Merry Christmas |
作者:
幸
2010年01月06日(水) 09時06分02秒公開
ID:HKDR9rnLXa2
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「あー!こら、イトノコさん!つまみ食いしちゃだめじゃないですか!」 「す、すまねッス!腹減っちまったッス・・・・」 バシッ! 「ヒゲ!やるとこがないならトイレ掃除でもしていなさい!」 「かるま検事さん、台所でムチを振り回してはいけません!没収です!」 「あっ!返しなさい・・・・何を笑っているの、ヒゲ!」 バッチーン! 「・・・・ずいぶんとにぎやかだな。」 「そうだなあ。ムチ、取り上げられたみたいだね、狩魔検事。」 「フッ・・・・心配するな、成歩堂。メイは平手打ちも得意だからな。楽しみにしておくといい。」 ・・・・確かに、そんなような音が聞こえたな。何が楽しみなのかわからないけど。 12月24日。今日の日付だ。 真宵ちゃん主催のクリスマスパーティー。 まだ午前中だけど、はりきった真宵ちゃんがもう準備を始めている。 不思議なのはなぜかヒトが集まっていることだ。イトノコ刑事はまだしも、狩魔検事、御剣まで。 そして、今、女の子たちは料理を作っている。ぼくと御剣は手伝えることがないから邪魔者扱いだ。 「それにしても、御剣。よくお前がイブの日にぼくの家にきたな。」 意味がよくわからなかったのか、コーヒーカップを片手に持ちながら渋い顔をする。 「招待状を送ってきたのはお前だろう?」 まあ、確かにそうだけど・・・・実際に書いたのは真宵ちゃんだ。 「御剣はイブには予定がありそうだったから来ないのかと思ってたよ。」 そう言うと、御剣は笑った。 「私はそういった付き合いは好まないのだ。」 堂々と言う御剣に、少し呆れる。 「そんなこと言ってるとお前、いつまでも結婚できないぞ。」 「余計なお世話だ。そういうきみこそどうなのだ?イブの日に会うヒトもいないのか?」 「う、うるさいな!ほっといてくれよ!ふたりとも同じじゃないか。」 「フッ・・・・同じにしてもらっては困る。私は自分からそうしないだけだ。誘われもしない貴様とは違う。」 「・・・・変わってないな、御剣。」 そういえば、と、御剣が話題を変える。 「矢張はこないのか?」 「ああ。一応招待状は送ったんだけど・・・・誰だっけな、エリさん?と暑い夜を過ごすんだ、とか。」 「あいつは、まだ懲りていないのだな。・・・・まあ、それも矢張らしいのか。」 確かに、あいつからそれを取ったら何もなくなるな。 〜♪♪♪ 「・・・・私か。ちょっと失礼する。」 携帯を持って御剣が立ち上がった。 ・・・・着信、トノサマンだったな。ぼくと同じじゃないか! 「そ、そのようなアレは・・・・困る!」 なんだ?珍しく焦ってるな、御剣。 「では、シツレイ。」 電話を終わらせて御剣が戻ってくる。 「どうした?仕事か?」 「いや・・・・女性からのお誘いだ。」 誘い?それにしては焦ってなかったか? 「そ、そんなことより・・・・今日はきみにプレゼントがある。」 「プレゼント?」 「まあ・・・・きみたちに、と言ったほうがいいか。もうすぐ来るだろう。」 「なんだよ、来る、って・・・・」 ピンポーン♪ 「どうやら来たようだ。私が出よう。」 そう言って再び立ち上がり、玄関へ消えていった。 「・・・・」 「・・・・」 何か話している声が聞こえる。だんだん声が大きくなってきた。 「成歩堂、プレゼントだ。」 そう言った御剣の声の後に、懐かしい声が聞こえた。 「おいおい、オレはものじゃねえぜ。」 ―――この、声は・・・・ 「よお。久しぶりだなあ・・・・まるほどう。」 「ゴドー検事・・・・」 数年前のあの事件から久しぶりに見たその人は、全く変わっていないように思えた。 「オレはもう検事じゃねえ。ただのオトコさ。」 「・・・・そうですよね。お久しぶりです、神乃木荘龍さん。」 