逆転の哀しき窓景色(プロローグ)
作者: 麒麟   2008年11月03日(月) 17時39分56秒公開   ID:vwMtiCpyPYk
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 「そうなんだ。パパありがとう。パパもこんなところで油売ってないで、もっとちゃんとピアノの腕を磨いてよ。オドロキさんはみぬきがついてるから絶対大丈夫!安心していいから、パパはもっとピアニストとしての自覚を持ってよね。今月大変なんだから!」
 「あはは、オドロキ君に喝を入れに来たつもりが、逆にパパがみぬきに喝を入れられちゃったな。はは」
 本当に臭い親子の会話である。
 「それじゃあ、パパは帰るよ。オドロキくんを頼んだよ。みぬき」
 「うん、任せて!パパ!」
 そんなこんなで臭い親子間の会話は終わりを迎えたようである。
 「あ、成歩堂さん!!」
 ここで、王泥喜はさっき言おうとしたことを思い出した。
 「そういえばなんで、今回の事件の法廷の場所が分かったんですか!?」
 立ち止まる成歩堂。なおも続ける王泥喜。
 「それに、どうして今回の事件について何か知ってるようなことを言うんですか!?」
 さっきの発言だってそうだ。なぜ成歩堂は、考え方を広く持たないと真実が見えてこない・・などと言えるのか?その根拠が王泥喜には分からなかった。
 「別に何かを知っているわけじゃないさ。ただ・・」
 「ただ?」
 成歩堂の楽しそうな口調で続けた。
 「僕が以前に扱った事件に状況が似ているだけのことさ。だからもしかしたら・・ってね。控え室と言い法廷と言い被告人の状況と言い・・まるで偶然とは思えない。何かの運命みたいだ」
 そう言って去っていく成歩堂。
 「以前に扱った事件・・?」
 王泥喜がそう口にした時、法廷係官が王泥喜たちに告げた。
 「弁護人、そろそろ開廷するので法廷へ向かってください!」
 「・・あ、はっ・・はい!!」
 だが、何かを考える暇もなく王泥喜たちは現実へと引き戻された。
 「そう、あの競馬場での事件と状況がそっくりだ・・」
 その言葉が王泥喜に聞こえたのかどうかは分からない。だが、一つだけ言えることは、これから激しい逆転劇が始まるということだけだ。

 「さぁ、ちゃちゃっと片づけちゃいましょうね。オドロキさん!」
 「そうだな・・ま、やれるだけやってみるか!」
 廊下を歩く王泥喜とみぬき。遅れて係官と歩く細田。
 「細田さん、今日はよろしくお願いします!」
 振り返って細田に元気よくそう言った王泥喜・・だが。
 「・・・・」
 返事がない。
 (俺ってやっぱり信用ないのかなぁ・・)
 がっくりとうなだれる王泥喜をみぬきがすかさずフォローした。
 「だ、大丈夫ですってオドロキさん!ああ見えても細田さん、シャイなんですよ!」
 そう言ってみぬきは後ろの細田へと目をやる。
 「ま、こんな感じですけどやる時はやりますから、大船に乗った気でいてくださいね!」
 そうやって細田に笑みを向けたみぬきは、再び法廷へと続く道を王泥喜とともに前を向いて歩きだす。
 「・・・・はい」
 ほんのわずかだが、そう返した細田の声は2人はおろか、隣にいた法廷係官にさえも聞こえたかどうかはさだかではない。


 つづく


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 【法廷記録】(プロローグ現在)
 
 (証拠品ファイル)

 <弁護士バッジ>
 憧れだったバッジ。つけると身が引き締まる。
 ただ、最近は磨かないと汚れが目立つようになってきた。変な仕事のしすぎなのか?

 <金賭黒吉の解剖記録>
 死亡推定時刻は10月9日午前0時50分頃。死因は毒物による呼吸麻痺。
 被害者の首筋に注射器痕のようなものがあり。そこから毒物が注入されたと推定される。
 なお、被害者は体に数か所打撲による痣が残っており、殺害前に争ったと思われる。

 <スターセブンホテルの宿泊簿>
 被害者は事件発生前日の10月8日午後8時にツインルームの1305室にチェックイン。
 同日の午前に予約を取っていた。

 <現場写真>
 1305室内は争った形跡が所々見られた。カーテンは開かれている。
 死体はなかったが現場検証の様子から窓(ベランダ)側に向かってうつ伏せに倒れていたようだ

 <細田薬史の借用書>
 細田は被害者・金賭の会社から20万円を借りていたが、現在はそれが700万までに膨れ上がっている。ちなみに事件前日の10月8日は100万円を返済する予定になっていた。


 (人物ファイル)

 <成歩堂みぬき(15)>
 成歩堂さんの娘で大魔術師を目指す女の子。
 最近は得意芸である“ぼうしクン”によく小突かれる。

 <細田薬史(25)>
 今回の依頼人。かなりのシャイで事件に関しては無罪を主張するがそれ以外黙秘。
 被害者の会社に借金あり。真田下(まだしも)製薬会社の薬品開発研究員。

 <宝月茜(25)>
 科学捜査マニアの刑事。事件の初動捜査を担当。
 今回は毒物も絡んでいるし証言台に自ら出てくるかもしれない。

 <牙琉響也(24)>
 法曹界のスター検事でガリューウェーブのリーダー兼ボーカル。
 今回の事件の担当検事。俺のことをおデコくんと呼んでくる。

 <金賭黒吉(41)>
 今回の事件の被害者で金融会社社長。
 しかしその実態は限りなく闇金業者であり他にも悪どいことをしていた噂がある。
■作者からのメッセージ
 えー、なんか久しぶりに小説を書いた麒麟です。完全に新作なんですけどね。
 ただでさえ忙しい自分ですから、新作じゃなくてもっと書くべきものあるだろ。とか言われそうな気がする今日この頃。えーっと、ごめんなさい。
 初めて王泥喜シリーズを書いてみることにした作品です。そして今回は、純粋にゲーム中のキャラを使った法廷対決です。
 つまりはオリジナル検事じゃないということです。かなり直球に勝負してる内容かもです。そういう意味では。(どういう意味?
 内容的には法廷単発モノです。イメージ的には自分が昔に書いた“逆転のホワイトホース”のような構成です。そういう構成ですから展開が分かる人は分かるかもです。
 それが影響されているのかプロローグ的なこの部分は“逆転のホワイトホース”ネタが若干入ってしまいました。ごめんなさい。そういう自分の過去作品ネタを入れるのが習慣になってます。本当にごめんなさい。
 頭にデンッ!!っとアイデアが降ってきたので書きました。直感です。トリックというより展開的なものがデンッ!!と降ってきました。話は何となく重い気がします。
 今までの逆転裁判小説では描いたことのない動機を書くのかもしれませんし書かなくていつもの展開なのかもしれません。(どっち?
 ただ言えることは、個人的にこれは最後まで書こうと思ってます。ただ、もし時間の都合で断念した時の言い訳をここでさせてください。その時は削除します。ごめんなさい。 
 えー、じゃあなんで投稿したんだろうな・・それは何となく血迷った結果です。うん。多分久々に投稿したくなったのだろうね。というわけでさよならです。

※081103:文字化け修正

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