会いたかった人
作者: 東条   URL: http://amaikunasa.bake-neko.net/simpleVC_20100328134019.html   2010年05月20日(木) 16時53分47秒公開   ID:Uk/VlOgR0.A
会いたかった人

ここは都会から2時間ほど離れた山奥の里。
倉院の里と呼ばれる別名では霊媒師の谷とも呼ばれるそうだ。
そんな山奥の里で私は生まれ、1年前まで私は里の外に出たことがなかった。
私はこの辺で一番大きい家で生活をしており、
今私は古いアルバムを見ていた。
そのアルバムには私が本当に尊敬する真宵様の写真が綺麗に並べられていた。
アルバムは古びていたが、写真は今にも動き出しそうなくらい綺麗に残っている。
私は真宵様のアルバムを見ていると一つ気になる写真を見つけた。

そこには幼い真宵様がピースをして無邪気に微笑んでいた。
私が気になっていたのはその横の人物だった。
綺麗なセピア色の髪を靡かせ、幼い真宵様を見守っている女性。
日当たりの良い所に写っている真宵様と違い、
千尋様は日陰に写っていたため真宵様とは対照的に暗さから年齢より更に大人な様に感じられた。
それは真宵様の姉の千尋様だった。
真宵様から何度か話を聞いたことがあるが実は私は直接話したことはなかった。
そう思うと私は子供心か会ってみたいと考えてしまう。
しかし千尋様は既に死んでいた。
会う方法が一つだけあった。
真宵様に千尋様を霊媒してもらう事。
しかし、それは私の好奇心だけで真宵様や呼び出される千尋様の迷惑になってしまう。
でも千尋様についてどうしても興味があったので私はある場所に行く事にした。



「千尋さんの事について知りたい?」

来たのは成歩堂法律事務所。
なるほどくんと助手の真宵様がいる場所だった。
ちなみに真宵様は買い物に行っていていない。

「お願いします、知りたいんです!」

「分かったよ、千尋さん事を話そう。
 千尋さんは本当に素晴らしい弁護士だったし誇れる師匠だった。
 出会ったきっかけは僕が事件に巻き込まれた時、千尋さんが弁護してくれたのがきっかけだ。」

なるほどくんの師匠と言う事は何度も聞いている。
後かなり凄腕の弁護士だったことも。
私はなるほどくんが千尋様といて思い出に残っている事を聞くと。

「僕が弁護士を目指し始めて、この町に来て初めて訪れたひょうたん湖公園での出来事かな。千尋さんは僕をそこまで案内してくれて、
 ひょうたん湖まんじゅうをおごってくれたんだ。
 その時ベンチで食べたひょうたん湖まんじゅうの味と、
 千尋さんといた時間は忘れられないね。」

その時なるほどくんは少しだけ寂しそうな顔をした。
千尋様はそれだけ影響力のある人だった事が伝わった。
トントン
ドアをノックする音が聞こえる。
なるほどくんが出迎えるとそこには御剣検事さんがいた。

「御剣検事さん!」

私は驚いて声を上げた。
すると御剣検事さんは私とは生反対な態度で。

「成歩堂と春美君か、真宵君はどうした?」

冷静に状況を判断してこう言った。
何時でも冷静さを失う事はない御剣検事さんは私の憧れの人でもあった。
なるほどくんは御剣検事さんの質問に答える。

「真宵ちゃんなら買い物だよ。
 それと、御剣さぁ〜千尋さんの事知ってるだろ。
 千尋さんについて何か語ってくれないか、春美ちゃんが知りたがっているんだ。」

そう言うと御剣検事さんは腕を組み、
右手人差し指で、左腕の肘の辺りを叩きこう言った。

「そうだな、あの人は何時でも依頼人の事を本気で信じながら頑張っていたな。
 私が弁護士を志していたのなら、私は彼女を目標に設定しただろう。
 才気もあり優秀な弁護士と言って良いだろう。」

依頼人を信じる事が弁護士の基本。
前になるほどくんが言っていた言葉だった。
千尋様はとても弁護士としても人間としても素晴らしい人である事が分かった。
トントン
また戸のたたく音が聞こえた。
なるほどくんはまた扉を開けた。
そこには買い物袋を重そうに抱え込んだ真宵様がいた。

