逆転NOTE13
作者: 10join   2008年09月14日(日) 16時49分56秒公開   ID:QRqdkrt8vd2
3月9日 午前9時40分 被告人第2控え室
 これで2日目の法廷か。まだ事件の真相が何一つつかめていない。それにしても昨日青影から話を聞けなかったことは痛いな。
「そんなの今日聞けばいいことでしょ。今さら言ったってしょうがないよ」
「そうですよ。証言を聞けばなにかわかりますって」
 真宵ちゃんと春美ちゃんがぼくをはげますように言ってくれた。少し元気が出てきたような気がする。
「まあ今回は明日に引き伸ばすことを考えてたらいいよ。今日の法廷で全てが明らかになることはまずないんだからさ」
 白夜さんは自分が被告人だというのにかなり落ち着いている。言ってることは正しいとは思う。
「確かにそう簡単に出てくるわけはないな」
「明日になればわかることも出てくるだろ」
「しっかり明日へとつなげてくださいね」
 無限君と零樹君と紫音ちゃんも明日に引き伸ばすことを望んでいるようだ。
「今日負けて終わることだけは勘弁してくれよ」
 空悟君にもそう言われた。今日勝って終わるという期待は全くされていないようだ。証拠がないから当然と言ってしまえばそれまでだけど。
「そろそろ時間です。法廷に入って下さい」
 いつもと同じ係官が来て言った。それにしてもなんで会話のきりがいい時にちょうど時間になるんだろう。運がいいからなのか?

同日 午前10時 地方裁判所第4法廷
カッ!
「これより白夜の2日目の審理を始めます」
「弁護側準備完了しています」
「検察側もとより」
 あくまでも冷静にカール・ムアッグウォー検事が言った。
「ではカール・ムアッグウォー検事。最初の証人を」
「ならば、ここは当然事件の現場を目撃した証人を…と行きたい所だが、まずはそのケガ人が入院してる病院の医者に証言させようか」
 わざわざ紛らわしいことを言わないでもいいような気がするのはぼくだけか?
「それってクリムゾンジャック先生ですか?なんでわざわざ」
「黙れ!キサマはワガハイが意味もなく証言させるとでも思っているのか!」
 カール・ムアッグウォーがどなった。少しは落ち着いた方がいいと思うぞ。あんたはフランスの検事で、裁判長はあんたの法廷を初めて見てるっていう設定になってるんだぞ。そんなこと突然言われても混乱するだけだろう。
「わ、わかりました。それならば呼んでください」
 あいかわらず裁判長は弱かった。

「証人。名前と職業を」
「クリムゾンジャック。職業は無免許医だ」
 クリムゾンジャック先生はカール・ムアッグウォーの質問に淡々と答えた。どうでもいいけど無免許医って職業じゃないだろ。単に医師免許がないのに勝手に医療行為をやって、金をとってるじゃないのか?
「言うなら本名を言え!」
「端枯紅男。無免許医だ。それにしてもまたあんたに会うことになるとは思ってなかったよ。できれば二度と会いたくなかったんだけどな」
 クリムゾンジャック先生は前もあったやりとりの後にいきなりそんなことを言い出した。
「奇遇だな。ワガハイもできればキサマには会いたくなかった」
 どうやらカール・ムアッグウォーはクリムゾンジャック先生と何かあったらしい。その時はカール・ムアッグウォーとは名乗っていなかったのかもしれないが。

「お、お二人は以前会ったことがあるんですか?」
 裁判長が何か険悪な空気になっている2人の間に割って入った。よくあの中に入り込もうなんて思うな。ある意味で尊敬するよ。
「この事件には関係ない。これはあくまでも仕事上の話だ」
「そう。仕事上の話だ。もっとも手術する話を持ちかけても断られたけどな」
「なんで手術をしようとしたのに断ったんですか?それ以前に何で手術をしようとしたんですか?」
「ただ無免許医に手術させることをプライドが許さなかった。それだけだ。こいつが勝手に手術しようとした理由をキサマが知る必要はない!」
 カール・ムアッグウォーはどなるように言った。
「絶対ウソだよね」
 真宵ちゃんが隣から言ってきた。ぼくもそう思う。まあ大体想像はつくけどな。クリムゾンジャック先生が手術をしようとしたのは肩の弾丸の存在に気付いたからだし、カール・ムアッグウォーが手術を拒否したのは足がつくのを恐れたからだと思う。でも引っかかることがある。クリムゾンジャック先生の所に訳ありの患者が多く来るのは、無免許医だから秘密が漏れにくいからだろう。だとしたらカール・ムアッグウォーが手術を受けなかった理由は別にあるんだろう。ここでぼくは白夜さんの考えを思い出した。そしてあることに気がついた。もしあの時クリムゾンジャックが弾丸を取り出していたらDL6号事件は解決していなかった。つまりカール・ムアッグウォーは罪を償うためにわざと残しておいたことになる。自分の体の中に決定的な証拠を残しておいたままで。
『これは『クリムゾンジャックのDL6』という短編に載ってる話だ。良かったら呼んで欲しい』
 作者がいきなり宣伝のために沸いて出てきた。そんな理由でいちいち出てこなくてもいいと思うのはぼくだけなのだろうか?
「うるさいぞ!そんなことは関係ないとさっきから言っておるではないか!」
「そうですね。少し食いつきすぎたようです」
 裁判長も何が問題なのかわからないが適当に言っていた。この裁判どうなるか先が思いやられるな。

          つづく
■作者からのメッセージ
次で証言に移りたいと思います。なんかこれだと話数少なくなるのであえてここで切ってみました。

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