逆転NOTE9
作者: 10join   2008年08月03日(日) 19時50分05秒公開   ID:QRqdkrt8vd2
3月8日 午後1時30分 留置所
 どうにか明日につなげることができたな。まさかカール・ムアッグウォーと法廷で対決することになるとは思わなかった。でも意外とやりやすかったかもしれないな。吉良警部にも口止めせずに、イヤミを言わせ放題だった。彼も変わったのか?それともカール・ムアッグウォーは本当は狩魔豪に似た全くの赤の他人なのか?
「それはないよ。カール・ムアッグウォーと狩魔豪は100%同一人物さ」
 白夜さんが自信を持って言った。なんでそこまで言い切れるんだろう。
「あんただって知ってるだろう。現在の死刑ではデスノートで行われているんだ」
「そして書かれたことが確実になるデスノートで失敗させるにはどうする?」
 そんなの白夜さんがわざとミスをしなければ…ってまさか。
「白夜さんは狩魔豪をわざと生かしたの?」
 真宵ちゃんも気付いたようだ。なんかうすうすそんな感じはしてたんだよな。
「でもどうしてそのかるまごうとかいう人を生かしたんですか?その人悪い人だったんでしょう」
 春美ちゃんのいう通りだ。狩魔豪は御剣のお父さんを殺した男だ。その罪で死刑になったのなら、その処刑をわざと失敗させる権限が白夜さんにあるのか?狩魔豪は明らかに有罪だったじゃないか。
「白夜さんは犯した罪だけを見て人を裁くわけじゃない。それはオレを今まで捕まえようとしないことからもわかるだろう」
 それって空悟君とは長い付き合いだからじゃないのか?前に渡されたヘルジョーカーライジングとかいう小冊子に出てた大学生って白夜さんだったんだろう。
「捕まえても世のためにならないからでしょう」
 紫音ちゃんが意味深な事を言った。それってどういうことだ?捕まえないと被害者が増えるじゃないか。
「なに言ってんだよ。ヘルジョーカーの被害者は全員卑怯な手を使って美術品を手に入れたやつらだろう」
「その被害者が減るってことは、それだけ自分の私腹を肥やすために手を汚すやつらが野放しになるだろ」
 確かにそうだな。言われるまで考えてなかったよ。つまり白夜さんが狩魔豪を助けたのはなぜなんだ?

「あの人はこの15年間ずっと罪を償うために過ごしてきた。そして敗北した上に逮捕されるという罰まで受けたんだ。今更命を奪おうとは思わないさ」
 言ってる意味がよくわからない。罪を償う気があるならどうして初めから自首しなかったんだ。
「それは御剣検事の父親を殺した自分のカンペキを打ち砕く人が出てこなかったからでしょう。だから御剣検事を自分のカンペキを受け継いだ弟子にしたんじゃないでしょうか。その弟子を倒せる人なら自分を倒せるし、自分の弟子のカンペキも打ち砕けると信じていたんでしょう」
 なんか信じられない話だな。狩魔豪が御剣を育てたのは、自分の経歴に傷をつけた人の息子に、その人が嫌う自分のやり方を叩き込むことで復讐になると考えたからじゃないのか?とても自分が裁かれることを望んでいたとは思えないんだけど。

「そもそも自分で償う気がなければあれは時効が迫るまで解決しないなんてことはなかった」
「むしろ最初から未解決になんてなるはずがなかったんだ。狩魔豪に罪を逃れようとする気があったならな」
 無限君と零樹君がいきなり話に入ってきた。一体無限君と零樹君は何が言いたいんだ?
「狩魔豪は他の犯人を仕立て上げることが出来たっていいたいの?」
 紫音ちゃんが言うことに無限君と零樹君はうなずいた。
「ああ。そうだ。狩魔豪が本気で罪を逃れる気があったならな」
「もしあのじいさんが本気だったら灰根がやったことにだって出来たんだ」
 え?でも灰根さんってあの時心神喪失ってことになってたから無罪になってたんじゃないのか?
「考えてもみろ。確かに法律に心神喪失のやつは罰せられないとは書いてあるよ。でもそれで誰かを殺したって言う事実は消えないだろ。つまりあの事件を『手を下したのは灰根だったが、心神喪失のせいで刑罰を下すことはできない』っていう形で終わらせてもよかったんだ。犯人が心神喪失だから自白はとれないけど、現場の状況と、権威ある綾里家の霊媒術を根拠にしとけばよかっただろ。しかも灰根は心神喪失ということになってたから、それを否定する根拠はなかっただろうからな」
 確かに空悟君の言うとおりだ。心神喪失で罪には問えなかったとしても、手を下したのは灰根さんだということにもできないないことはない。でも狩魔豪に相手が心神喪失だという手を使ってくるなんて予測がついたとは思えないだろ。
「それは予測してなかっただろうな。疑問はまだある。なんで狩魔豪が担当検事に名乗り出なかったんだ?最初から検事として灰根を叩き潰しとけばよかっただろ」
 その時はまだ狩魔豪は肩に受けた銃弾のせいで休暇をとってたんじゃないか?
「多分警察が霊媒という最終手段をとろうとするころには休暇を終えてたんじゃないの?そこまで早く霊媒に頼ろうとはしてなかったはずだからね」
 そりゃそこまで警察のプライド低くないだろうな。よっぽどせっぱつまってないと霊媒なんて手段使わないだろうな。白夜さんが言ってるから説得力がある。これが吉良警部だと単なる見栄に聞こえるんだろうな。

