逆転の復活まで‥‥〜成歩堂 龍一〜
作者: 優希   2009年01月11日(日) 01時00分04秒公開   ID:P/sHlL7DJME
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ぼくは、目をつむった。彼女の言葉が心に響いた。
‥‥こんなぼくを‥‥今でも弟子と思ってくれるか‥‥
それが聞きたくて‥‥
「正直言って‥‥残念ね。あなたは、力のある弁護士になると思っていた。なのに‥‥こんなことになるなんて‥‥。」
千尋さんの声は、本当に暗い声になっていた。
「‥‥すみません、千尋さん‥‥。」
そんな彼女に、ぼくはただ謝ることしかできなかった。
「‥‥ぼくは‥‥最低です。あなたの弟子として‥‥。」
「あら、それは違うんじゃないかしら。」
ぼくの言葉を、千尋さんの言葉が遮る。
「‥‥あなたは被告人を信じて戦った。それは、立派なことよ。それに私が見た、あなたの法廷での姿は立派だったわ。」
「‥‥‥どういうこと、ですか?」
ぼくは千尋さんが言いたいことが分からず、
聞き返す。
「‥‥迷っているんでしょう?‥‥弁護士にもう一度、なっていいのか。」
‥‥さすが千尋さんだ。ぼくはそんなこと、
一言も言わなかったのに‥‥。
「‥‥千尋さん。ぼくは、みんなを裏切ってしまいました‥‥。そんなぼくが、もう一度、弁護士になってもいいのでしょうか?」
千尋さんは、答えてくれた。
「‥‥そうね‥‥。それを決められるのは、あなただけじゃないかしら?なるほどくん。」
「ぼくが‥‥ですか?」
「でもこれだけは言わせて。私も真宵も‥‥そして、御剣検事もあなたに裏切られたとは思っていないわ。
本当にそう思っているのなら‥‥私たち三人は、決して電話をしたりしないわ。‥‥ないがあっても。
真宵たちを信じなさい、なるほどくん。
そして‥‥自分のしたことと向き合いなさい。
‥‥師匠として、私が言えることは‥‥それだけね。」

‥‥正直、嬉しかった‥‥。
ようやく、分かったような気がする‥‥。
ぼくは心からそう思った。
「千尋さん。‥‥ありがとうございます。
なんとなく、分かりました。」
ぼくがそう言うと、先ほどとは打って変わった声で、
「それは、よかったわ。」
という声が聞こえた。
「パパ〜ご飯できたよ!」
みぬきが、大声でそう言っているのが聞こえた。‥‥いつも間にか、オドロキくんは帰ったようだ。
「すまないけど、先に食べてて。まだ大切な電話をしているから。」
「分かった!‥‥じゃあ、いただきます!」
みぬきは、そう言ってご飯を食べ始めた。
すると、
「パパって‥‥子供いるの、なるほどくん!」
どうやら、みぬきの声が大きかったからか、今の会話が聞こえたようだ。
この明るい声は‥‥どうやら真宵ちゃんのようだ。
「いやいやいや。一応、「訳あり」だよ。結婚してないし。」
「ってことは‥‥浮気?」
‥‥ぼくは、結婚しているわけでもないから、「浮気」とは言わないんじゃ‥‥?
しかし、彼女と久しぶりに「普通に」会話できて、とても嬉しい。
「よ〜し。‥‥はみちゃんに言っちゃおっと。」
「誤解だって!‥‥というか、春美ちゃんは、まだぼくたちのことを‥‥?」
ぼくは少し焦った。
真宵ちゃんの従姉妹で、天才的な霊力を持つ綾里 春美ちゃんは、ぼくたちのことを「恋人同士」だと誤解していた。ぼくがほかの女性と話すだけでも、すごいパンチを繰り出されたな。振り返ってみると、けっこうやられた気がする。にしても、まだ誤解していたのか‥‥。七年前以上に、痛いだろうな‥‥。
「なるほどくん!」
「はいっ!」
真宵ちゃんに名前を呼ばれ、焦って大声で返事をしてしまう。
「じゃあ‥‥今度、事務所に行くから。‥‥はみちゃんと!」
「ええ!」
「じゃあね、なるほどくん!‥‥ピッ‥‥」
「ちょ‥‥真宵ちゃん!」
切れた‥‥というか、切られた‥‥。
でも、ちゃんと話せて嬉しかった。
七年振りだな‥‥。

電話を切ると、いつも間にか、晩ご飯の時間になっていたようだ。
オドロキくんも帰ってしまっている。
「パパ!嬉しそうだね!」
みぬきは、ぼくにそんな言葉を投げかける。
「ああ。ちょっとね。」

今日の晩ご飯の鶏のからあげを食べながら、そう言った。
‥‥御剣や昔、お世話になった人たちに
想いを伝えなきゃな。
いつか来ると言っていた、真宵ちゃんと春美ちゃんにもな‥‥


次の日、ぼくはいつも通りに事務所を開けた。
みぬきもオドロキくんも隣にいる。
ぼくは昨日のことを、ふと思い出した。
「そういえば‥‥二人とも、昨日ぼくが帰ってきたとき、ぼくの顔を見て「よかった。」って言ったよね。‥‥なんでだったっけ?」
二人は顔を見合わせたあと、オドロキくんが答えた。
「だって、成歩堂さん。‥‥いつも笑顔がつらそうなんです。」
「笑顔が‥‥つらそう?」
ぼくはみぬきの方を見た。みぬきは少し間を置いてから話し出す。
「‥‥うん。なんというか、なにか隠しているような、すごく無理しているような。‥‥ねえ、オドロキさん。」
みぬきに言葉に、オドロキくんは頷く。
ぼくの姿は、二人の目にはそんな風に見えていたのか‥‥。
二人には、ぼくの「迷い」を隠しておくつもりだった。‥‥心配させないために。
でもそのせいで、二人に余計、心配かけていたんだな‥‥。
「‥‥でも、昨日は本当に嬉しそうだったんです。だから‥‥。」
オドロキくんは、そう付け足す。
ぼくは二人を見て言った。
「ありがとう。‥‥オドロキくん、みぬき。
でももう大丈夫。これからは、ちゃんと笑えるから。」
ぼくのその言葉に、二人は微笑む。


‥‥ぼくはこれから、この二人を守っていかなくてはならない。
‥‥自分のやったことに、過去に責任を取って。
本当に心から「弁護士になりたい」と思えるその日まで‥‥
頑張ってぼくの「道」を歩んでいこうと思う。

ありがとう‥‥みんな‥‥

逆転の継承に続く‥‥

■作者からのメッセージ
初投稿です!
初めてなので、至らない部分もあると思いますが、読んでみてください!

9月18日
誤字を修正しました。




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