黒い仮面と八咫烏 |
作者:
10join
2009年05月31日(日) 21時27分48秒公開
ID:yI0DTBIFyLM
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3月26日 午後9時57分 銀河貿易10階 ごきげんよう諸君。怪盗ヘルジョーカーだ。今オレがいるのは銀河貿易。ある密輸組織とつながっている企業だ。某蜘蛛男の敵と同じ名前のボスは逮捕されたけど密輸組織の活動事態は続いている。この企業は荷物の中に美術品を隠して輸入して、闇の市場で高値で取引している。今回のターゲットは盗まれた国宝級のイヤリングだ。切札美術館に飾られるかは微妙だけど放っておくわけにもいけない。それに実物をこの目で見るのも悪くないだろう。 「イヤリングが隠されているのは…これか」 オレは直感で輸入品の机を調べてみた。すると引き出しが二重構造になっている。取り外してみるとターゲットのイヤリングが入っていた。間違いなく本物だ。 「こちらヘルジョーカー。ターゲットは問題なく手に入った」 『了解』 これで任務完了だ。他にも密輸品はあるだろうけどそこは警察に任せておけばいい。念のため二重構造がバレるようにこのままにしておこう。オレは小型スピーカーを大音量にセットした。普段だったら警察の目の前でトリックを使って盗む所だけど、今回は美術品の場所自体伝えられるわけがないから警察の手が行き届いてない。企業の警備も変に厳重にしたら警察にバレるから動けなかった。穴が多い分いつもよりかなり楽勝だったな。 「ついでに密輸の資料の場所もわかるように荒らしておくか。あまり意味ないけど」 オレは部屋を出て時間が来てから音楽プレーヤーを鳴らして資料がある部屋に向かった。 ヘルジョーカーの予告の時間が来たら曲が聞こえてきた。まさか本当に予告時間になったら音楽を流すとは思わなかったよ。そこらへんで慌しく動く足音も聞こえる。どうしよう。ヘルジョーカーに会えるかもしれないと思って初仕事にこんな所に来るんじゃなかったよ。 「そこにいるのは誰だ?」 うわ。見つかっちゃった。どうしよう。 「お願い。見逃して!こんな所で捕まっちゃったらヤタガラスの名を汚しちゃう」 「ヤタガラス?なんだ先客か。てっきり警備かと思った」 それを聞いてわたしは思わず振り向いた。見てみると仮面をつけた黒ずくめの道化師がいた。 「か、怪盗ヘルジョーカー?!なんで音が他の所で鳴ってるんですか?」 「スピーカーを置いといた。ヘッドホンしてたから気付かなかったみたいだな」 そう言ってポケットから音楽プレイヤーを取り出した。なるほど。だから音が近づいて来なかったんだね。 「ところで君はヤタガラスと名乗ってたな」 「うん。わたしは一条美雲。二代目ヤタガラスだよ」 「だろうな。初代じゃ年が合わない」 そりゃわかって当然だよね。お父さんとバドウさんとカズラさんが活動し始めたのは10年前だもん。 「それで美雲ちゃんは企業の密輸の証拠を盗みに来たのか?」 「もちろんそれもありますよ。でも一番の理由はヘルジョーカーに会いたかったからです。お願いします。私を弟子にしてください」 わたしがそう言うとヘルジョーカーは少し困ったような顔をした。でも足音が聞こえてきた瞬間に書類をわかるように散乱させた後わたしに資料を2、3枚渡した。 「マスコミにリークするのはこれくらいでいいだろう。後ヤタガラスのカードを置いていくといい」 確かにそれもそうだね。わたしは言われた通りヤタガラスのカードを置いた。それより一体どうやってここから脱出するの? 「もちろん窓からだ」 「ええ?!ここ10階ですよ」 ヘルジョーカーはわたしを抱えて窓から飛び出した。思わず目を閉じたけど全く落ちる様子がない。上を見てみるとヘルジョーカーに黒い翼があった。わたしたちはハンググライダーで飛んでたんだね。 「オレはアジトに帰るけど君も来るか?」 ヘルジョーカーはボソリとつぶやいた。 「それって弟子にしてくれるってことですか!?」 