逆転のストライク
作者: 剣   2008年08月27日(水) 12時00分58秒公開   ID:NqQGYXoX0kM
ー8月7日 聖教学園高校 第一野球場ー

空も薄暗くなった、夜の野球場。ナイター設備の光が、二人の姿を照らしている。ホームベース後ろに散らばる無数の白球と、何段にも詰まれたボール籠。高く盛られたマウンドの上で、『美咲』は途端に座り込んだ。その異変を察した『楓』は、キャッチャーマスクを外し、マウンドへと駆け寄った。

「どうしたの?美咲、今日はやけにコントロールが乱れてるわね…。」

「う、うん…。」

元気のない美咲に、楓が心配そうに言葉をかける。

「まさか…痛むの?」

「ううん。そうじゃないの。ただ…。」

「ただ…何?どうしたの?」

「マウンドが、ちょっと高いような気がして…。」

「マウンドが高い?」

楓は、すかさずマウンドから降りて、一回り調べたあと、球を投げる『ふり』をした。

「確かに…ちょっと高いかもね。でも、マウンドが高いからって、ここまで美咲がコントロールを乱す事って、今までなかったよね?」

「う、うん…。」

「最近の練習で、疲れが溜まってるんだよ…きっと。もうすぐ大会なんだし、今はもう片付けて休みなよ。」

「そ、そうだね。じゃあ私、球拾ってくる!」

そう言って、美咲は再び駆けて行った。しかし、高くなっているマウンドに、楓は疑問を抱いていた。そして、二人は帰り道を共に歩き、別れたあと、楓は再び学校へと戻って行った。気になりだしたら止まらない性格が、彼女を学校へと押し戻した。楓は用具入れから『トンボ』を持ってきて、高くなったマウンドを低くしていった。制服姿のまま作業を進めていく事数十分。楓は『大きな木箱』を見つけ出した。

「…何かしら?」

楓は恐る恐る木箱を開けた。中には、いくつもの『財布』が入っていた。

「えっ?お財布?これが、マウンドを高くしていた原因なの?」

その時、暗くなった球場が一気に明るくなった。そして、バッターボックスには、一人の男が立っていた。

「やっぱりキミだったか!校内連続窃盗事件の犯人は!」

制服姿の男は、そう言い放った。

「えっ!?ど、どういう事なの!?」

「現場は抑えた!これより、キミを校内裁判にかけ、裁きを与える!」

「な、何ですって!?」

静かな球場が、一気に慌ただしくなった。そしてそのまま、いたずらに時間だけが過ぎていった。
■作者からのメッセージ
初めまして!剣(つるぎ)です!ケータイから更新します!よろしくお願いします!

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集