逆転NOTE25 |
作者:
10join
2009年04月07日(火) 14時48分38秒公開
ID:yI0DTBIFyLM
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「「異議あり!」」 裁判長が木槌を振り下ろそうとした瞬間ぼくとカール・ムアッグウォーは同時に叫んだ。 「ど、どうしたんですか弁護人、カール・ムアッグウォー検事」 裁判長は木槌を振り上げたまま泊ってしまった。もしかして本当にわかってないのか? 「裁判長。この事件は実行犯がわかったからと言って終わりではありません。まだ審理しなければいけないことが残っています」 ぼくが聞いたら裁判長は納得が言ったという顔をした。 「そうでした。これはデスノートを使って行われた事件でしたね」 裁判長の言葉にカール・ムアッグウォーは指を鳴らした。久しぶりに見るような気がする。 「そうだ。このままではこいつは誰かに操られただけの哀れな被害者ということになってしまうではないか。そんな逃げ道を作ることはワガハイが許さん」 ぼくもカール・ムアッグウォーの意見に全面的に賛成だ。検事とここまで意見が合うのってどうなんだろうと思わないこともない。 「そ、そんなこと言われても私は証言できませんよ」 倉杉さんはなぜか平静さを取り戻してそう言った。いまさら取り繕った所で本性はもうみんな知っているんだけど。 「あなたは一言も証言しなくていいです。証拠品さえあれば十分ですから」 と言うより今の倉杉さんには証言できないだろうからな。こうなったら一気に決めてやる。 「それでは弁護士。証人はデスノートのことを知らないらしい。知らないのにどうしてデスノートで殺人をできるのだ?」 カール・ムアッグウォーがうまい具合に話題を振ってきた。 「そうです。そこをどう説明するつもりですか?」 裁判長も同じ質問をぶつけてきた。 「わかりました。証人は昔は白夜さんの部署にいたんです」 「被告人のいた部署というとデスノート関連ですか?」 裁判長もどうやら気付いたようだ。 「そうだ。資料によると証人は3週間前までそこにいたらしい」 カール・ムアッグウォーも手元の資料を確認する。やっぱり情報は来ているようだ。 「待ってください。それならどうして証人の記憶からデスノートのことは抜け落ちているのですか?それに事件と3週間前にデスノート関連の部署にいたこととどういう関係があるんです?」 裁判長が珍しく鋭い指摘をしてきた。珍しくとか言ってる時点でダメなような気がするのはぼくだけか? 「それはこれを見ればわかります。くらえ!」 「これは…デスノートのルールですか。これがどうかしましたか?」 裁判長は本気でわかってないのか? 「このルールによるとデスノートの所有者は1ヶ月の範囲内で死の時間をずらすことができます。3週間前に白夜さんの元から離れた証人なら十分操れたんです」 ぼくがそう言うと裁判長はやっと納得がいったという顔をした。 「では記憶がないのはなぜだ。これは被告人に聞いた方が早いな」 「倉杉に所有権を放棄させたからだ。所有権を放棄したらデスノートに関する記憶は全て消える。当然デスノート関連の部署にいたこともね」 白夜さんがそう言うのを聞いてカール・ムアッグウォーは険しい顔をした。 「放棄させられたということは何か不始末をしたということか?」 「そうです。その証拠はこれです。くらえ!」 ぼくは真っ黒になった燃えカスをつきつけた。 「この燃えカスはもしかしてデスノートのページですか?」 「そうです。倉杉さんはそのページに同級生の名前を書いて燃やしました。証拠を隠滅して確実に死を与えるために」 「そうか。死神の眼で同級生が死んだことがわかれば所有権を放棄させられて追い出される。しかも燃やすことで訂正もできないし、他の誰かの名前が書いてあってもわからないということか」 カール・ムアッグウォーはぼくが言いたいことを全部持っていった。 「そ、そんなの単なる憶測だろ。大体私に記憶もないのにどうしろってんだ。ああ!?」 倉杉さんはまた本性を出していた。 「証人が言うことも最もです。残念ながら記憶がない以上証明できる方法はありません」 裁判長は本当に悔しそうな顔をしている。どうやら倉杉さんが犯人だという方向に傾いてくれているようだ。 「発想を逆転させるんですよ裁判長」 ぼくは自信を持って言い切った。 「発想を逆転?」 裁判長はわけがわからないという顔をした。 「記憶がない以上証明できる方法がないんじゃなくて記憶を取り戻させさえすれば証明できる。とでも言うつもりか?」 まさかここでカール・ムアッグウォーに持って行かれるとは思わなかった。どれだけ目立ちたいんだよ。 「ねえなるほどくん。それ使っちゃって大丈夫なの?」 真宵ちゃんが心配そうに聞いてくる。確かに危険はある。でも白夜さんがそんな危険も考えないでこれをぼくに預けるはずがない。今は白夜さんを信じるんだ。 「い、一体どうやって記憶を取り戻させるんです?」 「こうするんですよ。くらえ!」 ぼくは倉杉さんに黒いノートを力いっぱい投げつけた。 「ぐ、ぐわああああああああああああ!」 ノートを顔面に受けた倉杉さんは顔をおさえて叫び出した。 「べ、弁護人。今のノートはまさか」 「ええ。彼が使っていたデスノートです。彼が叫んでるのは記憶を取り戻した影響でしょう」 「それだけとも思えんのだが。そんなことよりこの状況はかなり気がするのはワガハイだけだろうか」 カール・ムアッグウォーが冷静にそんなことを言っていると倉杉さんが起き上がった。 