逆転NOTEエピローグ |
作者:
10join
2009年05月24日(日) 18時47分09秒公開
ID:yI0DTBIFyLM
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同日 午後1時42分 被告人第4控え室 これでやっと白夜さんの裁判が終わった。大変だったけど白夜さんの無罪が証明できてよかった。 「ありがとう成歩堂くん。おかげで命拾いしたよ」 「白夜さんを助けていただいてありがとうございました」 白夜さんと星歌さんがぼくにお礼を言ってきた。 「気にしなくていいです。困ってる人を助けるのが弁護士の仕事ですから。それにぼくの力だけではこの事件は解決できなかったでしょう。みんなが白夜さんを救おうとした結果ですよ」 本当にみんながいなかったらぼくは真実を導き出せなかった。というよりぼく一人だけでどうにかなった事件なんてなかった。いつも支えてくれる人がいるからぼくは戦えるんだ。 「それにしても心臓に悪い裁判だったな」 空悟君がしみじみとして言った。 「「俺たちも空悟に同感だ」」 無限君と零樹君がいつものように息をピッタリと合わせながら言った 「何度もうダメだって思ったことか」 紫音ちゃんも溜息をつきながら言った。別にそこまで言うことないだろ。確かにギリギリだったけどさ。 「まあまあ。いつものことじゃん」 真宵ちゃんがそう言った瞬間みんな笑い出した。いくらなんでも笑いすぎだと思う。確かにいつも崖っぷちなのは間違いないけどさ。 「あ、あの白夜さん、星歌さん」 それまで黙っていた春美ちゃんが口を開いた。 「なんだい春美ちゃん」 白夜さんがやさしげに尋ねた。 「星歌さんのお腹の中には白夜さんの子供が宿ってるんですよね?」 「うん。できればもっと平和的な手段で知りたかったけどね」 確かにデスノートで死なないかどうかで知りたくない。どうせなら病院でちゃんとした検査を受けて知りたい。普通だれでもそう思うはずだ。というより普通妊娠の検査って死ぬか生きるかってものじゃないだろ。 「それなら一体どうやったら子供ができるか知ってますよね?」 春美ちゃんがものすごく無邪気に聞いた。「う、うーん。どうかな」 白夜さんがここまで戸惑ってるのは初めてだ。やっぱり答えにくいのかな。 「そ、そういう話は春美ちゃんにはまだ早いんじゃないんですか?」 星歌さんがはぐらかすように言った。ぼくも春美ちゃんにはまだ早いんじゃないかなと思う。 「お願いします。真宵様となるほどくんのために教えてください」 な、何を言ってるんだ春美ちゃん。思わず顔が赤くなってきた。 「ちょ、ちょっとはみちゃん!」 真宵ちゃんも顔を赤くしてあわてている。一体どうすればいいんだろう。 「「まあまあ落ち着いて春美ちゃん」」 無限君と零樹君が春美ちゃんをなだめるように言った。 「いやです!真宵様となるほどくんの将来のためにもひけません!」 春美ちゃんはまだ興奮している。無限君と零樹君はどうやって春美ちゃんを説得するつもりなんだ? 「「二人とももう間に合ってるってさ」」 無限君と零樹君が言った瞬間時が止まった。 「つまりもう実践済みで、しかもできてるってことか?」 空悟君がやけに冷静に質問した。 「「その通り」」 無限君と零樹君はニヤリとしながら言った。 「ど、どうしてそんなことがわかるんだ?」 確かに真宵ちゃんとぼくに子供ができてもおかしくはない。でもなんでそんなことがわかるんだ? 「もしかして紫色の眼の力?」 紫音ちゃんの言葉に無限君と零樹君がうなずいた。紫色の眼にも何か意味があるのか? 「まず言いたいのは霊力があるのかと幽霊が見えるかは別だってことだ」 「そのことは真宵ちゃんと春美ちゃんが一番よく知ってることだろう?」 そうなのか?霊力があれば幽霊が見えると思ってたんだけど。 「言われてみればそうなのかも。お姉ちゃんやちなみさんが近くにいるなんて言われてもわからないし」 「そうですね。もし霊力があれば見えるんなら私たちも千尋様やお姉さまが見えるはずですよね」 真宵ちゃんと春美ちゃんが首をひねりながら言った。 「多分霊力の使い方の問題なんじゃないのか」 「綾里家には幽霊が見える必要は全くないだろ」 そういえばそうだな。よくわからないけど綾里の力って幽霊を他から呼び出して自分の身に憑依させる力みたいだ。別に幽霊が見えていても見えてなくても関係ないだろう。 「でもこっちはそうはいかない。その場にいる幽霊を操る力がいるから霊魂ぐらいは見えてないとダメだ」 「それでもいつでも見えてると精神的にきついから霊力を調節して見ないこともできるようにしたらしい」 無限君と零樹君は他人事みたいに言った。