時空を超えた逆転 7 成歩堂・王泥喜編-黒幕との対決- | |
作者:
太郎
2009年04月02日(木) 19時09分27秒公開
ID:NSaAlxEcU.A
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「えっ?!閉心術って…おばさま得意だよ!確か、霊力のなさを、埋め合わせるために修得したって…」 真宵は、全てが抜けたかのように、ソファーに座った。オドロキは、少し考え、間もなくして顔をイキオイよく上げ、成歩堂を見た。 「…そう。綾里キミ子は、この閉心術の師範でもあったみたいだね。」 「(閉心術の…師範!)…と…言うコトは…牙琉先生は…その…“綾里キミ子”さんに、閉心術を習った、ってコトですか?」 「ほぼマチガイないと見てるよ。少なくともボクはね。モチロン、牙琉はキミの“能力”を知っている。だから、動揺を見抜かれないタメに同じ刑務所に収監されている綾里キミ子から習ったんだろうね。“閉心術”を…。もはや、ヤツの計算の内だったのさ。キミが弁護席に立つコト。そして、最悪の場合、牙琉自身が法廷に召喚されるのは、ね。」 成歩堂がいい終えると、オドロキも真宵もすっかり黙ってしまったのだった。そしてこのジメッとした空気は、数秒間続いた。 「なんてコトだ…。成歩堂さんっ!コレをどこで?!」 「コレは、2人が収監されている中央刑務所の作業場のゴミ箱に捨ててあったんだ。グチャグチャに丸めてね。それをボクが見つけて、コピーしたんだ。アカネちゃんの筆跡鑑定の結果、コレは間違いなく、牙琉の字だよ。」 成歩堂はチラチラと時計を見ながら話した。 「つまり、この2人は刑務所で話すキカイがあってそのまま意気投合したんだね。そして今回、各々のオモワクが絡んだこの事件が起こった、と言うワケだ。牙琉がキミ子に協力したのは、真宵ちゃんを追い出すのと同時にボクらにも復讐ができると考えた。だから保険として協力したんだ。しかし、真宵ちゃんが、ムザイ判決を受けて、計画はシッパイ。だけど、鬼野が黙ってる限り牙琉はこの事件に関しては罪には問われない。それがヤツが持ってる最後のカードさ。」 成歩堂は、少し早口で言った。 「うーん。でも、キミ子おばさまが関わってるってバレたら、がりゅーさんには不利だよね。」 ソファ-の上で体育座りしながら真宵が言った。 「なんで鬼野刑事は、牙琉先生に協力したんだ…?あそこまで…。」 「確かなコトは分からない。でも、彼はカタクナに牙琉を守ろうとしてる…。何かがあるんだろうね2人の間には。」 「ですよね…。(なんだか、たくさんあるな…。課題。)」 弱冠、コンラン気味のオドロキに成歩堂はポンと彼の肩に手をのせた。 「まぁ、落ち着くコトだ。オドロキ君。」 「成歩堂さん…!」 「実はね、ケッテーテキな証拠って言っちゃったけど……コレしか今、ショーコがないんだ。」 「…ハイ?」 笑顔の成歩堂と対照的にオドロキは血の気が引いた、なんというかそんな表情をした。 「どーゆーコトなの?なるほどくん!もしかして、これしかショーコ、ないの?」 「うん。キミ子さんと牙琉の協力関係をリッショーしたいんだけど、証拠は不十分なんだ。今、アカネちゃんとみぬき…そしてイトノコさんも呼ばれたかな?彼らが未来で決定的な証拠を探してくれてるんだよ。」 「じゃぁ…オレは、その場をこの証拠でしのげばいいんですね?」 「そうさ。さすがボクの部下だね!分かってるじゃないか!」 成歩堂は、オドロキの前髪をグシャっとやった。 「ああぁっっ!ちょっ!!成歩堂さんっ!!!」 「おっと。自慢のショッカクが乱れてじまったね。スマン、スマン。」 「しょ…ショッカク…(ヒドイ…。)」 