「フハハハハハハハハハ。そうさ。私があいつの名をノートに書いて殺したんだ」 倉杉さんは高笑いして自白した。 「ずいぶん簡単に自白しちゃったねなるほどくん」 「それでも大丈夫だとでも思ってるんだろう」 「よくわかってるじゃないか。死神。取引だ」 「なんで記憶戻ったのに名前忘れてるんですか」 「そんなのはどうでもいい。早く死神の眼をよこせ」 「はい。わかりました」 死神はあっさりそう言って死神の眼をわたした。倉杉さんはすぐにシャーペンを取り出して名前を書き出した。あまりの速さにぼくたちは何もできなかった。 「これで終わりだ。もう私を捕まえられるやつはいない。かたっぱしから殺してやる」 倉杉さんは高らかに勝利宣言した。もうこれで終わりなのか? それからいくら待っても誰一人として苦しむ気配がない。 「な、なぜ誰も死なないんだ!?」 倉杉さんがそう言うということはもう30秒は過ぎているんだろう。それにしてもなんでだ? 「そのデスノートがニセモノだからに決まってるだろう」 白夜さんは嘲笑を浮かべながら冷たく言い放った。 「う、ウソだ。ならどうして私の記憶が戻ってるんだ!」 確かにそうだ。デスノートが本物じゃないならなんで記憶が戻るんだ。 「知らなかったのか?デスノートに関する記憶を取り戻すにはデスノートの表紙が必要なんだ」 白夜さんが言うことを聞いてぼくにもようやくピンと来た。 「つまり表紙以外完全にすりかえたということか」 カール・ムアッグウォーの言葉に白夜さんはうなずいた。なるほど。白夜さんがノートを預かったのはそのためだったのか。 「し、死神。なんで教えてくれなかったんだ!」 「なんで私があんたみたいなのに教えなくちゃいけないんですか。そこまでする義理はありません」 あの死神やっぱり暗いな。 「ちなみに助けを求めても何もする気はありませんよ。殺して欲しいんならすぐに手をくだしますけど」 死神はそう言って倉杉さんを見下した。 「協力してくれてありがとうシャドー。おかげで助かった」 白夜さんは倉杉さんの死神の名前まで覚えてるのか。所有者でさえ覚えてないのに。 「白夜さんにそう言ってもらえるとは感激です」 シャドーも感極まっているようだ。白夜さんは死神にも慕われているようだ。 「これで終わりですね。あなたはもう自白してしまったんですから」 ぼくがそう言うと倉杉さんは顔をうつむけた。 「デスノートがあるからと言って調子に乗ったのが失敗だったな」 カール・ムアッグウォーもかなり上から目線でそう言った。 「デスノートを使う責任もわかってないやつの末路なんかそんなものだ」 白夜さんがそう言うと倉杉さんは白夜さんをにらめつけた。 「お前の方がデスノートを多く使ってるじゃないか」 「ぼくは周りに被害を広げないために凶悪犯を捕まえさせるし、まだやり直せる可能性がある場合は死刑を失敗させるんだ。人の命を楽に奪えるものを使っているからこそ人の命を大切にしないといけないんだ。あなたとは違うんです」 最後に昔の首相のモノマネが入っていたような気がする。 「言いやがったな。こうなったらとっておきを見せてやる」 倉杉さんはそう言って警察手帳を取り出した。 「!早くそいつを緊急逮捕しろ!」 白夜さんの言葉で警官が捕まえる前に、倉杉さんはペンを動かして警察手帳を燃やした。 「まさかノートの切れ端を仕込んでいたとはね。燃えカスになっているから気付かなかった」 そう言って白夜さんは星歌さんのもとにすごい速さで駆け寄った。 「ど、どうしたんですか白夜さん」 「どうしたもこうしたもない。あいつは今ぼくに恨みを感じてる。でもぼくの名前をあの短期間に間違わずに書けるはずがない。だからぼくの一番大切な人を殺そうとするはずだ」 それを聞いた倉杉さんはニヤリと笑った。 「さすがに気付いたか。わかった所でノートを燃やしてしまったら何もできない。そうだろ作者!」 倉杉さんの視線の先には確かに作者がいた。なぜか後ろを向いて震えている。 『…』 作者は何も言わなかった。後ろを向いて誰にも表情を全く見えなかった。ただあふれ出す何かをこらえるように震えていた。 「倉杉ーーーーーーーーーーー!」 白夜さんはそう叫んで倉杉さんのところに行こうとした。その手を星歌さんがつかんだ。 「いいんです。私は白夜さんに会えて幸せでした。今死んでも悔いはありません」 「星歌」 「お願いします白夜さん。最後まで私のそばにいてください。あなたの中に私の存在を残させてください」 それを聞いた白夜さんは星歌さんを抱きしめた。 「ああ。わかったよ」 白夜さんは涙声でそう言った。 「最後にキスしてくれませんか」 「もちろん」 そう言って目を閉じた星歌さんに白夜さんは唇を重ねた。 「白夜さん。もし生まれ変わってもそばにいてくれますか?」 「当然だ。何度輪廻転生が起きようともぼくが星歌を見つける」 それを聞いた星歌さんはほほえんで目を閉じた。 『それでは星歌視点にしてみます。どうぞ』 私は近づいてくる死を覚悟して目を閉じました。白夜さんと過ごした様々な思いが頭の中を駆け巡っています。もうこの世では会えないかと思うとやっぱりさみしいですね。もうそろそろ30秒が経ちますね。なんだか安らかな気分です。こんなに死が優しいものだとは思いませんでした。 それからしばらくして目を開けました。そこにいる天使は誰かに似ているような気がしました。 つづく |
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