逆転NOTE24 |
作者:
10join
2009年03月27日(金) 21時52分34秒公開
ID:yI0DTBIFyLM
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「大丈夫よなるほどくん。その証拠ならちゃんとあるわ」 隣から聞き覚えがある声が聞こえた。見ると春美ちゃんが千尋さんを霊媒していた。 「でもお姉ちゃん。決定的な証拠なんて法廷記録にないよ」 真宵ちゃんが言う通りだ。もしそんな証拠があったらとっくに使ってる。 「発想を逆転させるのよなるほどくん。真実を語る証拠がないなら、証拠で真実を語らせればいいの」 証拠で真実を語らせる?そんな都合がいい証拠があるわけが 「あ」 ぼくが千尋さんの方を見ると千尋さんは満足したような顔でうなずいた。 「どうやら気付いたようね。後はがんばってね」 千尋さんはそう言って春美ちゃんの体から出て行った。 「どうしたんです弁護人」 裁判長は驚いたような顔をした。 「なんでもありません」 「それで決定的な証拠はあるのか?」 カール・ムアッグウォーはぼくをにらみつけた。なかったらただじゃおかないという殺気まで感じる。検事としてそれはどうかとも思う。 「もちろんあります」 ぼくがそう言った瞬間倉杉さんの顔から笑みが消えた。 「う、ウソだ。そんなものあるはずがない」 倉杉さんはかなり取り乱しているみたいだ。いつもの丁寧語が全く出ていない。 「それを決めるのはあなたではありません。弁護人。その証拠は一体なんですかな」 これははっきり言って賭けだ。もし賭けに負けたら白夜さんを救うことはできない。でももう他に方法がない。やるだけやってみよう。 「これがその証拠です。くらえ!」 「こ、これは凶器ではないですか。これに犯人が証人だという証拠があるんですか?」 裁判長はまだわかっていないようだ。 「そんなもの決まっているだろう。何かに触った時には普通ある物が残っているはずだ」 カール・ムアッグウォーの言葉に裁判長はようやくわかったようだ。 「その通り。その凶器にはちゃんと残っているんですよ。倉杉さん。あなたの指紋がね」 ぼくはふてぶてしく笑いながら指をつきつけた。内心では不安でいっぱいなんだけど。もう後は乗るかそるかだ。うまくいくように祈るしかない。 「そ、そんなバカなことがあってたまるか!その凶器に私の指紋が残るはずがない」 倉杉さんは声を張り上げた。かなり追い詰められてるみたいだな。 「そう言い切れる根拠はなんですか?ぼくには必死で言い訳をしてるようにしか思えません」 ぼくの追及に倉杉さんは顔を青くした。どうやら精神的に追い詰められてるようだ。 「だって私はやつを殴る時に手袋をしてたんだ。指紋なんて残りようがない!」 「…」 「なんだ。さっきまでの威勢はどうしたんだ!」 倉杉さんの声でぼくは我に帰った。 「それを証明できる人はいますか?」 「青影に決まっているだろう。やつがはっきり見たはずだ」 倉杉さんは自信を持って言い切った。 「…」 「…」 「…」 「ど、どうした。みんな何を黙っている!」 倉杉さんは蒼白な顔をしてぼくたちの方を見た。 「キサマは自分が何を口走ったのかわかっていないようだな」 カール・ムアッグウォーは邪悪な笑みを倉杉さんに向けた。 「そ、そんなの指紋がついていないという根拠」 倉杉さんはそのまま凍り付いてしまった。まさかぼくもここまでうまくいくとは思ってなかった。 「お、おまえよくも騙したな。法廷でウソをついていいと思っているのか!」 倉杉さんは自分のことを棚に上げてそんなことを言い出した。口をすべらせたのは自業自得だろう。 「ぼくはウソは言ってませんよ。裁判長。凶器に正体不明の古い指紋がついてたことを覚えてますか?」 「ああ。そういえばついていましたね。それではあの指紋はもしかして」 「ええ。それが倉杉さんの指紋です。そしてその凶器は爆発の影響を受けてひしゃげています。ここから考えられる結論はなんでしょう?」 ぼくがそう言うのを聞いてカール・ムアッグウォーはハッとした顔をした。 「まさか倉杉が被害者を殺したのは友人の敵討ちではなかったのか」 「ええ。資料によると証人は彼らにいじめられていたようです。おそらく彼らとビル の近くで会った証人はカッとなって近くにあった鉄の棒で殴ろうとしたんでしょう」 「その時爆破事件が起き証人が殺そうとしたやつらが死んだ。自分の復讐をジャマされた証人は被害者に恨みを抱いていたということか」 カール・ムアッグウォーはぼくの言葉を引き取って答えた。 「そうです。そしてあなたを縛り付けていたその憎しみがあなたにあの日と同じ凶器を選ばせたんです!」 ぼくは声を張り上げた。倉杉さんは顔をうつむけた。 「ああそうだよ。動機もあんたらが言った通りだ」 倉杉さんは開き直ったように言った。 「それでは認めるんですね。あなたが被害者を殺したと」 裁判長は目を丸くしながら言った。 「もうこれ以上言い逃れできない以上あきらめるしかないだろう」 倉杉さんは潔く言った。 「そうですか。それならこれ以上審理を続ける必要はありませんね。もう判決を下しましょう」 裁判長はそう言って木槌を振り下ろそうと手を上げた。 つづく |
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