神乃木さんは数年前と変わらなく微笑んだ。 「お前も一度、弁護士をやめたんだろう?そこの天才検事サンから聞いたぜ。」 気を利かせて離れたソファーに座っている御剣を見る。 「ええ。でもまた司法試験を受けて・・・・今は弁護士です。」 「まったく・・・・優秀なやつらだぜ。」 そう笑う神乃木さんを見ていると、何か物足りない気がした。 ―――そうか。 「あの・・・・コーヒー飲みますか?」 ぼくの問いかけに、少し驚いたように微笑んだ。 「懐かしいな・・・・この数年、全く飲んでねえ。」 「じゃあ用意します。」 カップにコーヒーを注いで手渡した。 「いつ、刑務所・・・・出られたんですか?」 コーヒーを一口飲んだ神乃木さんが答える。 「ついさっき、だ。その足でここに来た。」 「そうだったんですか・・・・」 「御剣検事から3日前に招待状をもらったんでな・・・・久しぶりに会いたくなったのさ。 よく面会に来てくれてはアンタの話をしていたよ。」 「御剣が、ですか?」 神乃木さんが静かに頷く。 「アンタが弁護士をやめた・・・・やめさせられたとき、か。 “彼を守ることができなかった自分が情けない”とか、自分を責めてやがった。」 ―――御剣・・・・ 「しばらくして、アンタがまた弁護士になったときも報告に来た。 いいことがあったんだと、一目見てわかったさ。気分を顔に出さない天才検事さんが、珍しく浮かれてた。 “あいつはすごい。決して後ろを向かず、前だけを見て進んでいる。だからみんなあいつに助けられる。”」 胸が熱くなるのを感じた。 御剣は、ずっとぼくを支えていてくれたのか。ソファーに座っている後ろ姿が、とても大きく見えた。 「ありがとうございます、神乃木さん。確かに・・・・最高のプレゼントです。神乃木さんも、その御剣の気持ちも。」 「ああ・・・・オレもさ。アンタと、またこんな話ができるとはな。ありがとうよ。」 「神乃木さん!!」 いきなり声がしたほうを向くと、真宵ちゃんが立っていた。 「よお・・・・元気だったかい?コネコちゃん。」 神乃木さんがそう言った途端、真宵ちゃんの表情が崩れた。目から大粒の涙がこぼれる。 「おっと・・・・泣かないでくれ・・・・コネコちゃんの涙を見るのは辛いぜ。」 神乃木さんが真宵ちゃんの前にしゃがむ。 「ご・・ごめんなさい・・・・嬉しいんです・・・・」 神乃木さんが微笑んだ。心からの笑顔だ。 「・・・・ありがとうよ。」 ぼくはその場を離れて御剣の隣に座った。 「ありがとうな、御剣。」 ぼくを見て、御剣は微笑んだ。 「ぼくだけじゃない。真宵ちゃんも、春美ちゃんも幸せをもらうよ。」 「フッ・・・・誘ったとき、神乃木さんも嬉しそうだった。きみたちに会いたかったのだ、彼も。」 「そっか・・・・ぼくも嬉しいよ。御剣のことも聞けたしね。」 私のこと?と、御剣が顔をしかめる。 「そうだよ。ぼくにとってはそれが1番嬉しいかな。ありがとう。」 「何のことだ?」 「いいんだ。・・・・ぼくは御剣が大好きだよ。」 御剣は少し驚いた顔をした。 「今さらなんの告白だ?・・・・まあ、私もある意味・・・・嫌いではないが・・・・」 「何?聞こえないぞ、御剣。」 からかって言うと、御剣は赤面した。 「う、うるさいッ!二度と言わんぞ!」 正直じゃないな、こいつは。 ―――でも、ちゃんと伝わってるよ。お前の気持ち。 「真宵さま!雪が降っていますよ!」 声のするほうを見ると、神乃木さんのまわりに全員が集まっていた。 「雪か・・・・今年、初だな。」 いつのまにか、全員が笑顔だった。 それぞれの思いがひとつになった瞬間かな、と思う。 ぼくも、たくさんの幸せをもらった。 だから・・・・ これからも、みんなで生きていくこと。 そして、ぼくがぼくのまわりのヒトを少しでも幸せにしたい。 それが、ぼくの願いです。 |
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