Memory of Blue Shadow
作者: 10join   2008年07月21日(月) 13時18分10秒公開   ID:66HwSpSwEOQ
こうして意識を失うのも3度目だな。あの男から頭を殴られて、血を流しながらわけもわからず這って、ついに力がつきようとしている時に、私はなぜか冷静にそんなことを考えていた。それと同時に目が覚めた後の悪夢のような経験もいやでも思い出すことになってしまった。

 1度意識を失った時、私は手に血に染まったナイフを握っていた。周りには何人か血を大量に流しながら倒れていた。私はわけがわからないまま警察に捕まった。状況だけを見れば私が犯人にしか思えなかったからだ。私にその時の記憶がないと言ってもだれも信用せず、取調べはしつこくなっていくばかりだった。

 2度目は警察署でのことだった。あまりにもしつこすぎる取調べに耐え切れなくなった私は、なぜか押収されなかったナイフを持って逃げ出した。無我夢中で駆け込んだ部屋には娘より少し年上ぐらいの女の子がいて、それからすぐ検事がかけつけた。そして停電の中、誰かに検事がつきとばされて、それに巻き込まれて私も気を失った。そして目を覚ました時には私の持っていたナイフが検事に突き刺さっていた。これで前の大量殺人事件の犯人が私しかいないということになり、死んだ検事の後を引き継いだ若い検事の手によって私は有罪になった。そして当然のように死刑判決が下された。

 どうして私があの時死ななかったのかはわからない。なぜか絞首刑の時に床が開かなかったのだ。それでその場にいた若い刑事に聞いてみた。
「最近死刑が失敗することが多いんだよね。それにはなんらかの理由があるみたいだけど。今回は最後の事件の証拠が捏造くさかったって所だろう。そんなに疑わしい状況で娘と分かれさせるわけにはいけないっていう気まぐれな神様でもいたんじゃないの?」
 なにやら含んだような笑顔でそう言った。この刑事は何か知ってるのか?そうも思ったがそんなことはどうでもよかった。ただまた娘と暮らせることがうれしかった。そしてその若い刑事が言うとおりあの事件の証拠が捏造されたものだということが証明された。もう故人ということになっている私にとってはどうでもいいことかもしれないが。

 そんなことを考えているうちに意識がはっきりしてきた。どうやらここは病院のようだ。傷が思ったより浅かったのか、医者の腕がよかったのかはよくわからない。とにかく一命をとりとめたようだ。そんなことを考えているうちにドアを開ける音がした。開けたのが医者なのか、私の様子を心配した娘か、大穴で検事である義父なのかはわからない。どちらにしろろくなことはないだろうと思いながら、ドアを開けた人が入ってくるのを待つことにした。

                 おわり
■作者からのメッセージ
クリムゾンジャックの所にいる「ある人物」視点の話です。誰かはタイトルと内容からだいたいわかると思います。少し設定捏造してますけど。

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