逆転NOTE11 |
作者:
10join
2008年08月28日(木) 14時34分40秒公開
ID:QRqdkrt8vd2
|
同日 午後2時22分 林ビル跡地 「ほう。つまり話も聞けないままのこのこ引き上げてきたというわけか」 林ビルについてすぐに吉良警部にイヤミを言われた。 「仕方ないでしょう。ケガがひどくて証言できないかもしれないから話してもムダだって言われたんですから」 茜ちゃんが吉良警部に言い返した。だけどその話を聞いた吉良警部は顔に苦笑とも失笑ともとれる笑顔を浮かべた。 「それでお前らはその話を信じたのか?」 「まさか。証人になろうとしないのには何か理由があるに決まってる」 「単にケガを証言できないことへの言い訳に使ってるだけだ」 「でも何で証言したくないのかわからないんです」 いつものように無限君と零樹君と紫音ちゃんが息を合わせて答えてきた。 「確かに問題はそこだよね。なんで答えてくないんだろう」 「やっぱりなんかやましいことがあるんでしょうか?」 真宵ちゃんと春美ちゃんが言う通りなんで答えないのか気になる。確かにやましいことがあると考えて間違いない。クリムゾンジャック先生もケガ人が誰か聞かれてサイコ・ロックを3つ出してたからな。 「それならどうやって解くか問題ですね」 「このままじゃパリーンって壊れるところを見られそうにないよ」 星歌さんの後に死神のリリスが答えてきた。そう言えば同じ死神のバールもサイコ・ロックが見えてたな。なんでなんだろう。 「何を話しているかわからないし、死神の生態にも興味はない。だが誰かつきとめる方法がないわけではない」 吉良警部が自信を持って答えた。一体それはなんだ? 「あの凶器についてた被害者のものではない血を調べろってことですか?でも血液検査しようにもどうしたらいいんですか?」 確かにどうやって血液検査をすればいいかわからない。クリムゾンジャック先生が患者が誰か教えてくれないと照合しようがない。ケガ人と鉄の棒についた血が同一人物だってことはわかってるんだけど。 「警察にデータが残ってるって言いたいのか?確かにその可能性は高いかもしれないけど、どうやって絞り出すって言うんだ?」 空悟君でもどうやって犯人をつきとめるのかわかってないようだ。確かに警察にデータが残っている人なんて大勢いるだろうしな。 「刑務所から出られるのは刑を全うした人間だけじゃないってことさ」 何が言いたいんだ?脱獄した人を集中的に探せばいいってことか? 「まさか、死刑が失敗したやつを探す気か? でもそんなのデータに残るわけがないだろ」 空悟君が言う通り確かに死刑が失敗した場合釈放される。でも確かにそんなのデータに残ってないだろうし、記録上は死亡したことになってるはずだ。 「確かにそんなデータは残ってないだろう。だが確かめる方法は他にある。そうだろ星歌」 吉良警部はなぜか星歌さんの方を見て言った。名指しされた星歌さんはあることに気がついたようだ。 「まさか死刑日程が早まった人から調べると言ってるんですか?」 死刑日程が早まった人?どうしてそれで死刑が失敗したってわかるんだ? 「もともとの死刑日っていうのは死神の眼で見える寿命と同じなのか?」 「つまりそれを早めるって事は早く楽にしてやりたいやつか」 「寿命が来る前に死刑日時を設定することで 死なせないためね」 また無限君と零樹君と紫音ちゃんがコンビネーションを見せ付けた。つまり死刑日程が早まったって事は死の日時をどうしても早めたい理由があるってことか。つまりそういうやつらの中に今回のケガ人がいるかもしれないってことか。 「わかりました。それなら一度警察に戻りますね」 茜ちゃんはそう言ってパトカーに送られて警察署に戻っていった。ここで調べることはもうなさそうだからぼくらもいったん事務所に戻ろうかな。 ゾクッ。いきなり前のような暗い視線を感じた。何なんだろうこの感じは。 「なるほどくん」 真宵ちゃんはそう言ってスーツの裾をつかんできた。 「どうした?またラブラブぶりを見せ付けたいのか?」 吉良警部が冷たい視線を向けてきた。 「二人は深く愛し合ってますから」 春美ちゃんも頬を赤らめて何か言っている。 「ち、ち、違いますよ。なんか変な視線を感じたんです。そうだよね真宵ちゃん」 「う、うん。だからなんだか怖くなっちゃって」 吉良警部はまだ疑いの目を向けていたが、周りを見回した。無限君と零樹君と空悟君も何か怪しいやつがいないかと見回していた。 「あれ、あそこの影に誰かいませんか?」 紫音ちゃんが何かに気付いたようだ。視線の先を見ると、確かに壁の影に誰かが顔をのぞかせているのが見えた。 「おい、そこの不審者。今すぐこっちに来い。来ないと力ずくで引きずり出してやる。 」 吉良警部がそう言うと隠れているやつは慌てて隠れている所から出てきた。猫背で、前髪が長くて顔が見えない。顔を俯けていて、なんだか人を寄せ付けない空気を発している。全体的に印象が暗く、影が薄く、存在感も希薄だ。誰なんだこの人? 「倉杉。お前を捜査に加えた覚えはないんだが」 吉良警部がその暗いオーラを放っている人を見下した目で見ながら言い放った。捜査に加えた覚えがないってことはこの人も警察なのか? 「はい。確かに刑事です。名前は確か倉杉えいはくです」 えいはくってどんな字を書くんだ? 「影が薄いって書いて影薄だ。そのままだろ」 吉良警部が吐き捨てるように言った。どれだけ嫌われてるんだこの倉杉って人。星歌さんでさえこの人を見てからなんか態度が変だし。 「お願いです。ぼくも捜査に加えてください。ぼくの友人の敵を殺したやつを捕まえたいんです」 友人の敵を殺したやつを捕まえたいってことはその友人は林ビル爆破事件で死んだって事か? 「フン。まあいいだろう。隠れてうろちょろされる方がよっぽど面倒だ。余計なことをしたらすぐに牢にぶちこむからな」 この倉杉って人はどれだけ信用されてないんだろう。 「知りません。事務所に帰るんだったら早くかえりましょうよ」 星歌さんの様子が明らかにおかしい。この倉杉って人あまりよく思われてないようだ。 まあ一度戻るか。 同日 午後3時26分 成歩堂法律事務所 「うーん。まだ結果出ないのかなあ」 真宵ちゃんは落ち込んだように言った。無限君と零樹君と紫音ちゃんと空悟君は家で連絡が来るのを待っているようだ。 「そこまで早く出るものでもないだろ」 やっとぼくのセリフが出てきた。危うくセリフなしで終わる所だった。 「早く結果が出てほしいですね」 春美ちゃんも心配そうに言った。その思いが通じたのかぼくの携帯が鳴り出した。発信者は茜ちゃんだ ピッ 「わかったの?」 『はい!今すぐ留置所にきて下さい』 留置所?でもわかったんならクリムゾンジャック病院に行ったほうが… 『とにかく来て下さい。確かめたいことがあるんです!』 茜ちゃんはかなり焦っているようだ。もしかしたら白夜さんに聞きたいことがあるのか? 「わかった。いますぐ行くよ」 そう言ってぼくは電話を切った。 「結果出たの?」 「うん。今すぐ留置所に来いって言ってたよ」 「留置所?なんでですか?」 春美ちゃんが言う通りなんで留置所に行かなきゃならないんだろう。まあいい。手がかりがある以上行かないわけにはいかないからな。 つづく |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |