手紙という名の・・・ |
作者:
カオル
URL: http://www.ab.auone-net.jp/~kaka/
2010年11月10日(水) 22時32分32秒公開
ID:P4s2KG9zUIE
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「君のそのスーツ姿を見るのは久しぶりだな、成歩堂」 「やあ、御剣。狩魔検事。そして・・・お久しぶりです。ゴドー検事」 某月某日、某所にて4人が久しぶりに顔を合わせた。 「なんだ、私と冥には随分ぞんざいな挨拶だな」 「だって、君たちはついこの間“逆転検事”でお目にかかったじゃないか! でもネクタイ姿のボクやゴドー検事は本当に久しぶりだろう?」 長い脚を組み、片手にマグカップを持った男が口を開く。 「まるほどう、元気だったかい?」 「はいおかげさまで。でもボク『逆転裁判4』で弁護士やめちゃってますけど・・・」 ビシッ!! 「成歩堂龍一。私はまだ法挺であなたに勝利していないのに弁護士をやめるなんて、許せない!」 「イテテテ・・・相変わらずだね。狩魔検事」 「ところで今回、我々が顔を合わせた理由はなんだのだね?」 「それは今度、新しいゲーム機でもう一度プレイ出来るようになったからさ」 「ああ、W●eとかいうゲーム機のことか?」 「違うよ!W●iだよ!」 「●(くろまる)表現されると、非常に分かりにくいわ・・・」 「しょうがないだろう、この場で特定の商品名を出すわけにはいかないし」 そして、青いスーツの男は改まったように銀の仮面の男に向き直った。 「ボク、マグカップの代わりにリモコンを持つゴドー検事の姿を見た時、涙が出そうになりました」 「よせやい、テレちまうぜ・・・」 「あら、私もムチの代わりにリモコンを手にしているわよ」 「(ずっと、そうしてくれよ・・・)ところで御剣、前から聞きたいと思っていたんだけどボクが『4』で 弁護士やめちゃった時、オマエいったい何やってたの?」 「そっ、それは・・・ご想像におまかせするッ!」 「狩魔検事、君は?」 「わっ、私は・・・多分、日本にはいなかったのではないかしら?」 「そんなもんなんだね・・・」 青いスーツの男がため息をつく。 「ところで、まるほどう。そのW●iってのは、何なんだい?」 「えっ?! 知らなかったんですか、ゴドー検事」 「・・・論外ね・・・」 「冥。そういう君はモチロン所有しているのだろうな?」 「近日中には・・・そうする予定よッ!」 「御剣、オマエは?」 「ウム、現時点においてまだ、手元には・・・ない」 「素直に、持ってないって云えよ!」 「成歩堂、そういうキサマはどうなのだ?」 「いやあ〜、じつを云うとボクもまだ持ってないんだよね、アハハハ・・・」 「人のことを云えないではないかッ!!」 「何だよ、以前ゲームボーイア●バンスを尻ポケットに入れていたようなオマエに云われたくないよ! D●を手に入れたのもオマエが一番遅かったろ!ボクは絶対にオマエより早くW●iを手に入れてみせるよッ!!」 エンジ色のスーツの男が眼をむいて歯を食いしばる。彼が法挺で崩れた時にみせるアノ姿だ。 しかし、急に何かを思い出したように男は余裕を取り戻した。 「成歩堂、今日は久しぶりに顔を合わせるという事で私はコレを持ってきたのだ」 そう云いながら、胸のポケットから何かを取り出す。 「なんだよ・・・ソレ」 「君からの“手紙”だ」 「手紙?」 「そうだ、先日私の部屋を片付けている時に見つけたのだ。私が検事になったばかりの頃に君がくれたモノだ」 「えっ?!」 「成歩堂。お願いがあるのだが・・・私は君よりも早くにそのゲーム機本体を手に入れたいと思う。私にプレゼントしてはもらえないだろうか?」 「何で、ボクがオマエにゲーム機をくれてやらなきゃいけないんだよッ!」 手紙を手にする男がニヤリと笑った。 「そうか・・・では、この場でこの手紙を読ませてもらおう」 「お、オマエ。そういうの最低だぞッ!」 君は先ほど、私をいいように云ってくれたからな・・・そう云いながらゆっくりと手紙を開く。 必死にそれを取り戻そうと手を伸ばしかけた男の腕を両脇から二人が阻止する。 「おもしれえじゃねえか・・・是非たのむぜッ!」 「レイジ、早く読んで!」 今まで法挺では一度もこの男には勝利したことがない二人が、ここぞとばかりに力を合わせる。 御剣怜侍 様 お久しぶりです。ボクは小学校4年生の時に同じクラスだった成歩堂龍一です。覚えていますか? 君のことは新聞の記事で見ました。検事になったんだね、しかも最年少で。 君は子供の頃から優秀だったから・・・何度か直接連絡を取ろうとしたんだけど君は忙しいみたいで・・・ だから、こうして手紙を書く事にしました。君は4年生の終わりに突然、転校してしまったけどボクは“学級裁判”で、 もう一人同じクラスの矢張政志、そして君に助けてもらったことは今でも忘れていません。 だから君の事を新聞で見た時こんなにも会いたいって―――――――。 「・・・ゲーム機本体、プレゼントさせて頂きますッ!」 青いスーツの男が自ら負けを認めた。 「ちぇッ、もうおしまいかよ」 「残念だわ」 やりこめられた男が、意外な所にいた身近な敵の言葉を苦々しく聞く。 「御剣。返せよ、ソレ・・・」 名前を呼ばれた男が、冗談とも本気ともとれるような口調で答える。 「これは私にとっては“宝”だからな。ずっと所有させてもらおう」 そう云いながら男はソレを元あった通りにたたみ直し、静かに胸のポケットに仕舞い直した。 END |
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