逆転の始まり 冒頭陳述 |
作者:
なな
2010年03月08日(月) 23時14分28秒公開
ID:mzN2VEwg3B6
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<前回のあらすじ> 忘れてる方が多いと思うので、私、成歩堂みぬきがあらすじを紹介しちゃいます! 毎日暇な事務所に、弁護の依頼が来たんです!依頼主は、何とみぬきのパパ、成歩堂龍一だったの!オドロキさん、パパを助けてください! 9月29日 11時45分 地方裁判所 第3法廷 「・・・検察の冒頭陳述は以上です。」 ばさり、と資料を置いて足長検事は、一体何歳だか分からない(少なくとも、定年は過ぎているように見える)、白いふさふさしたあご髭に厳格な顔をした裁判長に向き直った。 裁判長は、ゆっくりうなずいて 「オドロキくん、・・・説明して下さい。」と言った。 話をふられた‘オドロキ‘は、赤いベストにシャツを腕まくりして、左腕手首に黄色い腕輪をつけ、おまけに頭には触覚の様に、2本のハネた毛がついていて、人ごみのなか、遠くから見ても丸分かりの容姿をしている―もっとも、彼の身長はそれほど高くないので、人がたくさんいると見つけるのは困難だと思われる― 半人前熱血弁護士・王泥喜 法介。 彼は、突然のことに、とりあえず裁判長の方を向き、「・・・・・は?」とマヌケな顔で返すことしかできなかった。 裁判長は咳払いをすると、「その。検察側の説明には難解な表現が多くて・・・」 と、裁判長らしからぬ事を言った。 「つまり・・・分からなかった、と」 真正面から検事の声が聞こえてきたので、オドロキがそちらを見やると、検事はその端整な顔をくしゃりと歪めていた。 (そりゃまぁ・・・そう言う顔になるなぁ)と自分のマヌケ顔は棚に上げておいて、心の中で納得していたオドロキだが、助手であり、被告人の娘である魔術師見習いの成歩堂みぬき(これまた見つけやすそうな青いマントのような服を着ている)がグイ、とオドロキの(腕まくりをしているため)肘の所にあるシャツをつかんで、「オドロキさん、説明説明!」と急かした。 すっかり忘れていたオドロキは、手元に書いておいたメモを見つつ、裁判長に説明するため口をあけた。 「えーと。事件は9月28日に起こりました。 公園の近くで、男性の他殺死体が見つかりました・・・21時ごろ、通行人による通報で事件が発覚。駆けつけた警官が走っていく被告人を目撃。現行犯逮捕。」 メモに書いてあることをほぼそのまま言ったので、多少接続詩がないのは勘弁してほしい。とオドロキは思いつつ、どうですか?と検事席を見た。 検事は何か言いたそうな顔をしていたが、何もいってこないところを見ると、大体合っているらしい。 検事はそこで、「さて」と話を仕切り直した。「そこで、検察は証拠を提示します」 <通報の記録> 21時頃、公園で人が死んでいる、との通報。通報者は不明 <現場付近の写真> よく見るタイプの公園。ある程度の遊具はあるようだ。出入り口は1つしかなく、レンガの門がある。 <現場写真> 公園出入り口の門から約30センチほど離れたところに死体。公園周辺は黄色のレンガで道路が舗装されている。死体周辺には被害者の血がとびちっている。 「受理します。・・・て、あの。質問が」 やっと冒頭陳述を理解したらしい裁判長が、またも検事に質問をする。 「あ!みぬきからもあります!!」 意外にも、みぬきが青のマントを揺らしながら質問をした。 「何ですか?お嬢さん」 「何?みぬきちゃん」 と、検事と弁護士が聞いてきたのを確認し、みぬきは検事を見つめて 「何で被害者のデータがないんですか?」 と聞いた。「それは私も質問したかったのです。どういうことですかな?検事」 途端に厳しい顔になる裁判長。 「不正なものは認めませんよ」 その顔に屈せず、検事は話を始めた。 「それは、ですね。残念な事に、まだ解剖データが無いんですよ」 と― 「異議あり!」耳をつんざく様な大声が法廷中に響いた。恐らく、みぬきが慣れていなく、心の準備ができていなかったら、みぬきの鼓膜にはぽっかりと穴が開いていただろう 。大声をだした張本人は、そんなことは一切気にしないで、ちぐはぐな弁解をした。 「解剖データは、その、とにかく大事なものです!それを用意してないなんて、変じゃないですか!」 何だか少し自分でも変に言ったな、と自覚して内心冷や汗をかきながら、それでもしてやったり、とオドロキは検事席を見た。 検事は、あっさりと「実は、被害者の殺害方法が違うそうなんです」と言った。 「違う、とは?」 裁判長が目を見開いてゆっくりと聞いた。 「ええ・・・最初は、鈍器によるものと、被害状況―写真を見て頂ければ分かると思うのですが、周辺には血がとんでいて、大きな傷も見当たらないため―撲殺から見ていたのですが、詳しく調べた結果、どうやら被害者は毒で殺害されたようです」と答えた。 ふむ、と裁判長は頷き、「と、いうことは、被害者は毒殺されてから殴られた、と?」 「おそらく・・・。断定はできませんが」言葉とは反対に、確信にみちた表情で答えた。 オドロキは、法廷係官がデータを持ってくるのを今か今かと待っていたが、その間法廷係官がデータを持ってくることはなかった。 裁判にも、予定時間と言うものがあるため、ぐずぐずしていられない、と思った裁判長は、しかたなくといった風に口を開いた。 「そうですね・・・とりあえず、逮捕した理由について、警官に尋問をします、よろしいですか?」 これに焦ったのは弁護側だ。解剖記録の中に、被告の無罪を証明する証拠があるかもしれないのだ。 「い、異議あり!す、すべての証拠が揃わないと、審理は進まない!!もう少し、待ってください!」」 必死に縋るオドロキだったが、「・・・とりあえず、警官を召喚して下さい。審理を進めている間に、記録がくるのを待ちましょう」裁判長は審理を止める事を拒否した様だった。 「いいですね?」裁判長は検事の方を見た。 もちろん、と頷いて、検事。「異議はありません。更に作業を進めるよう、指示をだしました・・・しばらくお待ちください」 そして次に裁判長はオドロキを見た。その顔は、「もう待てません。異議はありませんね」といっているようだった。 「う・・・」冷や汗をダラダラ垂らしながら、オドロキはうめいた。 その表情を見て、 「(大丈夫ですか!?オドロキさん!)」 小声でみぬきが不安そうに聞いてくる。 「(と、とりあえず、何が何でも証人に質問して、解剖記録がくるまで時間を稼ぐ・・・!できたら、だけど!)」 同じく小声で、多少の不安を隠しもせずにいう弁護士に、これまた小さい声で、被告人席がら成歩堂が喋りかけてくる。 「大丈夫だよ、オドロキくん。」 被告席からにっこりと余裕のある笑みを見せて、成歩堂が言った。 「だ、大丈夫って・・・だ、だって解剖記録が間に合っても、そこにムジュンがなかったら―」 「君の口癖だろう?大丈夫。ぼくは無実なんだから・・・さぁ、尋問だよ」 成歩堂が目でオドロキを促すと、そこには、かりんとうをヤケ食いするいつもの女刑事が入廷して、かりんとうを投げつけ始めていた・・・ 続く。 |
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