第一章 逆転のパーティ
作者: 快斗   2009年12月13日(日) 12時03分14秒公開   ID:mxrKH0pol5k
4月12日午前8時1分―成歩堂法律事務所―

「だーけどー、おーれにはーゆーめーがーあるー。」
成歩堂法律事務所からは楽しそうな声が、響いてる。事務所には、女の霊媒師が2人と、男の弁護士が一人いる。霊媒師の2人は、楽しそうに『大江戸戦士トノサマン』を歌っている。男の弁護士は、うるさそうに新聞を読んでいる。「もう少し、静かにしてくれないか。」と、言わんばかりの顔だった。しかし、霊媒師の2人はそんなことには気づかず、さっきよりさらに大きい声で歌い始めた。さすがの、男の弁護士もイライラしてきてるようだった。
とうとう、男の弁護士は頭にきたのか新聞をソファーに思い切り叩きつけるように置いた。新聞は、『バサッ』という音をたてて3cmほどソファーから浮かんだ。2人の霊媒師は、やっと新聞に気づき後ろを振り向いた。男の弁護士が怒っていることに、1人の霊媒師が気づいたようで一歩、後ずさりをした。もう1人の、霊媒師は顔に「?」マークが浮かんでいて首をかしげていた。
「真宵ちゃん!」
と、男の弁護士が怒鳴り声を上げたその時だった。
『ただいま、臨時ニュースが入りました。』
さっきまで、トノサマンというアニメが、ニュース番組に変わってしまった。すると、さっきまで叱られてた真宵という霊媒師が顔を真っ赤にして怒り始めた。突然!さっきまで、異性よく怒っていた男の弁護士がひどく焦りだした。そして、もう1人の霊媒師に小さい声で相談をし始めた。
(ねえ、春美ちゃん。真宵ちゃんを止めること出来ない?)
春美という霊媒師は、ハッキリ
「出来ません。なるほど君、残念ですがあきらめてください。」
と、答えました。
成歩堂(通常、なるほど。)は、がっくりと肩を落とした。どうやら、真宵は怒ると取り返しの付かないぐらい大変なことになるらしい。すると真宵は『ハッ』と、何かに気づきテレビの画面にクギつけになった。その時の真宵は、いつもの真宵とまったく違うことにことに成歩堂は、驚いていた。目つきは自分の集中しているものに夢中になり、拳は何かを言いたげにふるわせて、クチビルをかみ締めていた。その様子は、成歩堂にとって法廷にいる―
「千尋・・・・さん・・・?」
思わず口に出てしまった。成歩堂は、あわててその口を両手で押さえた。
千尋というのは、成歩堂の永遠の師匠であり、真宵の姉だ。運の良いことに、真宵はテレビに夢中で成歩堂の声は耳に届いてなかった。成歩堂は、ため息をついてテレビを見ることにした。
『昨日のパーティ会場で殺人事件が起き、一人の女性が殺害されました。被害者の名前は、 綾乃 舞(あやの まい)<28>。そして今朝、被告人を捕まえました。名前は綾乃 由羅(あやの ゆら)<19>、被害者の妹ということです。このことを証拠に警察は調査を続けているとのことです。以上、臨時ニュースを終わります。』
真宵は静かに、リモコンを持ちボタンを押してテレビの電源を切った。その後ろ姿は泣いているようにも見えた。すると、成歩堂は何かを決心したように立ち上がり、いつもの青いスーツを白いポロシャツの上に着て出かける準備をした。真宵がハッと顔を上げた、目元は涙で濡れていた。成歩堂は、
(やっぱり泣いてたんだ。)
と思った。すると、真宵が成歩堂にあることを聞いた。
「な、なるほど君。どこに行くの?」
成歩堂は、一回笑い顔を見せて言った。
「もちろん。弁護をしにいくんだよ。」
と、答えた。真宵は、また目から涙を流していた。でも、真宵は涙を左手でふいて、意味ありげな笑みを浮かべ、何かを口に出してから事務所のドアを開けた。成歩堂には何を真宵がつぶやいたか解からなかった。真宵に呼ばれて、考える余裕も無く事務所を出た。

同日午前9時45分 面会室

「だーかーらー!私は、お、お姉ちゃんのししし死体を、見ちゃった・・・・だけ、だから・・・。お、お姉ちゃんの、死体を・・・・。」
面会室には、警官と話している女の子がいた。その子は、御札を握り締めていて真宵のように妙な服を着ていて、勾玉の形をしたアクセサリーで両髪を結んでいた。成歩堂には、気のせいか真宵に似ているような気がした。
「あの子かな?犯人。」
真宵は疑いのまなざしで女の子をみつめている。特に、その子の服装をやけに見ていた。
「犯人の子、妙な服装してるよ、変な子。霊媒師みたいだね。」
「犯人っていうなよ。それに、真宵ちゃんも変な服装だし・・・・。むしろ、あの子の方がまだ髪型はましだよ。・・・・僕としては。」
真宵は言い返せないのか、黙り込んでうつむいてしまった。成歩堂は、(言い過ぎたか・・・・。)と真宵を横目で見ながら反省した。すると、女の子は成歩堂達に気づいたのか大声で、「おーーい!」と呼んでいた。成歩堂はあわてて駆け寄って行った。女の子は、ぺコリと頭を下げてあいさつをしたが、面会室のガラスに頭を『ガン!』とぶつけた。
「痛ったーー・・・・。あ!すいません!!!私は綾乃由羅と言います。単なる、霊媒師です。あ、怪しくは無いですよ。だって、霊媒師ですよー。」
(十分怪しいな・・・・。)
成歩堂は、「こんなんで、大丈夫なのか?僕の依頼人は・・・・。」とつぶやいた。すると、由羅は真宵の方をじーっと、見つめるといきなりポン!と、手を打った。
「あなたって、霊媒師?」
と、聞いた。すると、真宵は手をパチパチ叩いた。
「何で、解かったの?」
と、真宵が聞くと由羅は、トンでもない答えを返した。

