逆転NOTE8
作者: 10join   2008年07月09日(水) 17時45分39秒公開   ID:66HwSpSwEOQ
「そもそもどうして白夜がやつが殺されてから10分後に都合よく現場にいたと思うんだ?」
 吉良警部は根本的なことを言ってきた。ぼくにとってはなにをいまさらという感じだ。カール・ムアッグウォーもとっくの昔にわかっていることだろう。
「偶然じゃないんですか?あの大逮捕劇と同じように」
 ただ一人裁判長はわかっていないようだった。本気であの大逮捕劇が偶然だと思っているらしい。
「偶然でイトノコ刑事があんな大事件の犯人を捕まえられるわけないのにね」
 それはひどいぞ真宵ちゃん。イトノコ刑事だって犯人を逮捕することだけならできるぞ。まあ今の場合は犯人の居場所をつきとめられるわけないという意味だけど。
「その大逮捕劇もこの事件もデスノートが関連しているのだ。それくらい察しろ!」
 カール・ムアッグウォーの気持ちもよくわかる。でもまだ証拠を見てないんだからそこまで怒らなくてもいいだろ。
「つ、つまりデスノートで操って逮捕したというわけですか?それは少しあれでは…」
「じゃあなんだ。あんたはあのクソどもが時効の壁を口実に罪を免れるのを黙って見てたほうがよかったっていうのか?」
 裁判長の言葉に吉良警部がすごい勢いで反論してきた。
「もちろんあいつも普通に逮捕できるならそうしただろう。だけどこのままじゃ時効になってしまうからな。だからそこまで手柄を立ててないやつらに逮捕させるように仕向けたんだ。そいつらが警察で肩身のせまい思いをしないですむようにな」
 もしかして吉良警部はその大逮捕劇から外されたのだろうか。それで拗ねてこんな憎まれ口を叩いているってことなんだろうか。
「ハ、それはない。私は多くの事件の真犯人を逮捕してるし、ある事件の捜査で忙しかったからな。それに白夜はそんな風に手柄を与えられることを私のプライドが許さないということも知っている。だから私がそのくだらない茶番に参加しなかったのは当然だ」
 なんで吉良警部はここまで自画自賛できるんだろう。白夜さんより地位が低いのに。
「おそらく上の連中はこんなエリート気取りでイヤミなやつが上にいたら周りの士気が下がると考えたんだろう。それでも能力的には白夜と同レベル程度だからそれなりのと警察では上の連中が気に入ったやつだけが出世するという噂が立つ。だから私をやつより少し下の警部に任命したんだろう。能力的な開きはそこまでない」
 吉良警部って自分の性格を自覚してたんだな。でも一見冷静に上の人たちの思惑を分析しているようでいて、自分の能力がかなり高いんだって示したいだけのようにしか見えないのは、ぼくの見方がひねくれているのか?いや多分吉良警部のことを知ってる人ならみんなそう思うんだろう。

「そんなことはどうでもいいですからはやく法廷の人たちの妄想を加速するとかいうものを出してください」
 このまま吉良警部の自慢にしか聞こえないような話に付き合っているひまはない。まあ吉良警部が言っているものには大体の見当はついてるんだけどな。
「そこまでいうならしかたない。これを見てどう判断するのかは自由だがな」
 どこまでもえらそうな態度で吉良警部がとりだしたのは一枚の紙だった。そりゃ現物を証拠として渡せば裁判長あたりが自分より髪が多いとか言う理由で弟を殺さないとも限らないからな。内容がわかっていればコピーしたもののほうがよっぽど安全だろう。
「なにかものすごく失礼なことを考えられたような気がしますがとりあえず受理します」

デスノートのページを法廷記録にくわえた
デスノートのページ 所々消されている名前がある。

「なんで所々消されてる名前があるの?」
 それは多分その人が逮捕された時点で名前を消したからだろう。一度捕まえたら死刑判決を受けるまで待っていても捕まることはない。だからわざわざ指定した日時に殺させることはないって判断したんだろう。
「どうでもいいから肝心な所を早く言え」
 そんなこと作者に言え。なんでわざわざここで区切るんだよ。
「明日につなげるための文字数稼ぎじゃないの?」
 それなら始めから今日じゃなくて明日に書き始めろよ。1つしか授業いれてないじゃないか。まあ今更文句を言ってもしょうがない。はやく内容を伝えないとな。

詳細はRボタンで…

 なんだよRボタンって。だれがゲームの操作説明しろって言ったんだ。
「そうですぞ。この書き方はおかしいです」
 さすがに裁判長も作者が書いてることがおかしいということに気付いているようだ。というよりこれは気付かないほうが変だろ。
「ここはむしろLボタンにしておくべきでしょう」
 そうそう…って違う。だれもデスノートだからLボタンじゃないとおかしいなんて言ってないよ。というよりこの話L全然関係してないだろう。もうこんなところでひっぱってもしょうがない。一番重要な所は名前が消されている他の爆破事件の犯人たちの死因なんかじゃない。被害者はどんな状況で逮捕されるのか、どんな死因が書かれているのか、それこそがこの場で問題となるところだ。ここに書かれていることが全てだ。果たしてその内容はと言うと…

獏原銀次 3月6日午後2時に友人を爆破事件で失ったものすごく暗い刑事に逮捕される。そして3月21日隠し持っていた爆弾で独房の壁を吹き飛ばして脱獄しようとしたが、巻き込まれて爆死。判別不能なまでに粉々になった。

