時空を超えた逆転 5 王泥喜編‐霊媒師の罪‐ | |
作者:
太郎
2008年10月22日(水) 14時17分06秒公開
ID:JsAhK5blwlg
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オドロキが次の証人の名を明かすと、真宵はひどく落ちこんだ。 「ウソ?!昭子おばさまが?!」 そして、真宵は被告席でうずくまってしまった。 「だ、大丈夫だよ!昭子さんは真宵さんをシンパイしてたし!」 「うぅ…。おばさま…。」 「(まいったなぁ…。)」 「…分かってるね。おデコ君。キミが、到達すべきポイントは。」 「!!牙琉検事…!」 牙琉が静かにオドロキに話しかけた。 「(ポイントは…“鬼野刑事”!)…分かってます。」 「…オーケイ。それでは、検察側は新たな証人を召喚しよう!事件を目撃したレディをココへ!」 牙琉の指示でナツミが退廷し、代わりに昭子が入廷して証言台に立った。あまり浮かないカオをしている。 「証人。名前と職業をお願いするよ。」 「綾里昭子。綾里真宵のおばでこざいます。職業は、エッセイスト…やっております。」 「えっせいすと、ですか。またなんともシャレた御職業ですな!」 「ありがとうございます。」 昭子は上品に笑った。 「…ヤマトナデシコですな!証人!」 「(裁判長…昭子さんにウットリしてるぞ…。)」 「おばさまはキレイだからね!」 「や、マッタク。(ホントにキレイだもんな…。)」 「…証人。アナタは普段、東京で働いているんだね?」 「はい。普段は東京の私のオフィスで仕事をしておりますわ。」 「事件のあった日は、中国からの客…つまり王劉蚕が来るから、倉院の里に戻ってきた…間違いないね?」 「その通りです。人手が足りないというコトでしたから…。」 「分かりました。じゃぁサッソク、証言してもらおう!アナタが当日、目撃したコトを。」 「…ハイ。」 昭子は寂しげな表情を見せた。 「(昭子さんは、何かを目撃した。“思い出せない”何かを…!)」 「昭子さん、か…。成歩堂、“彼女”のオモカゲがあるんじゃないか?」 「…あぁ。ぼくも思ってた。似てるよ。雰囲気が。」 「昭子おばさまは何を見たのでしょう…?わたくし不安です。おどろきくん…冷や汗まみれですし…。」 「さぁね。」 茜はクールに答えた。 「うぅ…。おどろきくん…。心配です…。」 「でもあたしは大丈夫な気がするわ!だって成歩堂さんの事務所の伝統でしょ?“追い詰められて、これから逆転”するなんて。」 「伝統ねぇ…。(ヒドイ伝統だな。)」 「あのコはしっかり受け継いでますよ!成歩堂さんの事務所の“伝統”を!」 「つまり、オドロキ君の立つ法廷は、これから荒れるってコトか…。」 「そーゆーコトです!御剣検事さん!」 「…ならこれからだな。(昭子さんは“ちなみ”なのか…それとも、“あやめ”なのか…。)」 「それでは、綾里昭子さん。お願いします。」 〜証言開始〜 「私はあの日、中国からお客様が来るので東京から倉院に戻って参りました。」 「昼前にお客様…王(ワン)様が到着されましたわ。」 「それから、真宵様と私で屋敷案内をしました。」 「屋敷を一通り回り終え、お茶を飲むために修間者の間にむかう途中でしたわ。王様が、渡り廊下に飾ってる花瓶を割ってしまったのです!」 「ですから、私とその場にいた春美ちゃんは花瓶を片付けましたの。真宵様には先に修間者の間に行くように言いました。」 「花瓶を片付け終わって、私は修間者の間に行きました。」 「そしたら…お茶を一口飲んだお客様はそのシュンカンに倒れてしまって…。」 「でも、真宵様は毒を盛るなんてコトは決して…」 「異議あり!」 昭子が全て言い終える前に、牙琉が異議を唱えた。 「昭子さん…でしたね?ぼくはアナタの見たコトだけ証言をお願いしたハズだ。あなたの意見はザンネンながら聞いてない。」 「…スミマセン。」 「それでは、弁護人。尋問をして下さい。」 「…ハイ。」 〜尋問開始〜 「私はあの日、中国からお客様が来るので東京から倉院に戻って参りました。」 「待った!」 「なんでしょう?」 「王さんは、観光が目的で倉院の里に…?」 「そうですねぇ。“観光”と言うか…“研究”が目的と聞いておりました。」 「…研究、ですか?」 「そうです。日本の霊媒師の暮らしなどを見てみたい…とか。」 「当然、日本の霊媒師にはキョーミはあるはずだ。