相棒 | |
作者:
幸
2010年04月30日(金) 19時45分06秒公開
ID:JcQLURiTVWo
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「あ、あのげほげほっ!あの、ぼく明日げほっ!さい・・・・裁判がげほ!」 途切れ途切れだったが医師には意味が通じたらしく、怪訝な顔をした。 「そういえば、弁護士さんでしたな。しかし、とんでもない話です。明日など、ムリじゃ。」 そう言って首を横に振り、病室を出て行った。絶対安静に、というコトバを残して。 ど・・・・どうするんだ!必ず誰かが逮捕されたはず。また今回も、絶対的に不利だ! こんなところで寝ている場合じゃないのに・・・・! そ、そうだ、真宵ちゃんは!まさかまだ、あの修験堂に・・・・?春美ちゃんも!エリス先生が探していた・・・・見つかったのか!? それに殺されていたのはエリス先生だ!まさか事件に巻き込まれてなんていないよな!? ぼくはぐらぐらする頭を抱えた。 どうする・・・・どうしたらいい! “こんな燃えカス渡れるかよ!” 数時間前に聞いた矢張のコトバがふと頭に浮かぶ。 わかっていた・・・・あのとき冷静になっていれば、今ここで寝ているなんて状況は生まれなかったんだ! あの、矢張のコトバを聞いていれば・・・・! ・・・・・・・・ん?や、はり? ぼくは働かない頭を懸命に回転させた。 そうだ!矢張!アイツが電話したはずだ!だからぼくはこうして救助されている。 でも、きっと・・・・アイツが電話したのは、それだけじゃないはずだ。ひとりで心細いアイツが、唯一頼れるのは・・・・・・・・ ちょうど考えがまとまったところで頭を上げると、看護婦さんが出て行くところだった。 「あ!!あの・・げほげほっ!」 大声で呼び止められびっくりした様子の看護婦さんが、咳き込むぼくのところへ駆け寄ってきた。 「どうしました?大丈夫です、聞こえますよ。」 背中をさすりながら訪ねてくる看護婦さんに感謝しながらぼくは用件を言った。 「あの・・・・何か、けほっ・・書くものを貸してもらえますか・・・・?」 「では、見えたらお渡ししておきますね。」 そういう看護婦さんに、ぼくは大事なものが入った封筒を手渡した。 正直、アイツが来てくれるかどうかも定かじゃない。でも・・・・なぜだろうな?御剣。 ぼくは、きみに会える気がしてならないんだ。 あんな夢を見たからかな。 あの事故の後、ぼくは背中の打撲と軽い熱中症だけで済んだ。 御剣が日陰に運んでくれた後の記憶はないんだけど・・・・御剣は、ハンカチでずっとぼくを仰いでくれていた、って聞いた。 ムカシからそういうやつだったんだよな、アイツは。 どうしようもなく心配性で、優しい。 だから・・・・信じてるんだ。 どんなに非常識な願いでも、アイツは・・・・アイツなら、やってくれるって。 信じてるよ、御剣。 ガラッ ドアの開く音に、うとうとしていた目が覚める。そこには、さっきの看護婦さんが立っていた。 「今、御剣さんというかたがいらっしゃって・・・・」 その看護婦さんのコトバに、ぼくは息が詰まった。 来てくれたんだな、アイツは。 「面会もできると申したらしいのですが、その必要はない、と。代わりにこれを預かりましたよ。」 そう言って差し出される看護婦さんの手には、一枚の紙切れ。ぼくはそれを受け取った。 内容を見て、思わず微笑む。 そんなぼくを見てか、看護婦さんが言った。 「なんだか・・・・いいですね。事務の人も言ってましたけど、本当に心配されていたみたいですよ。」 「あいつが、ですか?」 「はい。手紙を渡そうとしたら、血相を変えて重症なのか聞かれた、と。」 その話に少し驚きながらも、懐かしく感じて笑みがこぼれる。 何も変わってないな・・・・心配性のオマエも、たまに思い切り冷静さを欠くところも。優しいところも、な。 ぼくは、もう一度紙を見る。 “今は、私を信じて安静にしていろ。私もきみを信じて戦ってこよう。明後日を楽しみにしているぞ・・・・相棒。” ああ。必ず治すさ。 ぼくの役目を果たすため・・・・オマエからのバトンを受け取らなきゃいけないからね。 それまで・・・・信じて待ってるよ。 ぼくの願いを受け止めてくれた御剣を、ね。 |
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