「仮に犯人が灰根じゃなかったとしよう。それだったらもっと楽に復讐できる方法があるだろ」
 もっと楽に復讐する方法?それって一体どういうことだ?
「わからないか?密室に人が3人いて、1人は殺されている」
「そのうちの1人が犯人じゃないとしたらどういうことになる?」
 当然残った1人が犯人ってことに…ま、まさか。
「御剣検事がお父さんを殺したことにもできたってこと?」
 そういうことになる。でもそれってムリじゃないか?あいつにはお父さんを殺す理由なんて
「そんなの簡単だ。御剣検事の悪夢を、「現実」の物として立証してしまえばそれですむ話だろ。狩魔豪ならそんなこと朝飯前だ」
 それって、御剣のお父さんが灰根さんに襲われるのを見て、銃を投げたら弾が暴発して、そのせいでお父さんが死んでしまったことにするってことか。確かにこれ以上の復讐はないだろうな。自分の息子が自分を殺したという「事実」を一生背負わされることになる。まだ小学生だし、正当防衛も認められるかもしれないけど、罪悪感は一生残ることになるからな。

「まあ狩魔豪を生かした理由の説明はこれくらいでいいだろ。それよりもどうしてあいつがクリムゾンジャックに事件の証人がいることを知らなかったのかが気になる」
 白夜さんに強引に話を打ち切られた気がするけど、それは確かに気になるな。どうして赤坂っていう検事から話が伝わってなかったんだ?
「カール・ムアッグウォーがなんとなく顔を合わせづらいと思うのならわかるけどな」
「それでも誰かが連絡ぐらい入れて来るだろ。いたことさえ知らないのはおかしい」
「赤坂検事は狩魔豪が生きてること自体知らないはずだから、避けてるはずはないけど」
 謎賀ツインズと紫音ちゃんが息を合わせて考えを述べているが、悪いけどぼくにはさっぱりわけがわからない。なんで狩魔豪は赤坂検事に顔を合わせづらいんだよ。
「知らないのか?赤坂検事とバッテリー組んでたのって狩魔豪だぞ」
 そうだったのか。なんとなく予想はついてたけどな。だってそうだろ。巧の球を捕れるのは豪だけだからな。
「それは知らないとわからないと思うよ。でもなんで情報が伝わってないんだろう?」
 確かにおかしいよな。もしかしてそのケガ人を個人的に見舞いに行ったのかもしれないな。そこにぼくたちが来たからとっさに証人として呼ぶ可能性があると言ったのかもしれない。でもそれだとなんでごまかしたのかわからない。わざわざ隠さなきゃいけない理由があったのか?
「まさかね。いややっぱりそんなことないか」
 もしかして白夜さんには何か心あたりがあるのか?
「それは調べてみないとなんとも言えないだろ。早く行ったらいいだろ」
 なにかうまくはぐらかされた気もするな。確かに早く動いたほうがいい。まずは茜ちゃんを迎えにいくついでに現場でも見ておくか。ぼくたちは留置所を出て、体が浮いているような感覚になりながら現場に行くことにした。

                つづく
  
 
  
 
■作者からのメッセージ
次回で病院に行きます。本当は今回で病院に行ってもよかったのですが、長くなりそうだったので分けることにしました。

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