時空を超えた逆転 1 成歩堂編‐捕らわれの検事‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時16分24秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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御剣は怒りで震えながら仮面男に言い放った。
「私の罪は重罪じゃすまされないんですよ。検事殿。」
「なんだと…?」
「私をここまでどん底にまで突き落とした成歩堂龍一。そして実際に私を告発した弁護士・王泥喜法介…彼らには1番苦しい仕打ちを受けてもらいますよ。」
「キサマ…何者だっ?!(告発…だと!?)」
「まだ明かす事は出来ませんよ…御剣検事殿。とにかく、私は成歩堂という男を良く知っています。そしてあなたと彼は検事と弁護士という関係ながら、固い絆で結ばれた親友同士…。成歩堂は何があろうともあなたを信じ通すと決めている。…では、そんなあなたを人質にとったら成歩堂はどのような行動に出るか…?」
「キ、キサマっ…!なんてヒキョウな…!!」
仮面男は鼻で笑って言った。
「彼は単純な男です。必ずここに現れる。…そして王泥喜も成歩堂に良く似た単純な男です。必ず彼も一緒にここに来る。あなたがた3人を一気に調理できると言うワケです。」
「ぐっ!!キサマ…どこまで腐ってるんだ?!」
御剣はかつてない程怒りで震えていた。この“ワナ”のエサに自分がなってる事、そして友人が自分を助けに来たら皆、やられてしまうのにどうする事も出来ない自分に絶望している。
「最初にも言ったとおり、全ては私の完璧なロジック…。あなたは明日、その私のロジックを目の当たりにする奇跡の証人となります。それまでゆるりと、ここでくつろいで下さい。検事殿。」
そう言うと仮面男は部屋を出ていった。
「…(成歩堂達の助けが来る前に、自分でここから脱出しなきゃだな。)」

2月24日 午前9時45分 被告人第2控室ー

「(まさか自分が被告席に立つとは…。昨日まで弁護席に立ってたのに…)」
「…ドロキ君?」
「(あぁ…発声練習もする気にもならなかったよ…)」
「オドロキ君!?」
「うぉっ!ハイっ!オレ、大丈夫ですっ!」
イキナリの大声に成歩堂はビグッとした。
「おぉ、よかった。生きてるね…(大丈夫か…?この人…)」
「被告人って毎回こんなにキンチョーしてるんですね…」
「まぁね…(そうか。この人昨日まで弁護席に立ってたんだもんな…)」
「(御剣さんの方がツライのに…オレがこんなに弱気になってたらいけないのに…でもキンチョーする…)」
「………」
♪チャラッチャラララチャラッラ〜
…ピッ。
「ハイ、成歩堂です!」
「(なんだあのナツカシイ着メロは…!)」
『おぉっ!アンタ!自分はやったッス!ほぼ徹夜で、管理者の検事殿に交渉したッス!!アンタ、今日超時石のコト、立証していいッス!』
「えぇっ!本当ですか!?イトノコさんっ!」
『今、検事局の職員を派遣して貰ったッス!法廷後、傍聴人から超時石のキオクを消す作業をしてくれるみたいッス!』
「そんなSF見たいなコトができるんですか…!?」
『できるみたいッスよ!まぁ、裁判長や亜内検事のような長年この世界に関わってる人達には多少通じるみたいッス!しかし、傍聴人のヤジには気をつけるッス!惑わされちゃダメッス!』
「そうですか。ありがとうございますイトノコさん!今日中にオドロキ君の無罪判決と御剣の救出を必ず…!」
『そのとおりッスぅぅぅ!』
「…成歩堂さん、イトノコ刑事の声、廊下から聞こえますよ?」
「えっ?!」
成歩堂は携帯を耳から離した、その時、ドアがイキオイ良く開いた。
「おはよーーッス!アンタたちっ!」
「あっ、おはよーございます、イトノコ刑事さん。」
「…イトノコさんさっきまでどこからかけてきたんですか?」
「裁判所の前ッスよ!自分、今日も出廷するッス!いやぁ〜。ケーヒだから、使わなきゃと…」
イトノコの満面の笑みに対して成歩堂とオドロキ冷や汗タラタラになった。
『(いや、そーゆー問題じゃないだろう…)』
「とりあえず、今日頑張って、証言にスキを作るッス!アンタたち、バンバン突っ込んで欲しいッス!」
「はぁ…。」
「イトノコさん、“アンタたち”って…?ぼくと…」
「そう!被告のアンタッス!アンタも弁護士ッス!突っ込んで欲しいッス!」
「はぁ…分かりました。」
「じゃ、自分は行くッス!」
バタンっ!
イトノコはすごいイキオイでドアを閉め、立ち去った。
「あーゆー時のイトノコさん、スキがないんだよな…」
「…そうなんですか。(ならオレをタイホしなきゃいいのに…)」
そこに法廷係官が部屋に入って来た。
「被告人に弁護人、時間です。出廷して下さい!」
「行こう、オドロキ君。ぼくを信じてくれ!」
「はいっ!お願いします!成歩堂さんっ!」

