lost virgin |
作者:
カオル
URL: http://www.ab.auone-net.jp/~kaka/
2013年10月21日(月) 15時22分38秒公開
ID:P4s2KG9zUIE
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カーテンの隙間から除く窓からの景色が太陽の色を見せ始めた頃。部屋にあるシャワーの水音を背中で聞きながら私はカップ二杯分程の小さな電気式のケトルにスイッチを入れる。湯が沸くまでの長いような、短いような曖昧な時間の中ふと、これまでの事を振り返ってみた。私達がここに至るまでの経緯、今の自分、そして昨夜二人の間に起った事。 「私、夢だったんです。大好きな人と、こうして二人だけで夜明けのコーヒーを飲むっていうのが」 だって何か大人って感じじゃないですかッ、そんな事を口走る私を眺めながら目の前の男性は濡れた髪の毛をタオルで拭い、はにかむような表情で白いマグカップの中に浮かぶ褐色に口をつけた。 成歩堂さん。私、あなたの事が大好きです。だから、こうなっても決して後悔はしていません。例え、あなたを待っている人がいたとしても――。 だからって別に、あなたと結婚したいと思っている訳じゃなくて、ただ子供の頃、何事にも後ろ向きだった自分が嫌で、母の死をきっかけにそれを変えるよう努力して来ました。だから私、恋愛に対してもそうありたいんです! 「それに、スーツじゃないラフなスタイルの成歩堂さんも、意外とカッコいいですよ!」 いや、一年程前までは毎日こんな感じだったよ……少し困った様子でホテルに据えてあった安いインスタントコーヒーをすする男性の姿からは、確かに年齢相応の苦労を重ねた男の香りが漂っていた。 END |
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