“オカルトカメラマン”だしね。」 「私も少し、キョーミがありますぞ!!」 「まぁ!いつでもお待ちしておりますわ!」 「むほ!楽しみです!」 「(裁判長…ちょっとキモチワルイ。)」 「まぁ、カンケツにまとめると、被害者は霊媒みキョーミがあった。とゆーコトだね。」 「そうなりますね。(やはり、単なる観光ではなかったワケか…。)」 「…なるほど。分かりました。証言を続けてください。」 「昼前にお客様…王様が到着されましたわ。」 「待った!」 「何でしょうか?」 「昼前ってコトは…昼ご飯は一緒に食べられたんですか?(王さんが真宵さんと一緒にヒルメシを食べたなら…毒を盛るチャンスがココにもあったハズだ!)」 「いいえ。食べてませんよ。」 「え…?」 「王様はすでに、お昼ご飯を済ませていましたわ。」 「はぁ…。(打ち破られた…。)」 「弁護人、お昼ご飯がそんなに重要なんですか?」 「えっ…あっ、その…。」 「おデコ君はきっと、“綾里真宵が王劉蚕とゴハンを一緒に食べたなら、そこにも毒を盛るチャンスがあった…!”とでも主張するツモリだったんじゃないかなぁ?」 「う゛っ…(見透かされてる…。)」 「どうやら、ズボシのようですな。おミゴトです!牙琉検事。」 「そりゃどーも…。じゃぁ、おデコがまたまたスベったトコロで、次の証言を頼むよ!そのアト、どうなったのかな?」 「それから、真宵様と私で屋敷案内をしました。」 「待った!」 「…しかし、この弁護人のコエはイジョーにデカいですな。」 「そして、ムダにね。」 「はぁ。どーも…。」 「コラコラ、弁護人!ホメてませんぞ!照れ笑いをやめなさい!」 「スミマセン…(なんで謝ってるんだ?オレ。)」 「…で?おデコ君。結局、キミの質問はなんなんだい?」 「あっ、ハイっ!その…証人と真宵さんは、2人っきりで被害者に屋敷案内をしたんですか?」 「そうですわ。弁護士さん。」 「なるほど。分かりました。次の証言をお願いします。」 「屋敷を一通り回り終え、お茶を飲むために修間者の間にむかう途中でしたわ。王様が、渡り廊下に飾ってる花瓶を割ってしまったのです!」 「待った!」 「はい…?」 「(成歩堂さんが昨日言ってたあのコト…。ココの証言をいかせれば、反証の糸口になる!)王さんが花瓶を割ったトキの様子を詳しくお願いします。」 「…ハイ。昨日も成歩堂弁護士さんには、お話ししたのですが…王様はワザと花瓶を割ったように見えましたわ…。」 「わ、ワザとですとぉぉっ?!」 「証人、ソコんトコを詳しくお願いするよ。」 「ハイ…王様は、イキナリ手を大きく振り上げて…それで花瓶が…。」 「じゃぁ、つまりです。被害者は真宵さんと2人キリになるために、花瓶を…?」 「きっとそうですわ!そうに違いありません!」 「異議あり!」 牙琉は指を鳴らしながら笑ってる。 「アクマでも“ワザと割った”ように見えた…つまり証人個人の見解だよね?なら、決めつけるのはカンシンしないよ。」 「えっ…」 「異議あり!」 今度はオドロキが叫んだ。 「そ、そんな言い方はやめてくださいっ!証人は見たままを証言してる!」 「まぁ、待ちなって。おデコ君。」 「!!」 「王劉蚕が、花瓶をワザと割ったなら、その理由は被告人と2人キリになりたかったから。って可能性をキミは主張している。」 「その通りです!だから、被害者は真宵さんと2人りキリになって…」 「異議あり!」 牙琉は壁を叩いた。 「サイゴまで聞きなよ。おデコ君。」 「!!」 「例え、証人がワザと花瓶を割って、被告のお嬢さんと2人キリになろうとしていたとしても…何も変わらないのさ!」 「…どうゆうコトですか?」 「結局は、先程のハナシに戻るんだよ。被害者・王劉蚕が服毒した、というハナシにね。」 「!!」 「そうなると、ケツロンが出る。被害者には自身に毒を盛る理由はない。従って、花瓶をワザと割ろうと被害者に毒を盛った人物は、綾里真宵。被告人になるワケさ!…決定的な証拠がないカギリ、ね。」 「!(決定的な証拠…!そんなの…まだないよ!)」 「牙琉響也、か。」 傍聴席の御剣が静かに呟いた。 「え?」 「スゴイ検事だ…彼に与えられた時間はわずかに10分そこら。あの短時間であそこまでシナリオを練り上げるとは…。」 「…“天才検事”、か。タイプは違うけど、お前みたいだな。御剣。」 「でも!御剣検事さんの方があんなチャラいのより、よほど“天才”ですよ!」 