死神との邂逅
作者: 10join   2008年03月15日(土) 16時25分21秒公開   ID:lBGY4c4qTNg
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「どうしたんだ白夜。なんか覚悟を決めたような顔をしてるぞ。」
 バールの言う通り、ぼくには覚悟ができたようだ。ぼくは新たな決意を胸に家へと帰って行った。

「ほんとにいいのか白夜。お前法律ができたから上の意向に絶対従わなくちゃならなくなっちまったんだぞ。」
 確かにキラ法は国会をなぜか通過して、ついには国際法になって施行されてしまった。確かに表向きには何もできないように見えるだろう。
「大丈夫です。ちゃんと抜け穴もありますから。だって法律の内容考えたのぼくなんですから。」
 それを聞いて熊谷さんは驚いたようだった。そりゃ1人の刑事が勝手に考えた法律が国会で通ることは難しいだろうからな。
「ま、まさか誰を殺しても罰せられないとかお前は従わなくていいって決めたんじゃないだろうな。」
 熊谷さんの話はどうも飛躍し過ぎてる気がする。特にぼくだけ逮捕されないって言っても具体的な個人が従わなくていい法律なんてあるわけないだろう。
「違いますよ。キラ法は裁いていい人は明確に決められてるけど、裁かない人はデスノート所持者が決めていいようになってるんです。そのことは1文字も書いてませんから。」
 それを聞いて熊谷さんは少しはわかったような顔をした。
「つまり死刑囚を処刑しなくてもいいってわけか?」
「ええ。ようは冤罪の人とかがしななくてもいいってことです。」
 熊谷さんはなにやら感激したような顔をした。熊谷さんも真実が明らかにされないまま検事の手で有罪になって処刑台に送られていく人が多い事ではがゆい思いをしてたんだろう。でもバールは納得していないようだ。
「それは無理だ。人には最初から決められた寿命がある。死神の目で見た限りだったら死刑囚の寿命は死刑の日で終わっていた。例え冤罪だったとしてもな。」
 おそらくその意見は間違ってはいない。でもそれは死刑をする日が変更されていなかったらの話でしかない。
「お前死刑の日をずらす権限まであるのか?でもだからどうなるっていうんだ?」
 バールはまだわかっていないようだ。それはバールに法律の知識なんかないからな。でも熊谷さんは何かわかったようだった。
「そうか。死刑が失敗した場合罪が帳消しになって逃がされる。つまり死刑の日をずらしておけば、デスノートに書かなかったり、わざと名前を間違えたり、途中で消したりすればもう死刑で命を失うことはないということか。」
 そのとおり。しかも死刑囚の死に方はほとんど死刑だろうから寿命も伸びるだろうしな。
「今日確実に無罪のはずなのに有罪になって死刑判決を受けた人に刑を執行することになってるんです。もちろん日はずらしてあります。できるかどうか見てみましょう。」
 そしてぼくは試してみることにした。ぼくに無罪の人を救えるかという不安をのこしながら。
『ここで現在に行きます。』

現在
「それでどうなったんですかその人。」
 ぼくの恋人の星歌が尋ねた。ちなみに星歌はこの時まだ出会ってなかったので全く出て来ていない。
「もちろん死刑が失敗して釈放されたよ。バールでさえ寿命が伸びたことに驚いていたよ。」
 正直あの時あの人が死んでしまうかもしれないという不安は感じていたんだけどさ。
「それはよかったです。でもまさかキラ法が被告人や検事を傷つけないようにするためにできたなんて初めて知りました。てっきり死刑を手早く確実にするために誰かが作って、白夜さんが抜け穴をうまく見つけて人を救ってたのかと思いましたよ。」
 星歌がそう考えるのも無理はない。ぼくもデスノート所持者を法律で認めるなんて言われて警察の都合がいいように利用されるしかないとあきらめていた。でもあの日あの裁判を見て、狩魔豪の奥に潜む思いに気付いて思ったんだ。検事に自分が無罪の被告人を死刑台に送ってしまったという思いを抱かせないようにしたいって。だからぼくたちは死刑判決が出そうな事件を調べて、無罪の罪で死ぬことがないようにしている。このことは検事の心の支えとなっているようで、自分が死刑に追い込むという心配はなくなったようだ。おかげで狩魔の人たちの横暴に拍車をかけたような気はするけど。最もぼくのことを知っている弁護士はほとんどいない。ぼくのことを知ってしまうと死ぬ事はないと思って手を抜く人もいるからだ。いくら無罪の人が死ぬ事はほとんどないとは言っても真実を追い求めないと、被告も家族も人目を避けて暮らさなければならなくなる。正直そんな苦しみはできるだけ味わわせたくない。だからぼくはどんな時でも真実を求めるために手を抜かない弁護士にしか正体を明かしていないんだ。その1人が成歩堂くんだ。このごろ会ってないけど生活できるだけのお金はあるのだろうか。ぼくはひまなのでそんなことをどうでもいいことを考えていた。

               終わり
 
■作者からのメッセージ
やっと完成しました。少し狩魔豪のイメージと違うかもしれませんが、白夜の目からはそう写ったという設定にしてみました。

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