「お姉ちゃんに聞きましたから。」

「へー、そうなんだ・・・・、ってえええええええ!?」
成歩堂はあまりの答えに、つい大声を上げてしまったのだった。何故、由羅のお姉さんが真宵のことを知っていたのか、霊媒師だと言うことは服装を見ただけでは解からない。それなのに何故・・・・。成歩堂自身は、まだこの事件の真相をつかみきれていなかった。あと、成歩堂にはもう一つ気になることがあった。真宵は、由羅が発言した言葉に見向きもしなかった。まるで、あらかじめそのことを知っていたように・・・・。真宵からそのことについて質問したのに、その答えに耳をかたむけない。真宵と、由羅に何かしらの関係があるのかと、考えていたその時、真宵が成歩堂の青いスーツを軽く引っ張った。


(真宵・・・・ちゃん?)


成歩堂は、真宵の顔を『じーっ』と見つめた。真宵はうつむいたまま何も語らない。しかし、真宵の口はあきらかに何かを伝えたさそうに震わせていた。成歩堂は、一生懸命に真宵の伝えたいことを読み取ろうとしたが何も解からなかった。
「あの――・・・・、お二人さん?」
待ちきれなくなったのか、突然由羅が不安げな顔をして成歩堂達に声をかけた。成歩堂と真宵が同時に顔を上げ由羅を見た。由羅は、『ホッ』としたように思い切り握り閉めていた拳を開いた。しかし、また次の瞬間由羅の顔がこわばった。
「あ、あのー・・・・成歩堂さん?私、自分の弁護の依頼を頼みたいんですけど、良いですか?」
おどおどしている由羅を見た真宵は面会室の机を思い切り叩いた。さっきまで、落ち込んでいるようにも見えた真宵がいきなり元気よくなったのだから、成歩堂も由羅もおどろいた。
「あのね、なるほど君に弁護を任せとけば100%無罪になれるんだよ。だから、心配しなくてもいいんだよ。」
真宵が口からでまかせを、言っている間、成歩堂はプレッシャーに押しつぶされかけていた。由羅は、真宵の最後のでまかせに笑顔で
「本当ですか!?」
と言った時、真宵は胸を左手で「ポン」と叩き
「任せといて!」
と、大声で叫んだ。由羅が「わーい!」と無邪気に微笑んで安心している姿を見て真宵は、わざとらしい微笑みを、ずっと見せていた。そんな真宵を見て、成歩堂は少し引っかかる点を思い出した。
(そういえば真宵ちゃん、ニュースを見ている時にかなり驚いていたよな・・・・。)
成歩堂は、何かを決心したように勾玉(まがたま)を握り締めた。
「じゃあ、話を聞かせて。」
真宵が突然、由羅に事件の話を聞き出した。由羅は、少し困った顔をした。
「あの・・・・、今は、その、あまり事件のことは・・・・話したくないんですけど。お姉ちゃんのことを思い出してしまうんで。」
由羅は、申し訳なさそうに顔を下げた。成歩堂は
「それなら一旦、事務所に戻るから。後でここに来る時には言えるようにしといてね。」
と言った。由羅は、笑顔で
「は、はい!解かりました。」
と、元気よく答えた。その答えを聞くと、成歩堂は面会室を真宵と一緒に出て行った。
同日午前10時12分 成歩堂法律事務所
「お帰りなさいませ。」
春美が2人を向かえていた。
「は、春美ちゃん・・・・?」
(忘れていた・・・・)
成歩堂は、そんなことを考えながら真宵の方を向いた。
「ねえ、真宵ちゃん。」
「な、何?なるほど君」
いつもと何かちがう成歩堂に真宵は少し驚いていた。
「正直に答えて。由羅ちゃんに、何か心当たりがあるの?」
真宵は、今にも本当のことをしゃべってしまいそうになり、口をふさいだ。
「ままま、まさか。い、今さっき会ってきたばかりだよ。そんなはずないじゃん。」
その、いかにも嘘っぽさそうな棒読みの言葉に勾玉は、反応した。
『ガガガガガ   ガシャン・ガシャン・ガシャン・ガシャン・ガシャン』
「うぐっ!」
成歩堂は、いかにも嘘っぽい言葉にロックが5個という事実に思わず叫んでしまった。
「ま、まさか・・・・、みえちゃってる?」
真宵は恐る恐る聞いた。成歩堂は首をタテにふった。
「うん。しかも五つ。」
真宵は、がっくり肩を落とした。
(もう、訳がわからないぞ。
由羅ちゃんが事件を話したがらない秘密。
真宵ちゃんと、由羅ちゃんの関係。
いったい、この事件の真相はどんなことになるんだ?)



続く
■作者からのメッセージ
春美の出番が少なくなってしまいました。
次回は、もうちょっと増やしたいです。

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