「む。…そんなコトはない。」 「(相変わらずスナオじゃないヤツ。)」 「おどろきくん…大丈夫なのでしょうか?」 「うーん…でもあの検事が相手なら…何とかなると思うわ。」 「…?」 カンっ! 裁判長が木槌を鳴らした。 「あっ…(時間切れ…か。)」 「弁護人。決定的な証拠があるなら、提示して下さい。」 「…今のトコロ、決定的な証拠は…ありません。」 「オドロキ君…!」 真宵が泣きそうな表情をした。 「大丈夫だよ!まだ尋問は続いている!そこで…」 「…もう十分でしょう。」 オドロキがサイゴまで言い終える前に裁判長が口を開いた。 「被告人がやはり、被害者・王劉蚕に毒を盛った。それが真実です。…判決を下しましょう。」 「異議あり!」 オドロキは机を叩いた。 「まだ、弁護側の尋問は終わってませんっ!」 「しかし、決定的な証拠はない限り、弁護側の立証は“失敗”となります。」 「そんな…!(裁判長のクセに!)」 「異議あり!」 今度は牙琉は力いっぱい壁を叩いた。 「おジイさん。弁護人に尋問は続けさせてやってよ。」 「が、牙琉検事!?検察側の立証にギモンはありませんぞ!ほぼカンペキに近いです!」 「大切なのは、“真実”だよ。裁判長さん。この事件にはまだナゾが多く残っているからね。ナゾは潰していかなきゃならない。サイゴの1つまでネ!…まだまだ分からないよ、この法廷。」 「…!!(牙琉検事…!)」 「…分かりました。検察側がそう言うのなら、弁護人に尋問の継続をキョカしましょう。王泥喜君。続けてください。」 「は、ハイ!」 「ふぅ!なるほど君以上にシンゾーに悪いね!オドロキ君!」 「…自分でもそー思うよ…。トニカク、審理をつなげられたから、大丈夫だっ!」 「頼むよ、オドロキ君!お願いね!」 「あぁっ!」 「ですから、私とその場にいた春美ちゃんは花瓶を片付けましたの。真宵様には先に修間者の間に行くように言いました。」 「待った!」 「はい。」 「どうしてあなたは被告人に先に行くよう指示したのですか?」 「王様は、家元である真宵様とお話ししたがっておりましたので…それに王様はケガをなさったので手当ても含めて先に行ってもらいましたの。」 「“イエモト”?」 「真宵様は、倉院流霊媒道の新しい家元様なのですよ。」 「れ、レーバイドー…?!真宵さん、そうなの?」 「そうだよ!オドロキ君に、アトでまた見せてあげるよ!レーバイ!」 「あ、ありがとう。」 「トニカク、被害者はそこのお嬢さんと修験者の間へ行った。それからあなたは、どうなったんだい?」 「花瓶を片付け終わって、私は修間者の間に行きました。」 「待った!」 「いちいちコマカイですねぇ。弁護人!」 「はぁ…(ナゼ、裁判長はこんなにもオレにつっかかってくるんだ?!)」 「…で?シツモンは?」 「は、ハイ!昭子さん1人で行ったんですか?」 「…と申しますと?」 「春美ちゃんも散らばった花瓶のハヘンを片付けたと証言しましたが…?」 「あぁ!春美ちゃんはそのままお庭で雪遊びを…。」 「(つまり、春美ちゃんは事件が起こる前から庭にいたのか…)分かりました。ありがとうございます。」 「続けてもよろしいでしょうか?」 「お願いします。証人。」 「そしたら、お茶を一口飲んだお客様はそのシュンカンに倒れてしまって…。」 「異議ありっ!」 オドロキは机を叩いた。 「昭子さん!被害者がお茶を一口飲んだシュンカンに倒れたのは、マチガイありませんか?!」 「モチロンですわ。」 「だとしたら、ムジュンしていますね!」 「なんですって?!」 「それでは、弁護人。証拠を提出しなあさい。」 「はい。…証拠はコレですっ!」 オドロキは解剖記録を突き付けた。 「この資料の死因のページを見て下さい!コレによると、トリカブト毒の体内潜伏時間は約1〜3分間!症状が出るのはそれ以降です!つまり、一口飲んだシュンカンに倒れるなんてコトは有り得ないのです!」 「えっ…でも私、見たんです!お客様が…」 「異議あり!」 牙琉は相変わらず、スズシイ顔をしている。 「この間のアトロキニーネの事件を引きずりすぎだよ、おデコ君。王劉蚕が飲んだ一口が“最初の一口”とは限らないだろ?もしかしたら、この証人が見たのは二口目だったのかもしれないよ!」 ⇒To Be Continued... |
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