「君はなんか危なっかしいからな。目を離したほうが心配だ」 なんか引っかかる言い方だね。まあ大ドロボウの修行ができるんならいいか。 「ありがとうございます」 「気にしなくていいよ。それじゃ行くぞ」 「はい!」 ヘルジョーカーはアジトに向けてハンググライダーを飛ばした。 3月26日 午後10時21分 ヘルジョーカーのアジト ヘルジョーカーは割りと普通の家の上に降り立って窓から侵入した。もしかしてここがアジトなの? 「ただいま」 やっぱりそうみたい。わたしは窓枠に腰掛けて靴を脱いだ。その間にヘルジョーカーも仮面を脱いだ。結構タイプかもしれない。 「あ、帰ったんですか。あれ、誰ですかその子?」 奥からやせた男の人がやってきた。そう言えばヘルジョーカーって仮面の絵札っていう組織のリーダーだったかな。この人はトレースエースって所かな。 「一条美雲ちゃん。二代目ヤタガラスだ。美雲ちゃん、こいつは嘉匁蓮恩。ご察しの通りトレースエースの別人格だ」 やっぱりそうなんだ。でも別人格ってどうゆうことなの? 「オレたちは仮面をつけると別人格が出てくるんだ。そしてその人格の欲求に合わせた能力が発揮されるんだ。オレの場合は悪いヤツから盗む衝動と、天才的な盗みのセンスだ」 なるほど。だからターゲットは全員なんらかの悪事の証拠が出てきたんだね。 「ぼくの場合は変身能力ですね。どうやら人になりきるのが好きなようです」 変身ってもはやなりきるってレベルじゃないよ。 「そうなんですか。よろしくお願いしますね」 「こちらこそよろしく」 蓮恩さんと話していたらドアが開く音がした。 「二代目ヤタガラスってことはおれたちの仲間になりに来たってことか?」 隣の部屋から大柄ですごい筋肉の男の人が来た。 「もしかしてデストロイアキングですか?」 「よくわかったな。おれは豹島大だ。よろしく」 「一条美雲です。よろしくお願いしますね」 大さんとあいさつをしてるとすごくきれいな女の人が出てきた。 「ふーん。あなたが二代目ヤタガラス?かわいいわね」 「あ、ありがとうございます。わたし一条美雲って言います」 「魅山望よ。コードネームはアリュールクイーンよ。よろしくね」 やっぱりそうだったんだ。後はサイバージャックだけね。 「一条美雲。ヤタガラス3人組の一人、一条九郎の一人娘。最近まで父親を殺した密輸組織を倒すために御剣検事に協力した。父の形見のぬすみちゃんと言う現場を立体的に再現する道具で真実を解き明かすのに役立った」 ノートパソコンを持った人が入ってきてすぐそんなことを言った。なんでそんなにくわしいの? 「おれは電磁流。サイバージャックの別人格だ。そんなデータすぐに手に入る」 そりゃそうだろうけどもうちょっとプライバシーを考えてよね。 「ごめん。ちょっと悪いクセが出た」 流さんって案外素直なのかもしれない。 「いいんです。気にしないでください」 わたしがそう言うと流さんはほっとした顔をした。 「そんなことより本当にオレの弟子になるつもりか?オレたちのやり方はヤタガラスとは違うぞ」 確かにその通りだ。予告状を出すのはもちろん、テーマ曲まで流して存在を目立たせている。狙われてることすら気付かせないでマスコミに情報をリークしてカードだけ残すヤタガラスとはかなり違う。 「それでも真実を明らかにしたいって気持ちは同じです。ヤタガラスの心を失うことはありません」 わたしの言葉にヘルジョーカーは微笑んで手を出した。 「オレは日渡空悟だ。これからよろしくな美雲ちゃん」 「はい。よろしくお願いしますね空悟さん」 わたしと空悟さんは固い握手を交わした。 その時からヘルジョーカーの予告状は少し変わった。黒い仮面の傍らに三本足の烏が書かれるようになった。ヘルジョーカーとヤタガラス。二つの黒い影が今日も夜空を飛翔する。闇の中に隠された真実を求めて。 おわり |
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