同日 午前9時57分 地方裁判所 第4法廷ー

オドロキは初めての被告席に座り、初心に戻ったような気持ちで法廷を見つめた。裁判長席には今も昔も変わらずのあの裁判長が座っていて、検事席にはオドロキの初法廷の相手だった亜内検事が得意げな笑みを浮かべて立っていた。
「(亜内検事…髪、あんなに生えてたんだ…)」
オドロキはまじまじと亜内検事を見ていると、裁判長の木槌が鳴った。

カンカンっ!

「これより、王泥喜法介の法廷を開廷します。」
「弁護側、準備完了しています。」
「検察側も準備完了しております。」
「(被告、準備完了しています。…と!いよいよ始まる…オレの被告人としての法廷が…!成歩堂さんを信じるんだっ!)」
裁判長はオドロキをじっと見つめて言った。
「被告人、オドロキ君。」
「は、ハイっ!大丈夫です!!」
「(オドロキ君、イキナリの裁判長のフリに動揺してるぞ…)」
「被告人の職業は…弁護士で間違いないですかな?」
「あっ、ハイ、そうです…。」
すると一気に傍聴席でざわめきが起こった。
『弁護士だってよ!あの被告人…!』
『あんなに若いのにもったいないな…』
『検事誘拐に携わるなんて最低ね。』
「(うぅ…キツいな。オレ無実なのに…)」
検事席の亜内検事が得意げにニヤけながら、言った。
「ウフフ…成歩堂君。キミの依頼人はキミの親友・御剣検事の誘拐に関与した罪で起訴されてるのに…良く弁護なんか引き受けたねぇ…」
「違うっ!彼は無実なんだっ!」
成歩堂の反撃にまたしても傍聴席がざわめき出した。

カンカンっ!

「静粛に!静粛に!弁護人、あなたの言動、現時点ではいかがなものかと思いますぞ。」
「(アンタが振ったんだろっ!)」
「ウフフ…成歩堂クン。胸を借りるつもりでかかってきなさいっ!」
「胸を借りなさい。弁護人。」
「はぁ…。(もうワケわからないよ。)」
「…ってコトで、亜内検事。冒頭弁論をお願いします。」
「ハイ。裁判長。事件は2月23日、午後12時30分過ぎ頃に発生しました。この地方裁判所で審理を終えた、被害者・御剣伶侍検事が駐車場にとめてあった自分の車に荷物を詰めている時に数人の男達に囲まれ、そのまま拉致されました。この被告人は逃げ遅れた上、目撃者の通報によって、身柄を確保したものです。」
「ふむう…あの御剣検事が誘拐されるとは…。」
「彼は検事局始まって以来の天才ですからね。我々も非常に困惑しております。」
「ふむう…無事だといいんですが…。」
裁判長は成歩堂を見つめながら言った。
「(なんでぼくを見るんだよ…気持ち悪いな…)」
「コホン、それでは亜内検事、証人を!」
「はい、裁判長。捜査を行った、糸鋸刑事を証言台へ!」
すぐにイトノコは入廷し、証言台に立った。さっきより浮かないカオしている。
「証人、名前と職業を。」
「糸鋸圭介、所轄署で刑事やってるッス。」
「証人、御剣検事のコトはまだ救出されてないのでツライでしょうが、容疑者確保までの概要をお願いできますか?」
裁判長は成歩堂にカオを向けながらイトノコに言った。
「(カンゼンにぼくが悪者だな…)」
「了解ッス。」
〜証言開始〜
「昨日の審理の後、大体、午後12時25分頃、自分は御剣検事と少し会話ししたッス。」
「その後、検事は検事局に戻るために駐車場に向かったッス。」
「12時30分頃、警備室からC、Dブロックのカメラ映像が遮断されたと通報があり、駐車場に出動したッス!」
「我々が駐車場に着くと、そこの被告が御剣検事に後ろから銃を突き付けてたので、現行犯タイホしたッス。」
「他の犯人グループは御剣検事を車に押し込めたあと逃走したッス。」
「この被告…取り残されたからもしかしたら…巻き込まれたのかな…と個人的に…」
『異議あり!』
イトノコが最後まで言う前に亜内が異議を申し立てた。
「刑事の主観は聞いてませんよ。」
「あ、う…すまねッス。」
さらに亜内がとどめをさす。
「糸鋸刑事。早く、現場写真を出しなさい。」
「(現場写真…?!)」
「う…承知したッス。裁判長、目撃者が撮った携帯画像をプリントしたのを提出するッス。」
「受理します。」
イトノコは両手をあげてる御剣に右手で銃を突き付けてるオドロキの写真をシブシブ提出した。
「こ、これは被告が御剣検事を後ろから銃で脅してます!」
裁判長は目を丸くして言った。
「異議あり!」
思わず、オドロキは叫んだ。人差し指をまっすぐと裁判長の持つ写真に向けている。
「それは、銃を持たされたんですっ!」
「異議あり!」
亜内が叫んだ。
「被告人は黙りなさいっ!」
「う゛っ。スミマセン。(亜内検事…今より弱冠気迫が…)」
「フン。分かればいいのですよ。分かれば。」
亜内は得意気に言った。

