逆転NOTE16
作者: 10join   2008年10月11日(土) 18時34分29秒公開   ID:QRqdkrt8vd2
「それでは証人。キサマがケガをした時の状況を証言してもらおう」
「わかりました」
 いよいよ尋問が始まるな。一体どんな証言が出てくるんだろう?

《ケガをした時の状況》

〈あれは私が林ビルあたりをうろついてた時のことでした〉
「待った!どうしてそんな所をうろついていたんですか?」
「どうしてと言われても困ります。なんとなく気が向いたとしか言えません」
 青影は困ったような顔で言った。その言葉に偽りはないんだろう。まあぼくもここで決定的な証言が出るなんて期待してない。
「なら余計な質問をするな。証人。先を続けてくれ」
 やっぱりカール・ムアッグウォーが仕切っている。やっぱりと言う所に裁判長の立場の弱さが見えるな。

〈男がガレキの山を見ているのが見えました〉
「待った!その男というのはこの人物のことですか?」
 ぼくはこの事件の被害者で、林ビル爆破事件の犯人である獏原銀次の写真を青影に見せた。
「横顔しか見えませんでしたがその人だったと思います。どこかで見たと思ったら指名手配犯だったんですね」
 青影にもこの写真の人物が誰かわかっているようだ。そりゃ警察に事件のことくらいは聞いてるだろうからな。
「証人は被害者を見たんですね。それからどうなったんですか?」
 珍しく裁判長が進行した。この珍しくって所に裁判長の立場の弱さが出ている。
「というより作者の裁判長の扱いの悪さが出てるんじゃない?」
 真宵ちゃんの言う通りなのかもしれない。
『いや、ゲームでもあまり変わらないだろ』
 作者はトドメをささなくていい。なんか聞いてるこっちが悲しくなってくる。

〈すると背後から男が近づいてくるのが見えたんです〉
「待った!その男はどんな男でしたか?」
「あの時点では顔は見えなかったんですが、なんか周りが異様に重い空気に包まれているというような感じがしました」
 つまりその人はかなり暗かったって言いたいのか?そこも気になるけど、なんか妙にひっかかることを言ったようなことを言ってなかったか?
「あの時点ってどういうこと?」
 真宵ちゃんが言ったことで疑問の正体に気付いた。確かにあの時点ではってことは最終的には顔を見たってことになる。
「それはこれから証言する。証人。次の証言に移れ」
「あの、今証言した方がいいような気がするんですが」
「何か文句でもあるのか?」
 カール・ムアッグウォーに睨まれた裁判長はそのまま黙ってしまった。もはや裁判長としての威厳がないように思えるのはぼくだけではないだろう。

〈その時男が何か持ってるのが見えたんです〉
「待った!何かってなんですか?」
「よくは覚えてませんが、何やら棒のような物だったと思います」
 青影の言葉を聞いて、ぼくには思い当たる物があった。っというよりこの状況でこれ以外にありえないだろう。
「それってもしかしてこれのことですか?」
 ぼくは凶器の鉄の棒を青影に見せた。
「間違いありません。その時見た物もそれくらいひしゃげてました」
 やっぱりそうか。他に考えようがないからな。
「それで凶器を持っている男を見た証人はどうしたのだ?」
 カール・ムアッグウォーが先を促した。

〈その間に割り込んだ私は即頭部を殴打されて倒れました〉
「待った!なぜそんな無茶をしたんですか?」
「気がついたら体が動いてました。そのせいでひどく出血したようですね」
 その出血のおかげで茜ちゃんに青影が生きているってことを知られてしまったというわけか。
「クリムゾンジャックはキサマが道で倒れてたと言っていたが?」
 確かにクリムゾンジャック先生はそんなことを言っていたような気がするな。
「多分朦朧とした意識でそこまでたどりついたんでしょう。自分でもよくわかりません」
 大体そんな所だろうな。殴られて大量出血してる状態で意識がそこまではっきりしてるわけはないだろう。

〈その時男の顔を見てなんか見覚えがあるように感じました〉
「待った!それはどういうことですか?あなたとその男は知り合いだったっていうんですか?」
 これはかなり重要な証言だと感じたぼくは思わず声を荒げてしまった。
「知り合いってわけじゃないんです。ただなんとなく見覚えがあるっていうレベルですが」
 見覚えがあるってどういうことだ?テレビかなんかで見たことがあるっていうことか?「ひょっとして警察関係者か何かではないのか?」
 カール・ムアッグウォーの言葉に青影は何かに思い至ったようだ。
「そう言えばあの暗い空気を警察のなかで感じたような気がします。確かある特定の巡査から感じたような気がします」
 どうやらカール・ムアッグウォーの言葉が正しかったようだ。でもその巡査の名前は思い出せないようだ。

「まさか警察の中に犯人がいるとは…」
 裁判長がかなり驚いたような顔をしている。被告人の白夜さんが警視なのにそこまで驚いてどうするんだよ。
「これは今日はできないみたいですね」
「残念ながらそのようだ」
 カール・ムアッグウォーもぼくの言葉に頷いた。
「それでは明日に持ち越しましょう。成歩堂君は証言を集め、カール・ムアッグウォー検事はその時の巡査から洗い出してください」
「わかりました」
「了解した」
 カッ!
「それでは本日はこれにて閉廷」
 なんとか明日に持ち越すことができたな。明日までにその巡査が誰かを確かめないとな。

          つづく
 
 
■作者からのメッセージ
次から事件解決に向けて大きく話が動きます。

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