戻れない過去
作者: サタ   URL: http://skydrop0sata.web.fc2.com/   2011年01月26日(水) 22時54分03秒公開   ID:mNhgfGqeDuI
「このような証拠で被告を有罪に出来るとでも思うのか?」

師匠が突き付けるのは今回私が担当する事件の書類。少ない証拠で起訴はしたが有罪に出来る確証はなかった
師匠のその言葉の奥にある意味を知りたくて

「それは…どういった意味ですか、先生?」
「……………………」
「どんなことをしてでも被告を有罪にしろ、という事ですか?」
「その意味を貴様は分かっているのか?」

突き放す厳しい言葉に私は不敵に微笑んだ

「勿論。狩魔の名を掛け、何をしてでも被告を有罪にしてみせましょう」

言われなくても分かっている。被告を有罪にする為なら手段は選ばない。それが私のルールだ

「…御剣、貴様はよっぽど犯罪を憎んでいるようだな」
「……………………」
「幼子の頃とは全くもって正反対だ…迷いはしないのか?」

不敵に笑みを浮かべながら問い掛ける師匠の目を真っ直ぐと見据える。黙って答えを待つ師匠に力強く

「迷ってなどいません」

師匠の広い自室に力強い声が響く。師匠は答えに満足したのか不敵な笑みのまま頷いた

「先生、私はこれから明日の法廷の為に準備をするので失礼します。お休みなさい」

そのまま振り返りドアノブに手を掛けた時“御剣”と声が追ってきた

「……変わったな、貴様も」

厭味にも聞こえるその言葉に答えることもなく私はそのままドアノブを捻り部屋から退室した


何も知らない無力な幼子の自分など、とうの昔に捨ててしまったのだ
今更あの頃に戻ろうとしても…戻れる訳などない




グッと拳を強く握り締めた。自らの決意を確かめるように
■作者からのメッセージ
サイトに載せていたものを転載しました。
この頃の御剣は色々と覚悟してたんじゃないかと思う

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