泣きたいよ、泣けないよ
作者: 夕日 秋   2010年01月20日(水) 21時24分57秒公開   ID:s4DK9edfAYQ


一月の寒い朝、実家に戻って修行をしていたあたしは何ヶ月かぶりにポストを開けた。
修行にはちょうどいいこの季節、久々に休みがもらえたのでトノサマンのDVDをまとめて見るつもりだ。


ポストを開けると、三通しか入っていなかった。
こんな山奥にダイレクトメールを送ってくる人もいないので、少しさびしい数だ。


一通目はメイさんから。
期待して封筒を開けるが全て英語だったので全く読めなかった。
二通目はハミちゃん宛て。
三通目は。



「ナルホドくん・・・・・・」


あぁ、見たくなかった。
見つけたくなかった。


弁護士を辞めさせられたことは本人から聞いた。
あたしはその時、ナルホドくんになんて言っただろう。
覚えていないけど、あの時のナルホドくんのさびしげな表情は忘れられない。


封筒をじっくりと見る。
見慣れた文字がナルホドくんからのものだと主張している。


あぁ、見たくない、けど見たい。


目を閉じながら封筒を開けると大きなメモに小さな文章の塊。




-久しぶり。また、弁護士になるために勉強しています-




思わず目が潤む。
たった二文。
けれど、あたしの心を震わすのには十分。


だけど、だけど


同封されている写真に写るナルホドくんと女の子を見る。


ナルホドくんにはあたしじゃない守るべき人がいる。
あたしより大切にしている人がいる。



あぁ、泣きたいよ、泣けないよ・・・・・・。
泣く資格もないよ。









end







■作者からのメッセージ
見てくださりありがとうございます。
シリアスな真宵ちゃんが書きたくて・・・。
コメントしていただければありがたいです。

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