逆転NOTE15
作者: 10join   2008年09月26日(金) 17時15分12秒公開   ID:QRqdkrt8vd2
同日 午前11時21分 被告人第2控え室
 次はあいつの証言か。一体どんな事実が明らかになるんだろうな。
「そんなの始まってみないとわからないんじゃないの?」
「そうですよ。そんなの始まってから考えましょうよ」
 確かに真宵ちゃんと春美ちゃんの言う通りだ。始まる前から悩んでても意味がない。
「とにかくしっかり明日に引き伸ばしてくれ。ぼくの命運は成歩堂君が握っているんだからね」 
 やっぱり白夜さんは今日中に決着をつける気は少しもないようだ。当然と言ってしまえば当然だろう。
「そろそろ開廷時間です。法廷に入ってください」
 いつものように係員がぼくたちに言った。一体どんな証言が飛び出てくるんだろう。

同日 午前11時30分 地方裁判所第4法廷

カッ!
「それでは審理を再開します。カール・ムアッグウォー検事。証人を呼んでください」
「では凶行の一部始終を見ていた証人を攻撃表示で召喚しよう」
 カール・ムアッグウォー。攻撃表示で召喚って一体何なんだよ。法廷で攻撃表示も守備表示もあるわけないだろ。

 そうしているうちに証人がやってきた。頭に包帯が巻いてあった。裁判長はその承認を見てなにやら首をひねっていた。どこかで見たような気がしているようだ。
「それでは証人。証言に移れ」
「わかりました」
 なんだかいろいろすっ飛ばしてるような気がするけどまあいいか。
「ちょ、ちょっと待ってください。なんでまだ証人の名前と職業を聞かないうちに始めようとしてるんですか?」
 裁判長がめずらしくカール・ムアッグウォーに意見を言った。
「黙れ!そんなことどうでもいいだろうが!」
 カール・ムアッグウォーが裁判長を鋭い目つきで睨みながら言ったらそれ以上何も言えないようだった。これで誰も証人の名前と職業を気にすることはない。
「ふざけんな!名前と職業くらい言え!」
「いちいちめんどくさがるな!」
「ママー。あのおじさん悪い人なの?」
「しっ。見ちゃいけません」
 …そんなわけないな。知られたらかなり騒ぎになるからできれば説明はさけたいんだけど。

「それだけうるさく言うなら仕方ない。証人。名前と職業を」
「青影丈。職業は小説家だ」
 小説家って自分の獄中生活とか死刑が失敗した経験でも書いてんのか?
「青影?どこかで聞いたことがあるような気がします。どこでしたっけ?」
 本当に忘れてるのか裁判長。記憶力悪くなってるんじゃないか?
「あ、青影ってまさかあの?」
「SL9号事件で人を大勢殺したとされる連続殺人犯じゃねーか」
「ママー。あのおじさん殺人犯なの?」
「しっ。目を合わせちゃいけません。殺されるわよ」
 お母さん。子供にそんな物騒なこと言っちゃダメでしょう。
「あ、あの青影丈だって言うんですか?で、ですが青影丈は何年も前に死刑になったはずです。今この場にいるはずがありません。そうでしょう?」
 なんで裁判長は青影の名前ですぐに思い出せないくせにそんなことはわかるんだ?

「今は書類上に死刑が執行されたと書いてあってもそこまで意味はない。いい加減そのことに気付いたほうがいいよ」
 被告人席から白夜さんが裁判長にそう言い放った。
「ひ、被告人。それは一体どういうことなんですか?」
 裁判長は本気でわかっていないようだ。
「今の死刑は全てデスノートで行っている。そのおかげで確実に死刑は成功する。必ず成功させられるってことは必ず失敗させることもできるってことだよね」
 白夜さんがそう言ったのを聞いて裁判長は何かに気付いたようだ。
「ま、まさか青影丈の死刑をわざと失敗させたって言うんですか?!」
 裁判長は驚いて叫んだ。
「ご名答。よく気付いたね」
 白夜さんは全く悪びれる様子もなく言った。
「し、しかしなぜわざわざ青影を生かしたんですか?」
 裁判長。本人の前でそれはないだろう。
「最後の証拠が捏造くさかったから。それだけさ」
 白夜さんは昨日聞いたことをそのまま答えた。
「ま、まさか前に成歩堂君が解いたあの事件の真相が初めからわかってたって言うんですか?」
「それはないでしょう。もしそうならとっくに捕まっていたはずです」
 あっぶねー。もう少しで法廷なのにセリフがないなんてことになってる所だった。
「まあなんかひっかかってただけだ。誰がなんのためにやったかなんてわかってなかったよ」
「で、ですが他の殺人の犯人だった可能性もあるでしょう」
 裁判長の言葉に白夜さんは首を振った。
「可能性だけじゃぼくたち警察内部のデスノート所持者は動けない。最後の事件が犯人があいつだと法廷に印象づけるように思えた以上他の事件に証拠が確実にあったかどうかわからない。人の生死を決める以上確実にそうと言えない限りぼくは動けないよ」
 白夜さんがそう言うのを聞いて裁判長は少し動揺したようだ。
「で、ですがそれが外れてた場合はどうするんですか?」
「それでもそいつが事件を2度と起こさないっていうんならかまわない。本当に無実の人を処刑してしまうという取り返しのつかないミスを起こすよりはマシだ」
 白夜さんがそう言うのを聞いて証人席の青影がなぜかすすり泣き始めた。
「どうしたというのだ証人」
「す、すいません。あの時誰も私の言葉を信じてくれなかったのに、私がやってないことをわかってくれていた人がいてくれたとわかったのでつい。命の恩人が被告人だと刑事さんに聞いた時は半信半疑でしたが、それが正しいことなんだと思えるようになりました」
 青影は感極まってしまったようで泣いてしまった。それを見てカール・ムアッグウォーの様子もおかしいように見えたのは気のせいか?

「いろいろ中断してしまったが証言してくれ。準備はいいな証人」
「もちろんです。私の救世主の命運がかかってるんですから」
 青影はかなりオーバーに言った。小説家なんてやり出した影響なのかもしれないな。この証言が白夜さんの行く末が決まる。白夜さんに不利な証言が出てこないことを祈るしかないな。
 
 
 
■作者からのメッセージ
核心に迫りすぎるのでここで切っておきます。

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