逆転NOTE2
作者: 10join   2008年05月17日(土) 06時56分52秒公開   ID:/SEyFK9a75Q
同日 午前9時 留置所
「やあ。よく来てくれたね。」
 白夜さんはどことなく疲れたような調子で言った。当たり前だけど取り調べされるのには慣れていないようだ。白夜さんの言葉で紫音ちゃんと星歌さんもぼくが来たことに気づいたようだ。
「おはようございます成歩堂さん。」
「お忙しいところ白夜さんのために来てくれてありがとうございます。」
 気にしなくていいですよ星歌さん。ぼくも白夜さんが捕まったなんて聞いて黙ってられませんから。
「いいんです。どうせヒマですし。」
「依頼がなかったら金欠になる所でした。」
 春美ちゃんも真宵ちゃんもそんなことはっきり言わないでくれ。確かにもし牙琉弁護士が代わりに依頼を受けることになってたら間違いなく生活できない状態になってたことは認めるけどさ。それを言っちゃだめでしょ。

「そんなことより事件のことを教えてくれないか?」
「そもそもなんであんたが捕まってるんだよ?」
「まあ大体予想はできるけど。」
 無限君と零樹君と空悟君が言った。確かにどうして捕まることになったのか気になる。警察の幹部を捕まるからにはよほどの事情があるんだろうな。
「刑事が来たときに現場にぼくたちしかいなかったからかな。その刑事がぼくのことを気に食わないと思ってるのを抜きにしてもぼくを疑うのは無理がないのかもね。」
 なんで白夜さんはその刑事が自分のことをよく思ってないなんてことまで把握してるんだろうね。それにしてもぼくたちってことはやっぱり星歌さんもいたんだな。捕まらなかったのはラッキーだったのかもしれない。
「私は白夜さんと離れ離れになるぐらいなら一緒に捕まったほうがよかったです。」
「そんなこと言ったらだめだよ。それにすぐ出られるさ。ぼくたちの愛の絆はそんなことで断ち切れるものじゃない。」
「白夜さん…」
 いいかげんこの空気に耐えられなくなってきた。なんか二人の世界になっているような気がする。それに変なプレッシャーがかかってきているように感じる。これでもし有罪なんかになったらぼくはろくな死に方をしないんだろうな。

「わかった。説明するよ。君たちは昨日の逮捕劇を知ってるよね。」
「もちろん知っています。林ビル爆破事件の犯人がほとんど捕まったっていう話でしょう。あなたはそのリーダーを殺した容疑で今ここにいるんですよね。」
 やっとセリフが出てきた。法廷以外ではヘタすればセリフゼロって事態も起こりかねないから心配だったんだよ。
「実はその逮捕劇はデスノートで犯人の行動を操って仕組んだことだったんだ。」
 そうだったのか。今までうまく逃げ回っていた犯行グループが時効直前になって相次いで捕まったのは少し変だと思ってたんだ。
「まああくまで非常手段だけどね。ぼくはリーダーの逮捕計画が狂ったら修正できるように逮捕する予定の林ビルに向かっていたんだ。」
 なるほど。自分が惨劇を起こした場所で逮捕されるように仕組んだわけか。それにしても修正ってどういうことだ?デスノートは狂うことはないんじゃなかったのか?
「確かに犯人の行動は狂うことはないよ。でもその場所に警官がいないとこの逮捕劇は失敗するんだ。だからいなかった場合修正できるようにする必要があったんだ。」
 でも指示さえしておけばその場所にいるんじゃないのか?
「そうできない事情があったんでね。それでも計画に入れとけば因縁を断ち切ることもできると思ったんでね。」
 どうも込み入った事情があるらしい。その警官のことはスルーしてもいいのかもしれないな。
「それで林ビルに向かってたら星歌がそのリーダーが死んだのに気づいたってわけさ。」
 気づいたって現場に行く途中でか?一体どうやって?
「そんなの死神の眼に決まってるだろ。」
「他に何があるっていうのよ。」
 白夜さんと星歌さんのデスノートについているバールとリリスが答えた。確かに死神の眼なら寿命と名前が消えた時点で死んだってわかるしな。でもリーダーの寿命が自然に消えたわけではないだろう。白夜さんならその前にこの逮捕劇を行っているはず。ということは…

「この事件にはデスノートが関わってるってことさ。正直こんなことになるなんて思ってなかったけどな。」
 それはそうだ。デスノートを使うんだったらどう見ても殺人事件だと思えるような状況を作る必要はないからな。つまり何らかの理由があったということだ。それにしてもどんなふうに死んでたんですか?
「後頭部を強打されて死んでいた。でもくわしく調べるヒマなんてなかったよ。近くで時計の音がするのに気がついたからね。」
 そ、それってまさか…
「ああ。時限爆弾だ。ぼくはとっさに星歌をかばったけど大したことはなかったよ。ちょうど螺旋の爆弾娘が肋骨が一本欠けてるのを隠すために肋骨を折ったのと同じような感じかな。巻き込まれても死ぬことはなかっただろうね。」
 そんな例えされても読んだ人にしかわからないだろ。つまりその爆弾は誰かを巻き込んで殺すためじゃなくて何か別の目的があったってことですか?
「おそらく警察に知らせるためと、容疑者に相手が爆弾を持って襲い掛かってきたからとっさに殴ったとか言って正当防衛を主張させることで事件をうやむやなまま終わらせることを狙ったんだろう。正直ぼくが死んだ後に時限爆弾が仕掛けられたなんて口走らなければこのまま風化してたかもしれないね。」
 確かにそうかもしれない。つまり白夜さんは実行犯とデスノートに書いた犯人と両方の面で疑われてるってわけか。
「実際デスノートに書いてたことと似てないこともないからね。もちろんデスノートは没収されたから証言書を書こう。」

白夜の証言書を法廷記録にくわえた。

 別にこの表示いらなくないか?まあいい。とにかく今白夜さんに聞くことはこのぐらいでいいだろう。これは早く殺害現場に向かったほうがいいのかもしれないな。
「私も一緒に行きます。」
 星歌さんが決意をみなぎらせた目で言った。そりゃ恋人の危機だから当然かもしれない。
「ああ。成歩堂君の助けになってくれ。ぼくの命運は彼が握ってるんだからね。最もぼくは昔から君に全てを捧げてるんだけど。」
 もうつっこまないことにしよう。これではさすがに多すぎたので無限君と零樹君と紫音ちゃんと星歌さんは無限君が乗ってきたらしい車で向かうことになった。一体どっちに乗ったほうが酔わなくてすむんだろう。
「そんなことよりはやく乗りましょう。」
「ジェットコースターみたいで楽しいよ。」
 真宵ちゃんはぼくがジェットコースターが苦手なことを知ってて言ってんのか?ぼくは酔い止めを持ってくればよかったと後悔しながら、超高速で現場に向かうことになった。

                 つづく
■作者からのメッセージ
次回では現場に行きます。

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