも含めてみんな黙る。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・申し送れましたが・・・、証人。貴方は貴重な証人と、言ったはずです」
裁判長はエラく厳しい口調に変化していった。そんな状態では、君平さんは黙るしかない。しかし・・・。
「・・ええ!貴重です。自分」
「あなたには、もうちょっと記憶力を試す必要があるようですが・・・。もう、いらないみたいですね・・」
”記憶力”っていうと、もちろん、裁判長も例外ではないと、オレは思う。

⇒To Be Continued...

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