 どうせ消すつもりだったとは言え好き勝手書いてるな。でもわざわざ判別不能なまでに粉々にする必要はないと思うぞ。
「た、確かに被害者の名前がありますな。これは決定的な証拠と言えるでしょう!」
「名前だけを見たらな。弁護人何か異議はあるか?」
 カール・ムアッグウォーはかなり興奮している様子の裁判長にあえて合わせてやるように言った。おそらくカール・ムアッグウォーは異議しかないということがわかっててこんなことを言ってるんだろう。

「異議あり!被害者の名前があることは今重要じゃないでしょう。むしろ林ビル爆破事件の犯人を一網打尽にする計画なのに被害者の名前がないなんてことはありえません。今気にしなければならないことは死んだ時の状況です。」
「死んだ時の状況?」
 裁判長は本気でわからないらしい。どうやらものわすれが激しいようだ。そろそろ定年だったりしないのか?まあ説明を聞けばわかるだろう。
「被害者の解剖記録を見てください。彼はデスノートに操られて逮捕されるはずだった3月6日の2時より前の1時50分に殺されてます。しかもこのノートには撲殺されるなんてこと一言も書かれてません。これは明らかに矛盾しています」
 いくらなんでも正確なはずのデスノートがここまで狂うことはありえないだろう。

「まだ問題があります。くらえ!」
 そういって指し示したのは白夜さんの証言書だ。ここにも矛盾しているところがある。
「ここに書かれていることと、吉良警部の証言から判断する限り爆弾はそこまで強力ではなかったのでしょう。でももしデスノートの通り独房の壁を吹き飛ばし、巻き込まれて判別不能なほど粉々になるんだったら相当強力な爆弾を持ってないといけません」
 ここまでこのデスノートと矛盾しているとなると考えられることは一つだろう。

「このページに爆破事件の犯行グループの名前を書く以前にデスノートに名前を書いた人がいるってこと?」
 真宵ちゃんはぼくが言いたいことをちゃんとわかっているようだ。
「異議あり!白夜が以前に書いたものを隠し持っているかもしれないではないか」
 その可能性はないわけではない。でもそれだとおかしいことが出てくる。
「異議あり!他のメンバーはこの逮捕劇で命を失ってません。どうしてリーダーの名前だけ別に書く必要があったんですか?」
「異議あり!白夜がやつに個人的な恨みを持っていたかもしれないだろうが!」
「異議あり!それならどうして直接殺せるようにしなかったんですか?誰かに殺させてもデスノートの力だけで命を奪うのとあまり変わりないでしょう」
「異議を認めます。でもそれなら誰が書いたのでしょう」
 裁判長の疑問も最もだ。白夜さんが書いたんじゃなかったら一体誰が書いたのかと言う話になる。おそらく実行犯は爆破事件の犯人に個人的な恨みを抱いていたんだろう。そして他の犯行グループのメンバーは誰も殺されてない。つまり犯人は複数犯ではなく、単独犯ということになる。デスノートを書いた人も個人的な恨みを抱いていたんだとすると…

「実行犯が白夜さんより先にデスノートを書いたってことになるよね」
 大正解だよ真宵ちゃん。よくわかってるじゃないか。
「それなら実行犯をつきとめる必要がありますね。なにか手がかりはないのですか?」
「それはそこのハッタリ弁護士が知ってるはずだ」
 吉良警部が自信たっぷりに言った。そりゃ現場の責任者なんだから知ってるだろう。
「おもしろい。見せてもらおうではないか」
 カール・ムアッグウォーに言われなくても出すつもりだ。
「くらえ!証拠はこいつです」
「これは凶器ですか。被害者の血がついているようですね。これがどうかしましたか?」
 そこについているのが被害者の血だけならどうということもないんだけどね。
「この凶器の鉄の棒には被害者の血の他に正体不明の人の血もついているのです」
「それでそいつは見つかったのか?茜を連れ出していたようだけど」
 吉良警部はそのことを知ってたのか。それでも止めなかったのは捜査が進むと思ったからなのだろうか。
「ええ。クリムゾンジャック先生の所にいました。重傷を負っていて昨日は話が聞けませんでした」
「クリムゾンジャックだと?」
 カール・ムアッグウォーが苦虫を噛み潰したような顔で言った。過去に悪い思い出でもあるのかもしれない。でもぼくが気になってるのはそこじゃない。
「そこに赤坂という検事がいました。聞いてないんですか?」
「巧がクリムゾンジャックのところにいたのか!?」
 カール・ムアッグウォーはかなり狼狽したようだった。どうして赤坂検事がいたと聞いただけでここまで焦っているんだろうか。
「そ、その赤坂?とかいう検事からは何も聞いてない。ワガハイと話す機会がなかったからな」
 名前で呼んでおきながら今更そんなことを言っていても説得力ないな。

「とにかく今の時点では審理を続けても意味がないようですな。カール・ムアッグウォー検事は主にその承認の手配、成歩堂君は他に手がかりがないか調べておいてください」
 何かひっかかることはあったけど、これ以上意味がないという裁判長の判断は正しい。
「わかりました」
「心得た」
カッ!
「では本日はこれにて閉廷!」
 今日はなんとか乗り切れた。明日までになんとか手がかりをつかんでおかないとな。きっと何かつかめるだろう。被告人控え室で話すこともないので、ぼくたちは留置所にもどることにした。白夜さんに聞きたいこともあるしな。
   
                    
つづく
 
 

 
 
 
 
 

■作者からのメッセージ
次からもっと核心にせまる予定です。

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