ガチャ 「シツレイします!」 成歩堂とオドロキがジャレてたその時、係官が入ってきた。 「弁護人、時間です。出廷して下さい!」 それを聞き、全員、控え室にかかってる時計をイッセーに見た。 「どうやら、時間切れみたいだね。…行こっか、オドロキ君!真宵ちゃん!」 『ハイっ!』 「いっちょ行こう!オドロキ君っ!なるほど君っ!」 「あぁ!(必ず、この事件。カイケツしてやるぞ!)」 午後5時2分 地方裁判所 第4法廷 傍聴席- 成歩堂が、オドロキ達に新たな証拠品の話をしている間、傍聴席では、牙琉響也が事情を説明しようとしていた。 「がりゅう検事さん。なぜ、わたくし達は、今回、控え室に行ってはいけないのですか?」 春美が、牙琉のウデをつつきながら言った。 「まぁ、行ってはイケナイというか・・・時間もないし、おデコ君、キミがいたら、舞い上がって時間をムダにしかねないからね。」 「そ、そ、そ、そんなコト、絶対にありえませんっ!だって…………おどろき君にはみぬき様がっ!!」 春美は顔をマッカにし、大慌てで言った。 「はは。そうだったね。お嬢ちゃん。じゃぁ、キミの優しい気づかいにボクからササヤカなご褒美をあげようかな。」 「そんな…わたくしは何も…。」 「いいんだよ。…ホラ。これで何か売店で好きなものを買いに行ってくるといいよ。」 牙琉はサイフから、またまた1000円札を取りだし、優しく春美に差し出した。 「がりゅう検事さん………!でも…悪いですっ!」 「…ッス。…円ッス。」 「(イトノコ刑事…。空気読めよ。)」 1000円札に吸い込まれそうになっているイトノコを見て、成歩堂は、ツーレツにツッこんだ。 「…春美君。ありがたく貰っとけばいいではないか。牙琉検事のヤサシサだ。」 「そうだよ!春美ちゃん。売店行くのは、初めてだろう?」 「…なるほど君。みつるぎ検事さん…」 春美は、申し訳なさそうな表情で、牙琉を見た。 「お嬢さん、ボクのキモチ、受け取ってくれるかな?」 「…ハイっ!…では、おコトバに甘えさせていただきます!…でも、わたくし、“ばいてん”への行き方が分かりません…。」 「ははっ。シンパイはいらないよ。お嬢さん。この刑事クンにキミを売店までエスコートさせるさ。」 「じ、自分ッスか?」 「刑事クン。お願いするよ。」 「りょ、了解ッス!…あの、牙琉検事?」 「ん?なんだい?」 「自分も…何かオカシ買ってきていいッスか?…もし、お金がアマったら…カリントウ…食べたいッス!」 『…。』 「…刑事。」 イトノコが、ムクな笑顔でそう言ったシュンカン、御剣の鋭い眼光が彼をまっぷたつにした。 「あっ…み、御剣検事…。じ、自分行ってくるッス!カリントウなんてどーでもいいッス!っ、行くッスよ!」 「ハイっ!では、行ってきます!なるほど君に、みつるぎ検事さんに、がりゅう検事さん!」 春美はエガオで、手をふりながらイトノコを引っ張っていった。 「…よし。これでハナシができるね。ココロ苦しいテを使ったケド…。」 「どーゆーコトだ?牙琉検事…。」 成歩堂は、静かに牙琉に聞いた。 「あのお嬢さんに今、聞かれたら、キズつくと思ってね。…実は、ボクのアニキと、彼女の母親がグルだったギワクが浮上したのさ。」 「春美ちゃんの母親…綾里…キミ子っ!(考えもしなかったぞっ…!)」 成歩堂は、思わずコトバを詰まらせた。 「彼らは、7年後には、同じ刑務所に収監されている。そして…お互いの目的のタメに手を組んだ、という可能性をしめしたある証拠品が見つかったんだよ。」 「…牙琉検事。その証拠品は本当に決定的なモノなのだろうか?」 御剣は、レイセイに聞いてきた。 「………ザンネンながら、決定的とは言えないんだ。