「なるほどくんにはみちゃんそれに御剣検事まで!」

私と同様に御剣検事さんが居る事に驚いていた。
問題はパターンとしてなるほどくんは真宵様に千尋様の事を話させるだろう。
そうなれば、皆に事情を聞かれ千尋様に私が会いたがっている事がばれてしまうかもしれない。
そして私のために真宵様は千尋様を霊媒し、
私の興味のために迷惑をかけてしまう。
それは不味いと思い、

「私トイレに行ってきます」

私はトイレの中で考えた。
とにかくこの話題が終わる頃にトイレから出るしかないか。
でもその時にどうしてこんな事を聞いたのかと問いつめられたら。
とにかく迷惑をかけないためにはどうすれば良いのか分からず、
私は10分後トイレを出た。

部屋は異常な程静まりかえっていた。
私はそっと扉を開ける。
そこには真宵様がいた。
しかし様子がおかしい事に気づいた。
真宵様にしては背が高すぎるのだ。
その人が振り向いた瞬間答が分かった。

「千尋様?」

「久しぶりね、春美ちゃん」

千尋様は優しく微笑んでいた。
これが真宵様のお姉様で素晴らしい弁護士である千尋様。
そして私はある言葉に反応した。

「ちょっと待ってください!初めて会ったはずですよね!」

「貴方は覚えていないわね、赤子の頃に私は貴方と会っているのその後私は弁護士修行に出たわ」

千尋様は私が赤子の時に私の事を知っていてくれたのか。
そう思うと少し恥ずかしくて嬉しい気持ちになってくる。
すると千尋様はこう言った。

「春美ちゃん。貴方はとても良い子なのね。
 さっきトイレに行く振りをしたのも、真宵に私を霊媒させないために
 やった事でしょう」

私は驚いた、何で知っているのだろう。
でも天から私の事を見ていたのであればそれは解決出来ると思い
続けて話を聞いた。

「でも駄目よ、少しは甘えないと。
 今回みたいに一人でできない事があったり、
 誰かに頼みたい事があったら遠慮なく甘えて良いのよ、
 少なくとも、真宵やなるほどくんはそれを断ったりしないと思うわ。
 だから春美ちゃんはもう少し甘えても良いと思うわ。」

私は話に聞き入っていた。
話していて分かった千尋様はやっぱり皆の言っていた通り、
素晴らしい人だったんだ。
私はこの事を伝える事にした。

「千尋様、私は貴方の事を様々な方から知りました。
 その情報は本当に正しかったと今感じられました。
 千尋様とから教えて貰った事話した事は一生忘れません。」

すると千尋様は一瞬驚き。
すぐに微笑んで私の頭を撫でてこう言った。

「私も一生忘れないわ。
 じゃあ春美ちゃん、元気でね」

そう言って何時もの真宵様に戻った。
今日はとても素晴らしい日だった。
そう思った時私はある事に気づいた。
千尋様は何故私の行動が分かったのだろう。
母の言っていた言葉で霊体は現実世界で起きている事は全く分からないと言う事だ。
それなら千尋様は私の行動と気持ちがどうして分かったのだろうか。


春美ちゃんがトイレに行って、僕はさっき春美ちゃんが言った事を真宵ちゃんに話した。
すると真宵ちゃんは興味深そうにこう言った。

「はみちゃんお姉ちゃんの事知りたがってるんだ!
 じゃあ今日の夜にでも語り尽くせない程語っちゃおうかな」

真宵ちゃんは上機嫌だった。
自分の姉のことに興味を持ってくれる事が自分の事の様に嬉しいのだろう。
御剣は腕を組みこう言った。

「それにしても春美君トイレから戻ってくるのが遅いな」

約8分ぐらい経過していた。

「それに少し春美君は不自然だった。
春美君は真宵君に好意を持っているはず、
 そうなれば春美君は真宵君に真っ先に挨拶をするはずだ。
 それにトイレに行く前の発言も少しだけ声が小さかった。
 腹痛を起こしたにしても真宵君が帰るまで元気だった。
 何か我々に隠し事でもあるのかもしれない」

