逆転NOTEプロローグ
作者: 10join   2008年04月27日(日) 21時55分01秒公開   ID:dS02XOgEkHc
3月6日 午後1時48分 パトカー内
 ぼくは白夜。警視だ。苗字は誰も読めないだろうからあえて書かない。それにしてもこれは時間が進んだのか戻ったのかどっちなんだろう。
『なんのことだ?今までの小説の日付に何か問題あったか?』
 作者はあくまでもとぼける気だ。まあいい。どうせ話してもネタバレになるだけだし、これ以上文字数稼ぎに貢献する筋合いもないからね。
「そんなことより現場までどれくらいかかるんですか?」
 そう聞いてきたのは恋人の姫野星歌だ。
「デスノートによると後12分ぐらいでつくみたいだ。」
「そうですか。早くあの時効寸前になってる事件の首謀者を捕まえたいですね。」

 死神との邂逅を読めば大体わかるとは思うけど、ぼくは世間ではキラと呼ばれて犯罪者を裁いていることになっている。実際はほとんど神とか言われていい気になってるその他大勢が犯罪者を裁く場合が多い。そのキラが人を殺す手段がデスノートだ。人の顔と名前さえわかれば殺せる上に、なかなか書いた人間が特定できないために、ぼくにキラ法という法律を作り、違反した人だけに罰を与えるようにしたというのが警察内部のデスノート所持者の意見だ。
「デスノートって時間とか死ぬまでの行動を操れるんでしたよね。」
 パトカーの運転手が聞いてきた。ちなみに警察内でデスノートのことを知らない人は5本の指に入るぐらいにしかいない。ぼくと星歌の関係と同じくらいよく知られていることだ。
「そう。そして人の行動を操れるという特性を使ったのがこの逮捕劇ってわけさ。」
 まあもっと人を殺す危険がある場合とか、時効がせまってる時ぐらいにしか使わないんだけどさ。正直時効で刑を免れるなんて遺族とかの思いを考えるとムナクソが悪くなる。最もこの方法は名前と顔がわかっていない限り使えない。それにはっきりやったとわからない限り行わない。そして今デスノートを使って犯人を逮捕しようとしている事件こそが…

「林ビル爆破事件ですね。」
 その通り。死者が1万2467人出たという大惨劇で、けが人は7431人出たと言われている。その手口は1階に特大の爆弾を仕掛けて、それによって崩壊したビルに巻き込むというひどく残酷な手段だ。幸い犯人が爆弾を仕掛ける瞬間がなぜか壊れてなかった防犯カメラに映っていたおかげで犯行グループが判明したけど、まるでルーラかなんかを使ったような逃げ足の速さで、なかなか捕まえられなかった。たまに下っ端を捕まえたことはあったけど、どんなに取り調べても口を割らなかった。そんなこんなで気がついたら時効が迫っていたから分担して捕まえさせようと思ったわけだ。主にもっと功績をあげないと給料に響く人たちに逮捕を任せている。ぼくが今出動してるのは、理由があって逮捕の担当の人がその場にいるかわからないので、なにかあったらぼくたちがすぐ逮捕できるように書き換えるためだ。書き換えたら修正されるので、捕まえた人の名前はすぐに消して判決が出るまでそのままにすることにしている。一応裁判は受けさせてやらないとな。人にはその権利があるからな。
「これが終われば少しは休めるんでしょうか。このごろ少し体調が悪いんです。」
 確かにこの頃星歌は体調が悪いみたいだ。なんか少し吐きそうな気分になるらしい。どうも風邪じゃないみたいだ。ぼくには心当たりがなかった。
「それにしてもちゃんと逮捕できるんでしょうね。」
「大丈夫。デスノートに狂いはないから。」
 ぼくは安心しつつも、退屈を感じながらパトカーの後部座席に座っていた。

?月?日 ?時?分 ???
 その男は目の前にいる男を憎しみがこもっている目で見つめていた。手袋をしたその手には爆風でひしゃげたような鉄の棒を持っており、息を潜めていた。目の前の男は別の男がいるとは思わずに、ただそこにある廃墟を見つめていた。何年か前に壊れて何も建てられずにそのままで残されており、そこであった惨劇を物語っている。男はそれをチャンスと思い、静かにその男に近づいていった。
「やめろ!」
 そう言ってサングラスをかけた男が割って入ってきた。棒を持った男はすぐに入ってきた男の即頭部を張り倒した。殴られた男はかなりの出血をして、サングラスもはじけ飛んだため素顔があらわになっていた。殴った男はその顔を見て驚いたような顔をしたが、すぐに目的を思い出したらしく何かをポケットから取り出そうと慌てていた標的に棒を振り上げた。
「ぎゃああああああああああ!」
 末期の断末魔を上げながら狙われた男は死んでしまった。棒を持った男は一瞬割り込んできた男を見た。一瞬口封じをしようか迷っていたようだが
「べつに言いか。どうせすぐ死ぬだろうし、もし証言しても誰も信じないだろう。そうだ。そうに違いない。むしろこいつが証言台に立てるかどうかあやしいし。だって…」
 周りの気分を鬱にするような暗いオーラを放って、一人言を言いながら歩き去って行った。その場にはどこからともなく聞こえてくる時計のような音以外にはなんの音もしなかった。
『突然ですが星歌視点に移行します。』

同日 午後1時50分 パトカー内
「え?」
 私は気づいたらデスノートに書かれた時間に合わせたタイマーを止めて、声を漏らしてました。それほど自分の目に見えた物が信じられませんでした。
「どうしたんですか?急に声なんか上げて。」
 運転手さんが不思議そうな顔で聞いてきました。でもさすがに白夜さんは気がついたらしく、急に引き締まった顔で聞いてきました。
「まさかあいつが死んだのか?」
 やっぱり白夜さんはかっこいいですね。私は一瞬見とれてから白夜さんに報告した。
「はい。死神の眼に名前も寿命も映ってないので間違いありません。」
「え?でもまだデスノートに書いた時間じゃないですよね。」
 確かに寿命より早いのはもちろん、白夜さんのノートに書いた時間よりもはやくに亡くなっています。つまり…
「他のデスノート所持者の仕業か。まあ標的になるのもムリはない。あれだけ時効寸前って顔写真出しまくって報道してたからな。神気取りのやつらが葬って名を上げようとするのもムリはない。」
 私も同意見です。でもこの場合どうするんでしょう。書いた場所にいるとは限りませんし。
「多分そこで死んでるだろ。ぼくと美的センスが同じならあいつが惨劇を起こした場所で殺そうとするだろうしな。」
 ずいぶん適当な意見ですね。でも白夜さんが言ったらそう思えるから不思議ですね。
「とにかく現場に行ってみた方がいい。他にあてはないからな。」
 白夜さんはなぜか生き生きしていた。着いた場所でなにが起こるかわからないまま。
 
               つづく
■作者からのメッセージ
プロローグなので謎を残しておきました。これからどうなるかできれば楽しみにしてください。でもネーミングセンスには期待しなくてもいいです。

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