アクシデント
作者: 東条   URL: http://redbrack.anime-japan.net/   2010年04月20日(火) 17時26分53秒公開   ID:Uk/VlOgR0.A



顔が焼ける様に熱い。

「お姉ちゃん!助けてぇ〜!」

業火の中妹の声が聞こえる。
顔に焼けど負った私は妹を助ける余裕もなく、
そのまま左側のドアから転がり出た。
かろうじて目は無事だったが、しかし目に映る光景は、
新品のスポーツカーと妹が燃えていく光景だった。
とうとう私は妹の命まで奪ってしまった。
投薬ミスで14人の患者の命を奪っただけでも重い罪だ。
すぐに不注意で妹まで殺してしまう看護士失格だ。
本来医療に携わる人間は人の命を守るのが仕事のはずだ。
しかし、私はその逆の事を二度もやってしまった。
看護士として生きていく資格もない。
そもそも15人の命を奪った私には、
そもそも、葉中 未実として生きていく資格もないだろう。
そう思いながら私は燃え行くスポーツカーをみる。
次第に火傷の痛覚で私は気を失った。







気がつくと全身包帯でまかれて病院のベッドにいた。
天井をずっと見上げているしかなかった。
見ても何も変わらない、ただ虚しいだけの天井を…………。
その時ふと声が聞こえた。

「先生患者は?」

20代の女性の声だった。
おそらく看護師だろう。

「身元不明、車の中に取り残された女性は死亡した。」

30代後半であろう医者が重々しく言う。
のどかはやはり死んでしまったのか。
すると医師は続けてこう話した。

「ただ患者は写真を握っていた。」

写真?この言葉から私は、
遠い昔のように感じる、
悪夢の前の出来事を思い出した。







「お姉ちゃん疲れてるんでしょう〜私が運転変わりましょうかぁ〜」

私は首を振り、得意げにこう言った。

「まだ免許も持っていない貴方に車の運転なんかさせません」

妹は少しだけ頬を膨らませ、こう言った。

「失礼なぁ〜私だってもう少しで免許取れるんですよぉ〜免許用の写真も取ったんだからぁ〜」

そう言って妹は免許用の写真を私に見せた。
私はその写真をしばらく見て。

「ねぇその写真くれない、予備のあるでしょう」

こう言った。
私はこの写真を見て、何時も見ている妹が急に遠い存在に感じたのだ。
写真の妹は少しだけ大人っぽく見えた。
今は私に大学まで迎えにいてもらったりしているが、いずれは何処かへ行き私の元から離れてしまうだろう。
唯一私を慕ってくれて、唯一私が心を許せる相手の存在が急に遠く感じたから、
私はこの写真をもらうことにした。







結局勘は当たり妹は家事によって遠い存在となった。
それにしてもあの火事の中でも妹の写真を握り締めていたとは。
だからと言って私は妹を殺してしまった。
それをどう償えば良い?
さらに私は14人の患者の命を奪った。
それをどう償えば良い?
どうせなら私が死ねば良かった。
今心の底からそう思った。
私は14人の命を奪った人間だ。
私が死んでしまえばただの天罰で終わるのだから。
そう考えた時私にある考えが浮かんだ。
私が死ねば………..。
私が死んだことにして私が妹として生きていけば。
どうせ私の人生は泥まみれもはやこの先生きる価値などない。
ならば、妹として生きれば、
そうすれば死んだ妹の分も生きることになってせめてもの償いができる。
私は写真どおり顔を復元し、葉中 のどかとなった。
葉中 未実は死んだことになった。
いや、葉中 未実は死んだのだ。
これから私は葉中 のどかとして人生を歩む。
この暮らしが何時までも続けばと思っていた。







半年後、私は妹として生きている。
妹になって嫌いだったのは彼女がオカルトマニアであったことだったが、
そこは何とか我慢して生きている。
元々、私はオカルト現象が嫌いだ。
研究すればするほど話が本当の様な気がして不気味に見えてくる。
でも妹の分の人生だから我慢してやってきた。
それに未実として生きていく事の方がよっぽど辛かったと思うし、
全く後悔してはいなかった。
そう思っていた時、私の目の前で黒い車が止まった。
黒い車は高級だが少し傷が目立っていた。
すると中から人が出てきた。
その中の人物を見て私は顔が青くなった。
忘れもしない、この男は、
「霧崎 哲郎」
ヒステリックでとにかくムカつく医者。
結局ワイドショーで悪役に仕立て上げられ、現在は患者がほとんど来ない状況だ。
車が高級でも傷が目立つのは昔はお金があったが今は生活が苦しい証拠だ。
気になるのは何故今頃この男が私の前に姿を現したのかだった。