御剣の推理を僕なりに考えてみた。
確かに僕らいや真宵ちゃんに隠し事またはそれに近い物があったって事だ。
前に上がっていた話題は千尋さんの事、真宵ちゃんが帰ってきた途端に
逃げた理由、待てよ千尋さんと真宵ちゃん。
春美ちゃんが千尋さんの事を聞いていた理由を考えれば。

「異議あり!」

僕は法廷に居る感覚になってしまった。
御剣は急な僕の叫びに少し驚いていた。

「隠し事ではないよ、御剣。
 むしろ彼女なりの良心だ、まず考えるのは彼女が千尋さんの事を聞いていた理由。
 これは子どもの気持ちになれば分かる、千尋さんに興味を持った春美ちゃんは、
 千尋さんに会いたいと思った。
 しかし、それは叶わぬ願いである事に気づいた、彼女は既に死んでいる。
 ところがそれを叶えられる人がいたそれが真宵ちゃん後は彼女の気持ちになれば分かるよ」

そう言うと御剣は考え込んでしまった。
こう言う事には意外と鈍い男なんだな。
御剣が考え込んでいる内に真宵ちゃんが答を出した。

「まさか、叶えられる願いは目の前にあるのにあの子は私の事を気遣って迷惑かけないようにしたって事。
 私なら全然迷惑でもないのに・・・・。
 お姉ちゃんだって春美ちゃんに会いたいって思ってるはずなのに・・・・・・。」

その通りだ。
僕は春美ちゃんの願いを叶えてあげたいと思った。
真宵ちゃんにこう頼んだ。

「真宵ちゃん千尋さんを早く霊媒してあげて。
 とりあえず千尋さんに事情をメモで残しておく。
 僕達はしばらく外に出ているから」

真宵ちゃんは言われなくても分かっていた様に力強く頷いた。
御剣も心霊現象にはには付き合ってられんと小言を言い僕と一緒に出ていった。
これで春美ちゃんも満足してくれるかな。



私が謎に悩んでいると。
なるほどくんと御剣検事さんが部屋に入ってきた。

「ごめん少し自動販売機でジュースを買ってた」

と言って二人とも手に持っていたお茶の缶を見せる。
私と真宵様様にとのさまん汁(ソーダ味)も買ってきていた。
真宵様はこれを見て少しだけ興奮気味になって、

「ああ!それ今日出た新発売のとのさまん汁のソーダ味。
 初代のとのさまん汁は渋くて私には飲めなかったけど、
 これは普通のソーダと変わらないから私でも飲めるよ!
 御剣検事有り難う!」

僕は?と聞くなるほどくんを真宵様は無視して、
真宵様は元気よくこう言った。

「じゃあ皆揃ったんだし、今日の夜は御馳走にしようか!
 今日は頑張って作るよ」

すると御剣検事さんは遠慮して帰ろうとしていた。
私は千尋様に甘えて良いと言われた事を思い出して、
元気良くこう言った。

「真宵様の手料理楽しみです!」

そう言って私は飛び上がる。
その姿を見たなるほどくんは、

「ほら春美ちゃんだってこんなに楽しみにしている、
 おまえだって遠慮する事ないぞ」

そう言うと御剣検事さんは、いたしかたあるまい、
と言って真宵様の料理を待つ事になった。

千尋様、
私の周りには、なるほどくん、真宵様、御剣検事さんがいます。
私は千尋様の言葉通り困った時には助けてくれる人達がいます。
だから困ったときには助けて貰ってしかし何時か私も誰かを助けられるような人になりたいです。
そう心の中で千尋様に語りかけた。
私は自分の思ったことを心の中で強く刻み、
また一つ大人になった。





■作者からのメッセージ
どうも、東条です。
今回は千尋と春美がメインの小説を書いてみました。
後、記憶力の良い方は気づいていると思いますが、
私のサイトのアドレスが変わっています。
ついに、私もマイサイトを持つ事ができました。
一応最近コメントの時のURLはマイサイトのアドレスだったので驚く方も少ないかもしれませんが。
なので更新を不定期にします。
しばらく来ないかもしれませんが、
マイサイトには定期的に作品があがるので、興味のある方は観覧ください。

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