ウソだと云って |
作者:
ライチ
2011年03月02日(水) 19時27分00秒公開
ID:RTkyFQ9.wMI
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「で?なんなの、この小汚い事務所に呼んでまでの話って。」 「狩魔検事、落ち着いて聞いて―」 「嘘…」 久し振りに帰国した私を待っていたのは―信じがたいニュースだった。 「レイジが…意識不明?」 目の前の青いスーツのオトコに、焦りを隠して訊く。 「…うん。昨日、交通事故で―」 「みつるぎ検事…」 装束を着た怪しげな、私と同い年の少女が、俯いて口に手を当てる。その目には涙が浮かんでいるようだ。 私は彼等に背を向け、事務所の戸を開けた。 「ちょ、ちょっと狩魔検事!どこへ…」 「決まっているでしょう!彼の病院へ行くのよ!さぁ、教えなさい、早く!」 いつもの鞭を振り回す余裕もなく、彼等に訊いた。しかし彼等は顔を見合わせて。 「僕たちも知らないんだ。」 ・・・ッ!だったら、片っ端から回ってやるわ! タクシーを捕まえて、堀田クリニックをはじめ、色々な病院へ行って怜侍のことを聞いてきたものの―その甲斐なく、彼は見つからなかった。 そうすると―これだけ探しても見つからない―あてずっぽうに探すより、可能性は低くても、誰かに聞いてみた方がいい―私はそう判断し、そこ≠ヨ向かった。 「ヒゲッ!!」 「わわっ、かかかか、狩魔検事ィィッ!い、いつアメリカから帰って来たッスか?」 「そんなことはどうでもいいっ!それより…怜侍はッ!」 糸鋸は少し驚いた様子で、しかしまだおびえた様子で、答えた。 「御剣検事ッスか?多分、検事局の執務室にいると思うッスけど・・・」 「検事局ね!分かったわ!」 …このとき、冷静に考えておくべきだった。今ならそういえる。しかし―この時の私は、冷静さを欠いていたのだからムリもない。 「怜侍ッッ!」 そこで私を待っていたのは― 予想もしない光景だった。 「メイ?どうした?」 「レ・・・レイジ・・・・?」 絶句した。その意味合いは、だいぶ違うが。 目の前にいる彼は、いつもとかわらない彼だったのだから― …いや。いつもどおりに生活できるようになっただけで、まだ完治はしてなかったり…まぁ、それならそれでいいと思うけれど… 「レイジ?事故は?」 「事故?なんのことだ?」 澄ました顔で彼は云う。 私は彼のそのコトバに、当たり前というように答えた。 「交通事故よ。交通事故!!」 彼は少し考えて口元をゆがめた。 「ははあ。そういうこと、か。残念ながらメイ。私はその手には乗らないぞ。」 そのコトバに対して、私はすぐに反応していた。 「…どういうこと?」 「もう少しマシな嘘を吐いたらどうだね。」 そのときから、嫌な予感があった。 「だから、嘘ってどういうことよ!!」 彼のデスクを力いっぱい叩くと、彼は驚いた表情になった後、また口元をゆがめた。 「なるほど…要するに。」 そこで彼は少しコトバを切って、再び話し続ける。 「きみも被害者だったということだな―」 彼のこの言葉を聞いた瞬間―私は全てを悟った。 「今日は何の日だ、メイ。」 やられた・・・コレしかいえない。 「…エイプリルフール」 そのコトバを口にした瞬間、彼は微笑んだ。 「正解だ。」 よく考えれば分かることだった― 彼等がなぜ、怜侍の病院を知らなかったのか― 糸鋸がなぜ、あんな何事もないような顔をしていたのか― そして、なぜ意識不明のハズなのに検事局にいるのか― よく考えれば分かることだらけ!冷静になっていなかったために気づかなかったのね。 「そんなことがあったのか。」 「…勝手に人の心の中を読まないでくれる。」 「ムう…すまない。しかし、君にしては珍しいな。なにか焦る理由でもあったのか?」 「・・・」 私は彼の問いを無視し、扉へと向かう。 「どこへ行くのだ?」 「成歩堂法律事務所。」 それを聞いて、彼はしばらく黙っていた。そして、しばらくすると立ち上がった。 「私も行こう。勝手に殺されてはこちらとしても堪らないからな。」 …彼等は一言も、貴方が死んだ、なんて言ってないけどね。 「どうした?行くぞ、メイ。」 「・・・うん。」 4月1日、エイプリルフール。 嘘で良かった。そう思う今日この頃。 |
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