「葉中 未実さんの妹ののどかさんですね」

「そうですけどぉ〜どうかしましたかぁ〜」

「何ですかその喋り方は!分かっていますか私は真面目な話をしにきたのですよ!真面目な話を!」

久しぶりのキーキーと猿のようにうるさい声が耳に響き渡る。
本物ののどかもこの話し方なのだからいちいち切れないでほしい。

「それより私が機嫌の悪い理由が分かりますか。
ここに来る前にコーヒーを頼んだのですが、私は間違いなくブラックと言ったにも関わらず!
出てきたのは普通のコーヒーだったのです!私は間違いなくブラックと言った!店員も確認を取ったのに!
あの店はどうかしている!分かりますかどうかしているんですよあの店は!」

霧崎は興奮してずり落ちた眼鏡を慌てて元に戻す。
その話を聞いて私はその眼鏡をぶっ壊したくなる衝動に駆られそうになった。
こいつの話は仕事でもキーキーうるさくてやかましい。
仕事のストレスの大半はこいつのせいだった。

「本題に移りますが、大事な話なので場所を移しましょう」

と言って向こうの歩道の喫茶店を指差す。
こいつの話を聞いていると腹が立つが本題が気になるので
喫茶店に向かうことにした。







内装はあまり凝っておらず地味な喫茶店だった。
霧崎にはお似合いかもしれない。

「私はアイスティーで」

「私はブラックで今度こそ間違いないでくださいよ!良いですか!」

霧崎の迫力に驚いたウェイトレスは早足で、去っていった。
注文を言ってしばらく雑談をした後。
注文の品が来た。
やけに霧崎の機嫌が良いと思ったら今度は味の良いブラックが来たようだ。
私はアイスティー少しだけ飲んで本題とやらを聞く事にした。

「本題ですがそれは君のお姉さんの事です」

やはり私の事。
でも、今更こいつは何をしようと。

「まぁ半年前の事ですし、忘れたいのも分かりますが
あの看護師のせいで私は医者人生を狂わされた。
患者が来ないんですよ!病院には!
だからあの看護師に罪を認めさせて、私は医者として華やかに暮らすのです!
そのためにある事をしようと考えているのですよ」

ある事何をしようとしているんだ霧崎は私は少しだけ汗を流す。
それはこの後の展開を体が読んでいたからかもしれない。

「私は霊媒を使おうと思っているのですよ。
霊を呼び出して、あの看護師に全ての罪を認めさせる。
これで世間はギャフンですよ!ギャフン!
倉院流霊媒道なら協力してくれるはずです。
去年の12月DL6号事件が解決され霊媒は力を取り戻そうとしている。
そのチャンスを私は倉院流霊媒道に与えるわけですから、喜んで協力してくれるでしょう。
ところで貴方はオカルトに詳しかったですね。
倉院流霊媒道の連絡先やらを知れる状況にいるはずですよね。」

最後はもはや冷や汗と顔も青くなり言葉が出なかった。
これをやられたら私は……….。
悪役が最後に言う逃げ口上のように私はこう言った。

「私もすぐには答えられませんので後で分かれば連絡するのよろしいですかぁ」

何時もののどか口調も少し動揺しておかしくなった。
とにかくその場から立ち去った。
あの医者余計な事を考えついて。
その怒りが頭を回る。
私が霊媒されれば当然私は死んでいないのだから、
霊媒が失敗して私が死んでないことがバレル。
霧崎の執念の事だおそらく私が死んでないことを見破り
DNA鑑定でもかけてくる可能性がある。
そうなれば私はおしまいだ。
そしてのどかも死んだことになる。
こんなことなら医療ミスさえしなければ………..。
待てよ私は半年前のように何かが頭に思い浮かぶ。
元々医療ミスだって元を辿れば霧崎が私に過度のストレスを与え。
働かせまくった結果起こった事だ。
そして今のどかを間接的にあいつは殺そうとしている。
だったらあいつさえ殺してしまえば。
その時私は悪魔に魂を売った。









その後、私は綾里 キミ子の計画に乗り、
霧崎を殺害し、綾里真宵と言う子供に罪を着せる計画をたてた。
キミ子は頭がよくとても素晴らしい殺害計画を立てた。
これで霧崎を殺せれば私は妹として生きることが許される。
さぁ覚悟しなさい......................................................







霧崎 哲郎。












おわり。

■作者からのメッセージ
どうも東条です。
今回は逆転裁判2の2話のお話を書かせてもらいました。
今回は誰も書きそうもないお話をテーマに頑張って来ました。
意外と話は気に入っていて前作よりは良い出来だと思います。
次回はマイナー路線ではなくメジャーでいこうかなと思います。
と言う事で感想お待ちしております。

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