そりゃ見えるかどうか調整できても意味ないだろうな。赤い眼でいつも見えてしまうんだから。 「俺たちの紫の眼は幽霊を見ると言う意味では使えなくなった」 「その代わりに俺たちは魂を見る力がかなり強くなったんだ」 魂を見る力?それで真宵ちゃんが身ごもってるってわかったのか。 「そういうこと。まあこれくらいはまだほんの序の口だけどな」 「魂を見ればその人がどんな人かや、感情もわかっちまうんだ」 そこまですごいのか。よくわからない力だな。 「とにかくよかったね二人とも」 白夜さんが言うのと同時にみんなが拍手した。ぼくもなんだか照れくさい。でも真宵ちゃんと春美ちゃんはなぜか少し複雑な表情をしている。一体なにか心配なことがあるのか? 「…ねえ。その眼って赤ちゃんに霊力があるのかわかるの」 真宵ちゃんが無限君と零樹君に言った。なぜか不安そうに言った。 「そりゃわかるけどさ」 「言ってもいいのか?」 無限君と零樹君も言葉を濁した。もしかして何か知ってるのか? 「うん。どうせならすぐにわかったほうがいいから」 無限君と零樹君は顔を見合わせた。 「「…ある」」 その言葉を聞いて真宵ちゃんと春美ちゃんはもっと複雑な顔になった。 「そうなんだ。教えてくれてありがとね」 それから事務所に帰るまで真宵ちゃんは落ち込んだままだった。 「ねえなるほどくん…」 真宵ちゃんは事務所についてしばらくしてつぶやいた。なんだかさびしそうに聞こえた。 「何?真宵ちゃん」 ぼくが尋ねると真宵ちゃんは顔をうつむけた。 「あたし倉院の里に戻らないといけなくなっちゃった」 真宵ちゃんはいきなり衝撃的なことを言った。 「…どうして?」 ぼくは思わずそう聞いた。真宵ちゃんの様子を見る限り何か事情があるみたいだったからだ。 「倉院の里には霊力がある女の子を産んだら8年は事情がない限り里を出ないで育てないといけないっていう決まりがあるの」 8年も?もしかして千尋さんと真宵ちゃんの年齢が離れてるのもそのせいなのか? 「そう。しかも相手の男の人とは結婚しちゃいけない。そうしないと綾里の名前が残せないからなの。綾里には女の子しか生まれないから」 そう言えば綾里家の男の人って見たことがないかもしれない。まさか一人も生まれないなんて思いもしなかった。 「そして霊力があるとわかった時点から1週間以内に里に帰らないといけないの。できるだけ早く倉院の里の霊力を取り込まさせないといけないんだってさ」 それじゃ真宵ちゃんは一週間後には帰らないといけないってことになる。どうにかすることはできないのか? 「ムリだよ。少なくとも1人目の時は掟を守らないと里に大きな災いがふりかかるんだってさ。どういうのが起こるのかはわからないけど」 なるほど。真宵ちゃんのお母さんが失踪した時は千尋さんは掟を守って育てたからその災いは起こってないってことか。それにしても無限君と零樹君はそんなことまで知ってたのか? 「そうみたいだね。どうしてなのかは知らないけど」 真宵ちゃんは言い終わってからぼくに抱きついて泣いた。ぼくは何も言わずに抱き返すことしかできなかった。 「ねえなるほどくん」 泣き終わってから真宵ちゃんがつぶやいた。 「何?真宵ちゃん」 「時間がある時でいいから倉院の里に来てくれる?」 真宵ちゃんはさびしそうに言った。 「ああ。できたらね」 「もし家元をやめたくなったらまた戻ってきてもいい?」 真宵ちゃんは不安そうに言った。 「もちろん。真宵ちゃんの居場所はちゃんと守っておくから」 ぼくがそう言うと真宵ちゃんは満面の笑顔になった。 「ありがとう。大好きだよなるほどくん」 真宵ちゃんはそう言いながらぼくにキスをした。 「ぼくもだよ真宵ちゃん」 ぼくもキスを返した。この後ぼくたちの様子を一部始終見ていた春美ちゃんにはずかしいことを言われたのは言うまでもない。 あれから一ヶ月くらいたった。ぼくの隣にはもう真宵ちゃんも春美ちゃんもいない。しかも今度の事件は別の弁護士からぼくに回ってきた。当然準備が整ってないのでなんとか引き延ばしたいところだ。まあなんとかするしかないだろう。なんとしても被告人のマジシャンの無罪を証明してみせる。相手は17歳の天才検事らしい。少し不安だけどいつも通り被告人を信頼して立ち向かうだけだ。 ―――この裁判で弁護士生命が終わることになるとはあの時のぼくは夢にも思わなかった。 終わり |
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