戻ってきた逆転A
作者: 弁護人   2013年08月18日(日) 17時18分50秒公開   ID:0IeeAx9U2zM
〜8年前 ・成歩堂法律事務所〜
・・・いやな予感は、していたんだ。あの検事が、あれに気づかない訳がないのだから。迂闊だったといえば、迂闊だった・・・
『なるほどくん、ウソだよね…?なるほどくんが、証拠品の捏造なんて…。そんなこと、するわけないよね…。』
真宵ちゃんの声が、する。

『……あぁ、僕はしていない。捏造なんてしてない。』
それだけしか、言えなかった。

『なるほどくん、何をボサーっと、してるの!行くよ!』

うん?どこに、行くのだろう。今の僕に行く場所なんて、ないのに…

『ねぇ、真宵ちゃん、どこに行くの?』真宵ちゃんは、呆れた顔で、

『決まってるじゃない!裁判長さんとこ。なるほどくんが、してないことを、証明しに行くよ!』
いやいや、僕は、もう認めたんだよ?真宵ちゃん?
『真宵ちゃん、ありがとう。
でも、もう良いんだ。僕は、もう認めたんだよ、自分の罪を…。』

そう、僕はもう認めたんだ、ありもしない自らの罪を…。

『なんでなるほどくんは、やってないんだよね!?なのに、なんで、認めちゃうの?ねぇ、答えてよ、なるほどくん!』

真宵ちゃんゴメン。そうするしかなかったんだよ。

『ゴメン、真宵ちゃん…。』

一言だけ、たった一言だけ、謝った。それは、千尋さんに対してでもあったし、ゴドー検事こと神之木さんに対してでもあったし、御剣に対してでもあったし、矢張に対してでもあったし、狩魔検事に対してでもあったし…もう数え切れないくらいの人間に対してでもあったし…。僕は、それだけの人間を代表して、真宵ちゃんに謝った。

『なるほどくんの、バカ!もう、知らない。私は、今日をもって、成歩堂法律事務所・副所長を、辞めて倉院の里に帰ります。』

当たり前だ。こんな捏造弁護士のそばにいては、真宵ちゃん自身の名前は、おろか、倉院流霊媒道の名にも傷がつく。真宵ちゃんは、倉院流霊媒道の、新しい家元なのだ。18年前に起きたDL-6号事件で一度は、信頼性を地まで堕としたが、また信頼性を取り戻し始めた最中で、家元が捏造弁護士の事務所の副所長をしていたと分かったら、また…。

『そうした方が、良い。真宵ちゃん、君のためにも、それが、1番良いよ…。』

それだけだった。

『なるほどくんなんてもう知らない。』

それが、僕の聞いた最後の真宵ちゃんの言葉だった
■作者からのメッセージ


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