逆転NOTE14
作者: 10join   2008年09月18日(木) 18時54分13秒公開   ID:QRqdkrt8vd2
「それでは証言に移ってもらいましょう」
「ならばそのケガ人を見つけた状況から証言してもらおう」
 確かにそれは気になるな。どうしてクリムゾンジャック先生が青影を見つけたのか気になるしな。
「それを証言して何に」
 そう言った瞬間にカール・ムアッグウォーがすごい視線を裁判長に飛ばしてきた。
「ま、まあ何が重要になるかわかりませんからな。それでは証人、証言を」
 それを見てすっかり裁判長は縮こまってしまい、大人しくカール・ムアッグウォーの言葉に従った。裁判長弱すぎるぞ。この人が検事に主導権を奪われるのはもう確定しているようだ。
「わかった。それじゃ証言しようか」
 一体どんな証言が飛び出てくるんだろうな。かなり興味がある。

《ケガ人を見つけた状況》
〈あれは緋ノ子と一緒に買い物をした帰る時だった〉
「待った!一体何を買おうとしてたんですか?」
 何も関係なさそうだけど一応聞いてみた。
「異議あり!弁護人。よけいなことを聞くな!そんなことはこの審理に全く関係ないことだろう」
 カール・ムアッグウォーがいきなり異議を飛ばしてきた。なんとなくそう言われるような気はしたんだけどな。
「緋ノ子と言うのは誰だ?キサマの恋人か?」
 …カール・ムアッグウォー。あんたも十分関係ない質問してるだろ。まあぼくだって知らなければそんな質問してたかもしれないけどな。買い物に行くとか言われたら普通恋人と一緒に言ったと思うだろう。
「私もそれには興味ありますぞ。証人。教えてくれませんか?」
 裁判長まで食いついてきた。なんかどうしても言わなくてはならない空気になって来たな。ぼくは知ってるからどうでもいいと思ってるけど。
「緋ノ子と言うのは私の家で預かってる女の子で、単に食料の買出しをしてただけだ」
 クリムゾンジャック先生は事実を淡々と述べた。
「ああ。つまりロリコ」
 裁判長がそこまで言った瞬間クリムゾンジャック先生の手からなんだか光る物が投げられた。それは裁判長席の台に突き刺さった。どこからどう見てもメスだ。しかも裁判長席の台にヒビが入っている。一体どんな力で投げ込んだらそんなことになるんだ?
「それ以上言葉を続けたら今度はこのメスがあんたに刺さるぞ」
 クリムゾンジャック先生はもう一つのメスを懐から取り出して先端を裁判長に向けた。
「す、すみません。調子に乗りすぎました。次の証言に行っても結構です」
 やっぱり裁判長は弱いな。思ったけどこういう場合法廷侮辱罪に問わなくていいのか?どうやら怖くてそんなこと考える余裕はないようだ。
「キサマが勝手に仕切るな!」
 カール・ムアッグウォーはそう言うが、本来この場を仕切るのは裁判長のはずだ。検事の力が裁判長の力に比べて強すぎるだけだからあんたたちが仕切ってるだけだろ。まあ今ではそれが当たり前になってる所で裁判長の力の弱さがよくわかるというものだな。

〈あんたたちが言うケガ人が倒れてるのが見えた〉
「待った!あんたたちが言うケガ人と言うことは他のケガ人がいたということですか?」
 一応そう言う話は聞いていたが聞いてみることにした。
「あの日は結構いたな。麻薬密輸中に交通事故でケガしたやつとか、スナイパーに狙われてなんとか逃げ延びたやつもいたな。もちろん手術は余裕で成功したけどな」
 ずいぶんやばそうなやつらが運び込まれてるようだ。他の病室に行こうとしないでよかったな。もしそうしてたら弁護士って言ったらどうなったものかわかったものじゃない。
「そんな人たちの治療をしても大丈夫なんですか?」
 確かにそうだ。そんなやばいやつらの相手をしてたら命を狙われることも多いんじゃないのか?それでも無免許医をやめようとしないのは一体なんでなんだろう。
「そんなことは覚悟の上だ。そういう他の病院に行くに行けないやつらを受け入れるのが無免許医たる私の使命だ」
 なんかものすごいかっこいいこと言ってるな。無免許医であることを自信満々で言われても困るけどな。それでもその志は立派なものだと思う。
「それにそういうやつら羽振りいいからな。ものすごい額ふっかけられるし」
 そう言ってものすごく黒い笑みを浮かべた。それもやっぱり目的のようだ。見直した時の感動を返してもらいたいような気がする。そもそも無免許医って足元を見てバカ高い医療費をふっかけることも許されるのか?やっぱり法律で定められた医療費にしばられないんだろうか。いや、そもそも無免許で医療行為行う時点でダメなような気がする。法律の視点で考えてもムダなような気もする。
「キサマのそういう話なんか聞きたくない!さっさと次の証言に行け!」
 カール・ムアッグウォーが吠えた。どうやらその手の話を聞くとムカつくようだ。
「はいはい」
 クリムゾンジャック先生がやる気なさそうに言った。ここでも裁判長は出てこなかった。もうあきらめているようだ。

〈私は急いでそのケガ人を背負い、自分の病院に向かった〉
「待った!他の病院に運ぼうと思わなかったんですか?」
 一応適当につっこんでみた。
「私の病院が近くにあったからな。わざわざ他の医者に任せることはないだろう」
 ふーん。そうなんだ。なら仕方ないか。そこまで聞くことはなかったか。
「異議あり!キサマの証言には問題がある」
 なぜかカール・ムアッグウォーがつっこんできた。なんであんたが自分の証人につっこんでるんだよ。
「問題?どこにあるんだ?」
「とぼけるな!その現場の近くには御簾子総合病院があるではないか!そっちの方が近いだろう」
 御簾子総合病院ってクリムゾンジャック先生を追い出した藪病院の名前が変わったものだろ。それが事件現場の近くにあるなんて聞いたことないけど。
『そりゃそうだ。おれだって言った覚え全くないからな』
 作者は開き直ってる。こういう設定いきなり法廷で出してくるってどうよ?
「なるほどくん。そういう使ってない設定を後で出すのなんてよくあることだよ。そこまで気にすることないじゃん」
 真宵ちゃんにまで言われた。まあ確かにそうだな。特に相手は作者だ。そこまで気にすることじゃない。
「そ、そうだとするとなぜあなたの病院に?」
「そんなの分かりきってるよね」
 真宵ちゃんの言う通りだ。ケガ人の正体がわかっていなくてもわかる。一応よっぽど難しい手術だったからという可能性もあるけどな。
「そのケガ人がいわくつきのやつだからだ」
 クリムゾンジャック先生は得意げに言い放った。別に誇らしげに言うことじゃないだろう。
「次はその証人を呼ぶ。誰が出てきてもいいよう覚悟しておけ。それでは30分休憩だ」
 カール・ムアッグウォーが裁判長の許可もとらずに勝手に休憩を入れた。
「わ、わかりました。30分休憩です」
 裁判長の動きもスムーズになったな。もう勝手に休憩入れられるのに慣れたようだ。それはかなり嘆くべきことのような気がするけどな。一体どんな証言が飛び出てくるんだろうね。

              つづく

 
■作者からのメッセージ
次でヤツが出てきます。ものすごく核心にせまるので、また途中で切ります。

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