笑顔
作者: ライチ   2010年12月22日(水) 16時03分39秒公開   ID:UxsPb6OyPEs
オレが成歩堂なんでも事務所に入って1ヶ月くらいが過ぎた。
もうすぐ此処は、成歩堂法律事務所になることが出来そうだ。
何故なら―成歩堂さんがもう一度弁護士に戻る決心がついたからだ。
今も、御剣さんに連れられて裁判所へ行って一生懸命勉強しているらしい。



そんなとき、事務所の扉が開いた。
「こんにちはー!あれ、なるほどくんは?そこの紅いヒトー!」
紅いヒトってオレか、と思ってドアまで走る。
「ハイ・・・っ?何でしょう?」
オレはその女性を見て固まった。
なんというか…服装が…装束、というのか?どう考えてもオカしい。それに成歩堂さんのことをなるほどくん、て呼ぶなんて度胸あるなぁ。
「今日、なるほどくん居ますか?」
「成歩堂さんなら、今出かけてるんで…」
オレは時計を確認した。
「そろそろ帰ってくる頃だと思いますけど…そこのソファーに座って待っててください」
其の女性にソファーを勧めると女性はソファーに座った。
「お茶お持ちしますね」
「あ、あたし今日暑いから麦茶がいいです!」
「……はい」
あのヒト、オレより年上に見えるけどみぬきちゃんみたいだなぁと思った。
ちょっとわがままなんだよな。みぬきちゃんみたいで。
「どうぞ」
テーブルの上に彼女の希望した麦茶を置く。
「ありがとう、えっと、君は…?」
「オ、オレ弁護士の・・・」
そこまで云ったところで女性が声を挙げた。
「ああ、『大丈夫くん』だっけ?なるほどくんが云ってた」
「いえ…王泥喜です」
「ああ、オドロキくんだったんだっけ、そういえば。あたしはね―」
綾里真宵。其の女性はそう名乗った。職業は、なにやら『霊媒師』というものらしい。
「何ですか、霊媒師って」
「死んだヒトをこっちに呼び出すのかな、簡単に言えば」
「そんなこと、あり得るんですね」
「世に不可能なんてないよ。なるほどくんはね、まさに『不可能』なんてないってあたしに教えてくれたの」
そうだ。この女性と成歩堂さんは、一体どのような関係なのだろうか。
「綾里さん。貴方と成歩堂さんて、一体―」
「……オドロキくん、あたしはね、昔この事務所で働いていたの」
「なんでも事務所で、ですか?」
「あ、そっちじゃなくてね、ホーリツ事務所のほう。成歩堂法律事務所でね、なるほどくんの助手として」
なんで、霊媒師さんなんかが成歩堂さんの助手になったんだろう?フシギだ。
オレがフシギそうな顔をしているのに気づいたのだろうか、綾里さんが話す。

キッカケはね、一つの事件。なるほどくんの師匠でもある、あたしのお姉ちゃんが殺されたの。―この事務所で。
其の事件で、アタシ、容疑者になっちゃったの。そんなとき、なるほどくんが弁護してくれた。なるほどくんに助けられた。
それがとても嬉しくて―

「そうだったんですか」
「最初のなるほどくんは、はっきり言って冷たかったけどね。凄く、助かった。誘拐事件からも助けてもらって、なるほどくんはあたしのことをいつも大切に想ってくれた」
其の笑顔を見てオレは思った。この笑顔は、成歩堂さんに助けられたヒトが見せる笑顔だ。心のソコからの、笑顔。
オレも、こんな―こんな、笑顔を作れるようになりたい。北木親子、マキさん。そしてまことさんのような笑顔。其の笑顔は、単に無罪になったからの笑顔ではない。真実を見出したことに向けての笑顔だ。
「あたしね、なるほどくんが誰かのお師匠さんになるの楽しみにしてた。なるほどくんやお姉ちゃんみたいな弁護士は、どんどんヒトを幸せにしていけるから。でもね、オドロキくんにはオドロキくんの道がある。だから真似しろなんて云わない。でもね、オドロキくんならヒトを幸せに出来ると思う。ただ、なるほどくんが師匠だからとかじゃないよ。オドロキくんは、その素質がある。だから、ヒトを幸せに出来る―その意味を取り違えないで、本当の幸せを見つけることの出来る弁護士。お願い、そういう弁護士になってね」
「綾里さん…」
彼女は微笑んだ。それはとても和らかくて優しい笑み。

しばらくの沈黙。そして事務所のドアが開いた。
「ただいまー」
「あ、成歩堂さんお帰りなさい。綾里さんがお見えです」
「真宵ちゃん!?どうしたの、急に」
「えへへ、みつるぎ検事から訊いた。弁護士に戻る決心してくれたんだね!」
そう云うと綾里さんは成歩堂さんに抱きついた。
「君たち、新人弁護士のいるまえでそのような行為はどうかと思うのだが」
「あ、みつるぎ検事!なるほどくんに勉強を教えてくれてありがとうございます!」
「それ、真宵ちゃんが云うなよ!」
「ム…まぁ…そのくらい、容易い」
「相変わらずだなぁ、みつるぎ検事は」
そんな様子に思わず笑みが零れる。
成歩堂さんも綾里さんも御剣さんも。みんなが素敵な、そして自然な笑顔。

オレも、こんな笑顔を作る弁護士になりたい。
なってみせる!絶対に。
オレはオレの道で、ヒトを本当に幸せに出来る弁護士になる!
時間はかかるかもしれないけれど、願ってくれるヒトがいるから。
笑顔を創り出すために。真実を見出すために。幸せを見つけるために。
オレは、これからも『弁護士』をやっていこうと思う。
■作者からのメッセージ
王泥喜と真宵の対面っていうのはあまり見ません。御剣検事と対面している作品は幾度か
見たことがありますが…

オドロキくんの持つ“夢”の裏には色んなヒトが絡んでいるんだろなぁと思って書きました。成歩堂、真宵、御剣、みぬき...それをこういう形にしてみましたが如何でしょうか?
またこの話はナルマヨ前提です。甘いですね、ラストw
サイトにUPさせるか悩んだので、とりあえず此処にUPしました。

ご意見ご感想よろしくお願い致します。


PS:なぜか私、投稿するたびにID変わっちゃうんですよね。同じPCでやっているのに何故でしょう?わかる方教えてください…

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