逆転NOTE3
作者: 10join   2008年05月25日(日) 14時51分31秒公開   ID:7MqnqBw3Yjs
同日 午前9時21分 林ビル跡地
 ひょっとしたら公道最速をたたき出してしまったかもしれないほどの超スピードで、ぼくたちは現場に到着した。平衡感覚が全くつかめない。ぼくはかなりおぼつかない足取りで現場に足を踏み入れることにした。
「ここが林ビル跡地かあ。」
「かなりひどいですね。」
 真宵ちゃんと春美ちゃんは目の前の光景をうまく言葉にできないみたいだ。まあそれが普通の反応だろう。ガレキの山に血がこびりつき、所々に花が供えられてるのを見れば、ここで起きた惨劇のことをいやでも想像してしまうからだ。
「おい無限と零樹。お前ら大丈夫か?なんか顔色悪いぞ。」
 空悟君が言うとおり無限君と零樹君の顔色はかなり悪かった。それに微かに震えているように見えた。
「大丈夫。眼が少し疲れただけだ。」
「こういうことは慣れてる。」
 そう言つつ無限君は左目を、零樹君は右目を押さえている。そしてそのままギ○スでも発動するかのような動作で押さえた眼の紫色のカラーコンタクトを外した。そしてこの世のどんな赤より鮮やかな赤色をした眼が姿を現した。
「本当に大丈夫?ここってやっぱり幽霊多いんでしょ。」
 紫音ちゃんが心配そうに言った。実は無限君と零樹君の赤い眼は死者の魂が見えるらしい。明らかにどこかの心霊探偵の影響を受けたようにしか思えない設定のような気もするが、そこは放っておこう。それにしてもこんなに早く赤い眼を出すとは思ってなかったな。
「赤い眼は本気になった時に出すらしいですよ。」
 星歌さんが本当なのかよくわからないことを言った。それじゃ無限君が捕まった時零樹君は本気じゃなかったのか?
『読んでもない物の設定を取り込めるわけがないだろ。』
 作者は開き直っているようだ。まあそんなことはこの際どうでもいい。早く捜査を始てしまおう。

「あ。またあんたッスか。よく会うッスね。」
 現場に行くといつものようにイトノコ刑事がいた。ぼくを見て本気で驚いているようだった。まさか給料が少なくて電気代が払えなくなったなんてことはないよな。
「いくらイトノコ刑事でもそれはないでしょう。朝から捜査してたのでテレビが見れなかったんじゃないですか?」
 なぜかいた茜ちゃんが言った。多分今までの小説で出ていたから普通に使ってるんだろう。まあ作者ならどうにか辻褄合わせをするのかもしれないけど。
「…そ、その通りッス。よくわかったッスね。」
 今の間は一体なんなんだろう。まさか本当に電気代を止められているのか?確かにイトノコ刑事の給料を見る限りだとありえないとは言い切れないかもしれない。そんなことより手がかりを探したほうがいいのかもしれない。

「ね、ねえなるほどくん。凶器の鉄の棒ってこれなのかな。」
 そう言って真宵ちゃんが指したのは曲がった鉄の棒だった。それになぜか溶けたように見える。もしかして爆破事件に巻き込まれたのかもしれない。先端の方には血がついている。多分凶器で間違いないだろう。
「多分そうですね。被害者の血がちゃんとついてましたし。後誰のだかわからない血と、事件に関係ないであろう指紋がついてます。」
 さすが茜ちゃんだ。まさかそこまで調べているとは思ってなかった。それにしてもなんでその指紋が事件に関係ないだろうなんて言えるんだろう?
「だってこの指紋かなり古いものですよ。やけに小さいので多分子供のものなんじゃないんでしょうか。」
 指紋って新しいとか古いとかわかるものなのか?
『そんなの理系じゃないんだからわかるわけないだろう。』
 確かに作者は家で唯一の文系だったな。まあ細かいことは置いといて法廷記録にくわえておくか。