カンカンっ!

裁判長のとどめの木づちが鳴り響く。
「被告人は異議を申し立てないっ!あなたの主張は成歩堂君が何とかします!そうでしょう?」
「えっ、あっハイ。(今日の裁判長はムチャブリが多いな…)」
「それでは弁護人、尋問をお願いします。」
「はい。(…イトノコ刑事…今日に限ってスキがあまりないな…)」
〜尋問開始〜
「昨日の審理の後、大体、午後12時25分頃、自分は御剣検事と少し会話ししたッス。」
「待った!」
「おっ、ムジュンッスか?」
「あ、いや。御剣と会話したのが25分頃で、さらわれたのが30分。その5分足らずで犯行が行われたコトになるんですけど、時間は間違いないですか?」
「ロビーにかかってた時計を見たので、間違いないッス。その時検事はもうすでに荷物を鞄に詰め終えてて、帰りの準備は万端だったッス。しかも会話したのはロビーだったから、エレベーターを使えば、30秒で現場に着くッス。」
「(確かに、この見取り図を見てもロビーから1番近いブロックはC。そして、エレベーターの真横に御剣は車を止めていた。時間は間違いないな…)分かりました。次、お願いします。」
「了解ッス。」
「その後、検事は検事局に戻るために駐車場に向かったッス。」
「待った!」
「おっ、次はなんスか?」
「その時イトノコさんはどこに?」
「ロビーに残って雑誌読んでたッス!」
「はぁ…ちなみに何の…?」
「異議あり!」
亜内からまたしても異議がとんだ。
「関係ないでしょ。糸鋸刑事がマンガ読もうが、エロ本読もうが…!」
「エロ本!読んだんですか?糸鋸刑事?」
裁判長が何故か過敏に反応した。
「(そこかよっ!)」
被告席のオドロキも思わず心の中でツッこんだ。
「エロ本じゃなくて、週刊誌ッス。浜崎まなみと長瀬富也の破局の記事を…」
「なるほど。あの2人は破局したのですか…残念です。」
「(ガッカリするなよ!)」
今度は成歩堂が心の中でツッこみを入れた。
「ま、まぁそうゆうコトで。証人次行って。」
「了解ッス。」
「12時30分頃、警備室からC、Dブロックのカメラ映像が遮断されたと通報があり、駐車場に出動したッス!」
「待った!」
「なんスか?」
「何人くらいで…?」
「5人くらいッス。あとは法廷係官数人ッス。」
「現場には何分くらいで?」
「Cまでは、30秒程ッス。エレベーター、すぐきたし。降りたら事件が起きてたんで、我々はDには行かなかったッス!」
「なるほど…ありがとうございます。」
「我々が駐車場に着くと、そこの被告が御剣検事に後ろから銃を突き付けてたので、現行犯タイホしたッス。」
「異議あり!」
成歩堂はピンと人差し指をイトノコに突き付けた。
「おっ、今度は何スか?!」
「この写真には決定的なムジュンがあります…!!」
「な、なんですって?!成歩堂君。どこがムジュンしてると言うのですか?!」
「ここですっ!」
成歩堂は写真の中の銃を持ってるオドロキの手を指差した。
「ウフフ。特に何も見当たらないようだが…弁護人?」
「いいえ…」
成歩堂は横にカオを振った。
「オドロキ君は左利きなのです。」
「なんですと?!」
「彼は走って御剣を助けようと、集団に飛び込んだ際、銃をつかまされたと主張しています。その時、勢いで利き腕じゃない方の手で掴んでしまったのでしょう。だって利き腕じゃない方の手で銃を撃つなんてありえないっ!」
「うぉぉぉっ!参ったッスぅぅぅ!」
イトノコはわざとらしく叫んだ。
「で、でも実際撃ったワケではないのだから利き腕じゃない方の手でも十分脅しになる!!」

⇒To Be Continued...

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