宝物
作者: 幸   2009年07月26日(日) 23時05分51秒公開   ID:4L8/384DMeM
2月10日 午後10時26分
今日、ひとつの事件が幕を閉じた。
今まで勝訴のお祝いをしていたところで、
みんな疲れて眠ってしまっている。

本当に色々なことがあった・・・・
あやめさんとの出会い。エリス先生の死・・・・綾里舞子。急流の川に落ちた。
真宵ちゃんがいなくなった。綾里キミ子の執念。
春美ちゃんが霊を呼べなくなった。
ゴドー検事の過去。美柳ちなみの復讐・・・・
そして、真実。
あまりにも悲しく、そして・・・・優しい事件だった。
全て、誰かが誰かのためを思った気持ちの塊・・・・本当に、全て。
僕もその気持ちに助けてもらった。あいつがいなきゃ、今ごろ事件は終わっていないだろう。
最悪の事態も考えられた。本気で感謝しないとな・・・・
「どうした?成歩堂。具合でも悪いか。」
いきなりの声にびっくりして振り返った。
「み・・・・御剣。おどかすなよ・・・・」
そう、まさに今考えていた人物。御剣怜侍。
「こんな暗いところで何をしている?」
そう言って隣のソファーに座る。
「ああ・・・・みんなは?」
「ぐっすり眠っている。よほど疲れたのだろうな。」
「そうか・・・・」
「どうした?何かあったのか?」
こいつは、冷静に見えて本当に心配性だ。優しい奴なんだよな。
「いや何も無いよ。昨日、どうだった?」
「昨日?」
「弁護士になった気分。」
聞きたかったんだ。無理な頼みをしてしまったから。
「ああ・・・・正直言って、あそこの席は体に悪い。」
御剣の言葉に、僕は吹き出した。
「寿命が縮まるよな。」
「ああ。・・・・だが・・・・」
「?」
「・・・・いいものだな。人を守るというのは。」
御剣は微笑んでいた。
「・・そうだな。」
外には、雪が降り始めていた。
「綺麗だな・・」
ふと、御剣が呟く。
「血にまみれた雪より・・全然、綺麗だ。」
言ってから、少しうつむいた。
「私たちが仕事をするとき・・・・法廷に立つときは、誰かが亡くなるときが多い。
たまに・・分からなくなるときがあった。死者は戻らないのに、何のために人を裁くのか。
私とは・・何なのか。」
静かに語る奴に、初めて弱気な御剣を見た気がした。
「しかし・・私は間違っていなかった。今日、心からそう思ったよ。
真実は、法廷での<有罪><無罪>だけではない。
人の心にも、ちゃんと存在するのだな・・・・」
御剣の笑顔は。穏やかだった。
「・・僕も、今日改めて気づいたことがあるんだ。」
御剣が顔をあげて僕を見る。
「お前だよ。僕は、本当に・・心から御剣を信頼している。」
奴は、照れたように笑った。
「・・私は、いまさら言わんぞ。」
お前らしいなと、僕も笑った。
「・・・・御剣、ありがとう。」
御剣は、分からないという顔をした。
「何のことだ?」
「全部だよ。僕はもう何度お前に助けられたか分からない。」
「フッ・・君だけじゃないだろう。私だって救われた。君の人を思う気持ちに。
私は人の優しさや温かさなど知らなかった。全て君に教えられたのだ。成歩堂。」
「僕だって・・・・御剣に、強さや大切なものをもらった。」
僕たちはどちらともなく微笑んだ。

このお互いの思いは、きっと永遠に色あせることのない・・・・
<友情>という名の宝物だ。
僕らの心の中で、ずっと輝き続けるだろう。
■作者からのメッセージ
文章が下手でお見苦しいところもありますが、
読んでいただけたら嬉しいです。
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