鉄の棒を法廷記録にくわえた
鉄の棒 凶器。被害者と誰かの血が付着している。古い小さな指紋がついている。

 それにしても爆弾の部品とかは残っていないのかな。もしかして完全に吹き飛んだのか?
「爆発物処理班が一応調べるために持っていったんです。」
 爆発物処理班ってそこまで調べるんだ。まあよく知らないけどいいや。あと他に調べるところはっと…

ゾクッ。ぼくは何か寒気を感じた。まるで誰かに見られているような気がしたからだ。
どうやら真宵ちゃんも誰かに見られているような気がしたらしい。少し不安そうな顔をしていた。
「ね、ねえなるほどくん。なんか怖いんだけど。」
「大丈夫。何があっても君はぼくが守るから。」
「なるほどくん…」
「真宵ちゃん…」
「あんたたちくっつくのはやめてくれ。」
「捜査の邪魔になることくらい考えろ。」
 無限君と零樹君が冷静につっこんできた。仕方ないだろ。真宵ちゃんを不安にさせるわけにはいかないだろ。
「そのわりには自然に抱きしめてたな。あんたら一体どこまでいってるんだ?」
 空悟君。その質問はちょっとあれなんじゃないか?
「き、キスまでだよ。」
 答えなくていいんだよ真宵ちゃん。…まあぼくにはウソをついてないからいいけど。
「へーそんなこと全然しらなかったぜー。」
「いつの間にそんな関係になってんだー?」
 無限君と零樹君がなぜか棒読みなのは絶賛スルーさせてもらう。
「星歌さんはどうなんですか?」
「私もキスまでです。」
 …まあそんなことどうでもいいや。別に直接事件に関係することはないだろう。

「は、こんな低レベルなやつらが白夜の弁護をするとは。あいつの器もたかが知れてるな。」
 突然後ろからいやみったらしいメガネをかけた男が話しかけてきた。誰なんだこいつ。
「私は吉良真。警部だ。」
 いったいどっちなんだと考えてしまったぼくは変なんだろうか?
「青き正常なる反応じゃないの?」
 それ多分字も使い方も間違ってると思う。まあ現在公開中のファンタジー映画に出てくるライオンと同じ名前にしなかっただけマシなのかもしれない。
「それで一体なんのようですか吉良警部。今捜査してるんですけど。」
 星歌さんが「警部」の部分にものすごいアクセントをつけて言った。
「ふん。ムダなあがきだな。あいつがやったに決まってるだろう。」
「その自信は一体どこから来るんですか?」
 紫音ちゃんが不快感を隠そうともしないで尋ねた。
「あいつがノートを使って警視になるくらいの卑劣な男だからさ。出なければこのエリートの私より早く出世できるわけがないだろう。」
 つまり白夜さんが自分より高い地位にいるからひがんでるだけか。どうやったらそこまで自分の能力を過信できるんだろう。
「は。せいぜいがんばるんだな。どうせ弁護側に有利な証拠や証人なんて存在しないだろうがな。」
 一通りイヤミを言って吉良警部は去っていった。もしかして白夜さんのことを気にくわないって思ってるのはあの人なのか?まあいい。他に手がかりになるような物はあるのか?

「あれ。こんな所に血の跡が点々と続いてるよ。」
 そう言われたので見てみると、確かに血の跡が続いていた。そういえばテープが被害者の物しかない。もしかしてあの棒でたたかれた誰かのものあなのだろうか。
「可能性はありますね。もしかしたらなにか手がかりがあるかもしれませんね。」 
 なぜかノリノリで茜ちゃんが言った。もしかしてついてくるつもりか?まあいいや。茜ちゃんなら十分戦力になるだろう。ぼくたちは新たな手がかりを求めて血痕をたどってみることにした。

                                    つづく 
 
■作者からのメッセージ
次が終わったら法廷に入ります。

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