黒い仮面と狼
作者: 10join   2009年10月25日(日) 18時22分37秒公開   ID:yI0DTBIFyLM
4月1日 午後10時15分 金田金融応接間

「警備をしっかり固めておけ。絶対に取り逃がすなよ」 
 オレは狼士龍。国際捜査官だ。オレがここの警備をしているのには理由がある。
「しかし本当にヘルジョーカーは現れるんでしょうか。こんな警備がいては来ないんじゃないですか?」
 そう。怪盗ヘルジョーカーから予告状が届いたからだ。
「アマいな!あいつは予告状を出した時間には必ず来る」
 しかも今回は密輸品じゃなくて応接間にある有名な作家が描いた絵が目的だ。今度こそあいつのツラを拝んでやるぜ。
「でもこれいつもの予告状と違いますよ。黒い仮面のそばに3本足の鳥が飛んでますし」
 確かに前見たヘルジョーカーの予告状は黒い仮面だけだったな。
「ああ、それはな」
「「ヘルジョーカーがヤタガラスと手を組んだからだ」」
 聞き覚えがある声がしたから振り向くと、銀髪で紫の眼をした双子くんがいた。ヘルジョーカーの事件には必ず来るというのは本当だったみたいだな。
「や、ヤタガラスって企業の不正の証拠をマスコミにリークするっていうあの義賊ですか?!なんでそんな大物がヘルジョーカーと?」
 その警官は信じられないという顔をしている。まあムリもないだろうがな。
「前ヘルジョーカーが予告状を出した貿易会社があっただろ。その時にヤタガラスも来てたのは知ってるな」
 オレが聞くとその警官はうなずいた。
「はい。ニュースでもやってましたから。でも何で手を組んでるって言えるんですか?」
「ヤタガラスのカードが置いてあって、窓が開け放たれていた。資料室に向かったヘルジョーカーがヤタガラスに会って一緒に窓から抜け出したと考えるのが自然だろ」
 警官はやっとわかったという顔をしてうなずいた。

「「そろそろ時間だ。1分前…、30秒前、…10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」」
 双子くんのカウントダウンと共にオレと話してた警官が地面に何かを投げつけた。それと同時に煙が噴出した。
「なっ?!」
 煙が収まった時にはヘルジョーカーは絵を持って窓枠の上に立っていた。一体どんな速さで動いたらここから絵をとって窓まで行けるんだよ。
「ありがとうウルフ。おかげでいいヒマつぶしになったよ」
 ヘルジョーカーはニヤリと笑って手を振りながら窓から飛び降りた。すぐにハンググライダーが開いて空中に浮いた。
「クソ!待ちやがれ!」
「待てと言われて待つわけないだろ」
 ヘルジョーカーはそう言いつつも窓のそばでグルグル飛び回っている。なんでまだ逃げないんだ?余裕のつもりなのか?
「多分資料室に行けばわかるぞ」
「もう手遅れだとは思うけどな」
 双子くんが言うのと同時に誰かが資料室の窓から飛び降りた。ヘルジョーカーがすぐに飛んでいって空中でキャッチする。
「はあ死ぬかと思ったー。ありがとうございます師匠」
 落ちてきたのは資料を持ったヤタガラスのじょうちゃんだった。カラスをかたどった仮面をつけている。
「気にしないでいい。それより初仕事うまくできたな。偉いぞヤタガラス」
 ヘルジョーカーはじょうちゃんの頭を撫でた。
「えへへ」
 じょうちゃんは照れくさそうにしている。多分頬が赤くなってるだろう。仮面をつけてるからよくわからないが。
「まさかヤタガラスのじょうちゃんまで来てるとはな」
「あ、ウルフだ。久しぶりー」
 じょうちゃんはオレに向かって手を振った。仮面つけてるのにバレてることは気にしてないみたいだ。多分気分の問題なんだろう。
「それじゃ用はすんだから帰らせてもらうよ。じゃあな」
「じゃあねウルフー」
 ヘルジョーカーはそう言って飛び去っていった。じょうちゃんは見えなくなるまで手を振っていた。

「あれがヘルジョーカーか。確かに手ごわい相手だな」
 しかもあれで全く本気を出してない。一体どこから出てくるんだあの余裕。かなりムカつくぜ。
「そうですね。この国の警察がてこずっている理由がよくわかりました」
 オレの部下はそう言って深くうなずいた。こいつもヘルジョーカーの力を感じとったようだ。
「とりあえず資料室に行ってみるか」
「いい具合にバラまかれてるだろう」
 双子くんはそう言って資料室に向かっていった。いくらなんでも切り替え早すぎるだろ。
「おい待てよ。警察より先に調べるな!」
 オレは急いで双子くんの後を追った。

      おわり

 

 

  
■作者からのメッセージ
久しぶりに投稿してみました。これからも気が向いた時に投稿していくのでよろしくおねがいします。

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