逆転NOTE26 |
作者:
10join
2009年05月17日(日) 18時52分50秒公開
ID:yI0DTBIFyLM
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「星歌!」 白夜さんは悲痛な叫びを上げながら星歌さんの体を支えた。目からは涙があふれている。 「どうだ白夜。自分の無力さを思い知っただろう!私をバカにしたらどうなるか思い知ったか!」 倉杉さんは勝ち誇ったように言った。白夜さんは言い返す気力もないのかただうつむいていた。涙が星歌さんの頬に落ちる。 「ん…」 その時星歌さんの口から声が漏れた気がした。気のせいかピクリと反応したようにも見える。 「…星歌?」 白夜さんは星歌さんにそっと呼びかけた。すると驚いたことに星歌さんはゆっくりと目を開けた。 「びゃ、白夜さん?」 星歌さん自身も何で自分が生きてるのかわかってないみたいだ。 「ゆ、夢じゃないよな。本当にぼくの愛しい星歌かい?」 白夜さんは戸惑いながら言った。こんな時でも白夜さんはのろけるんだな。 「はい。私はあなただけの星歌です」 星歌さんがそう言うと白夜さんは満面の笑みになった。多分涙も嬉し涙になってるだろう。 「よかった…。本当によかった」 白夜さんはそう言いながら星歌さんを抱きしめた。 「私も同じ気持ちです」 星歌さんも白夜さんを抱き返した。ぼくたちはみんな感動しながら二人に魅入っていた。 「なぜだ!?なぜ星歌が生きてるんだ!確かにノートに名前を書いたはずだ」 ただ一人倉杉さんだけは別だった。もっと空気を読んでほしいと思う。あの人にはムリな相談かもしれないけど。 「またニセモノだったんじゃないんですか?」 裁判長がかなり適当に言った。もう少し感動の余韻にひたっていたかったのにジャマされていらついてるんだろう。 「そんなはずがあるか!私は確かにノートを切り取って警察手帳にはさんでから燃やした。どう考えてもニセモノのはずがない!」 倉杉さんが言っていることは事実だ。ノートから切り取ったものがニセモノのはずがない。すりかえることもできなかったはずだ。本人でさえ知らないものを周りが知っているわけがない。 「これは夢だ。そうに決まっている。そうじゃなかったら作者のあの反応はなんなんだ!」 倉杉さんは現実を受け止められないみたいだ。でも作者のことに関しては同感だ。一体作者はなんであんなに何かをこらえてたんだ? 『ぷ』 突然傍聴席で誰かが吹きだした。見てみるとそこには作者がいた。 『ククク、フフフフ、ハーッハッハッ。は、腹痛ぇ。ケケケケケ、クフフフフ、ヒョーッヒョッヒョッヒョッ。な、何だよあの勝ち誇った顔。バッカじゃねーの!ハハハハハハハハ』 いくらなんでも笑いすぎだろ作者。よっぽど笑いたいのをこらえてたんだろう。 『はあはあ。ま、まさか俺に悲恋を期待してたのか?そこまでシリアスな展開を期待されても困るんだけど。そういうのは他の作者さんたちに全面的に任せてある』 勝手に他の人たちに任せるなよ。少しは自分もシリアスなの書こうとしてみてもいいだろ。 『もしも気が向いたらな』 ずいぶん適当だな。 「ま、まさかお前そんなことのためにムリヤリ星歌を生かしたんじゃないだろうな!」 倉杉さんは作者に向かって吼えた。 『ムリヤリ?まさか。最初からそうなることは決まってたんだ。ヒントもちゃんと用意してある』 本当か?一体どこにヒントがあったんだよ。 『俺が言うのはルール違反だ。自分で考えろ』 作者が勝手にしゃべってる時点でルールも何もない気がするんだけど。 「どうなんですか成歩堂くん。どうして星歌さんが生きてるのかわかりますか?」 裁判長がいきなり話を振ってきた。そんなこと言われても困るんだけど。 「キラ法に違反しているから、ということはなさそうだな」 カール・ムアッグウォーにもわからないようだ。 「ないでしょうね。もしそれでデスノートを使えないならそこの倉杉さんも処罰されないでしょう」 それを聞いた倉杉さんは何も言わないでぼくをにらみつけた。もう声を出す気力もないらしい。 「だとしたらデスノートのルールとやらに何かあるかもしれんな。弁護士。キサマは何か知らないのか?」 デスノートのルールと聞いた瞬間白夜さんと星歌さんがハッとした顔をした。そしてなぜか赤くなった。ルールのどこにそんな抜け道があるんだ?読んでるとピンと来た。 「あっ」 そうか。そういうことだったんだ。 「わかったんですか成歩堂くん?」 裁判長もぼくの反応を見て何か感じたようだ。 「はい。これがその証拠です。くらえ!」 ぼくはある紙をつきつけた。 「これはデスノートのルールですか?ここのどこに答えがあるんですか?」 「注目するのはここです。『死ぬこと自体が人を巻き込む場合は死ぬこと自体が無効になる』」 それを聞いてカール・ムアッグウォーも気付いたようだ。 「で、ですが今星歌さんが死んでも巻き込まれる人なんていないはずです」 「いいえ。いるんですよ。星歌さんがいないと生きていけない人がね」 それを聞いても裁判長は首をかしげている。本当にわかってないのか? 「ぼくと星歌の子だろう」 白夜さんがはっきりとそう断言した。それを聞いた裁判長はやっと納得したようだ。 「た、確かに胎児はある程度育たないと母親が死んだらと一緒に死んでしまいます。でも確証はあるんですか?」 「間違いない。よく考えてみれば最近吐き気がしてすっぱいものを欲しがってた。それにクリムゾンジャックはその原因は取り除けるけど、ぼくと星歌がいる時に話すって言ってた。もし万が一中絶したいと思ってもまずはよく相談しないといけないってことだろ」 なるほど。クリムゾンジャック先生が白夜さんもいないといけないって言ったのはそういうことだったのか。 「そういうことだ。ありえないと思ってたから適当に言ったけどな。とにかくおめでとう 」 クリムゾンジャック先生がそう言うと法廷中が祝福の声であふれた。ぼくも本当によかったと思う。 「もういい!この話はなかったことにする!」 なんか青いヒゲの人がそんなことを叫んで出て行った。もしかしてあれが青ひげか?星歌さんと結婚するなんて話初めからないだろ。 「く、クソ。こんな偶然がなければ白夜を破滅させられたのに」 「偶然なんかじゃありません。白夜さんと星歌さんの愛が結晶となってデスノートの死の力を跳ね返すという奇跡を起こしたんです」 ぼくの言葉にみんながうなずいた。カール・ムアッグウォーがうなずくのは正直意外だった。 「もし今ぼくに全てを任せてくれるんなら」 白夜さんは倉杉さんを鋭い目でにらみつけた。 「今すぐにでも情けなくてひどい死に方をさせてあげたいところだ」 そう言って返ってきたノートとペンを掲げた。 「でもまだそいつの裁判がある。死刑判決が出るまで命を預けておくよ。裁判長。早く判決を出してくれ」 「わ、わかりました。被告人白夜は」 無 罪 判決が出るのと同時に紙ふぶきが舞った。これって一体誰がまいてるんだ? カッ! 「本日はこれにて閉廷!」 こうして短いけどかなり長く感じた裁判が終わった。 つづく |
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