ただ、“可能性”をしめすシロモノだね。」 「え゛っ。」 「ま、その可能性がおデコ君のキリフダになるだろう。とりあえず、今は、おデコ君にシンリをつないでもらって、その間に新たな証拠品を見つけ出すさ。」 「なるほどね…。(この場を逆転するには、確かにそれしかないよな。)」 しばらく、約3秒くらいのチンモクの後、何かに気付いたように、御剣の口が動いた。 「しかし、牙琉検事。春美クンが帰ってきたらどうセツメイするツモリだろうか?」 「あ、そうか…。やっぱ分かっちゃうよね…。チヒロさんにレーバイさせるにしても…今、スランプらしいし…。(知ってしまったら…春美ちゃん、またキズつくぞ…!)」 「…それに関しては、たボクから改めて説明するよ。…ただ、休廷時間は長くはないし、彼女が今。聞くべきハナシではないと思ったからね。」 牙琉は、珍しくマガオで語った。 「そう、か。………ム。ところで、そろそろ時間だな。」 「そうだね。…もうこんな時間か…。オドロキ君、よく持ちこたえてるなぁ…」 成歩堂は御剣の腕時計をのぞきながら、ツブやいた。 「本トだね。まぁ、どうなってもコレでケリはつくだろう…」 午後 5時10分 地方裁判所 第4法廷- オドロキはユックリと弁護席に、そして成歩堂は助手席についた。弁護側より、早く席に立っていた冥は、スゴイ目付きで、弁護席を見つめていた。証言台の牙琉は、落ち着いた様子で、精神統一をしてるように見えた。 カンッ! 「それでは、サイカイしましょう。弁護側に、証拠品の提出を求めます!」 「は、ハイっ!大丈夫です!」 「オドロキ君。落ち着いていいよ。あたかもそれが決定的な証拠品であるかのようにふてぶてしくどーどーとなおかつ、ニヤニヤしながら、提出するんだ。」 「分かりました…。(注文が多いな…)決定的な証拠品はコレですっ!」 オドロキは、成歩堂が確保した紙を提出した。 「ふむぅ…。それは?何かのレシートですかな?」 「えーと…。……違います。これは証人の残したメモです!」 「なんですって…?」 牙琉は、メガネを軽くいじった。 「ど、どーゆー内容なのですか?」 「コレによると、証人はある人物と関わりがあったようです。…“綾里キミ子”という人物とです。」 オドロキがそういい放つと、傍聴席の春美は思わず、両手で口元を押さえた。 「お、お母さまが…!そんなっ…。」 「事実だよ。お嬢さん。…事実なんだ。お母さんは関わってるよ。」 牙琉は春美の前でハジメテ真顔を見せた。 「牙琉検事っ!いくらなんでもっ…!」 成歩堂は牙琉に抗議しようとしたが御剣が無言でそれを止めた。 「…!(御剣…っ!)」 「成歩堂。彼に任せよう。」 御剣はそう言うと、成歩堂の背広をつかんでいた手を解いた。 「が、がりゅう…検事さん…。わたくし、少しお外の空気を吸ってきます…」 「いや、ダメだ。」 「えっ…」 牙琉はマガオで春美を引きとめた。 「いいかい。キミ自身が受け止めなきゃいけないよ。ココで見てるんだ。逃げてはいけない。ぼくだって、兄貴が関わってるんだ。一緒に逃げずに見ていよう。」 「…!(牙琉検事…!)」 「…。」 春美は涙を浮かべながら、牙琉のカオを見た。そして、証言台の霧人をのぞくと、小さな手でゴシゴシとナミダをふいた。 「分かりました。わたくし、ココにいます。」 「…さっきより、イイ顔してるよ。お嬢さん。」 牙琉はツブヤくと、春美の頭を優しくなでた。 「ツラいだろうが、大丈夫だ。春美クン。真実がオノズとアキラカになるだろう。」 「さァ、オドロキ君(と未来のぼく)のハンゲキがはじまるぞっ!」 |
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